7月末~8月8日の読書記録 『モーツァルトのオペラ 「愛」の発見』『絵を見る技術』『遊びと利他』『聖老人』
札幌の夏は、ちょっと過ごしやすいフェーズに入ったみたいです。今日の最高気温は25度。ちょうどいい感じですが、このまま夏が終わってしまうのは、少し寂しいなぁと思ってしまいます。十年ほど前までは、それが当たり前(北海道の夏はお盆まで)だったのですが、最近は九月・十月になっても暑い日があったりします。暑いのは嫌だけど、夏が終わるのも嫌だという、わがままな気分ですね。
それはさておき、過ごしやすい今のうちに最近の読書記録をまとめておきます。お付き合いください。今回の四冊は、どれも良い本でしたよー。
まずは、『モーツァルトのオペラ 「愛」の発見』(岡田暁生 講談社学術文庫 2023)。これは、2008年の新潮選書『恋愛哲学者モーツァルト』を改題して文庫化した一冊です。
すごく面白く読んだのですが、読みながら「どうして僕はこの本を読んでいるのだろう」と何度も自問しました。どうしてかというと、ぼくはクラシックは全くの門外漢で、モーツァルトもオペラも全くわからないからです。読みながらメロディーが頭の中で鳴ったり、舞台の様子が記憶の中から浮かんでくるなんてことは、100%ありません。
でも、これまでに読んだ岡田先生の本、『西洋音楽史 「クラシック」の黄昏』(中公新書 2005)、『モーツァルト』(ちくまプリマー選書 2020)、『音楽の聴き方 聴く型と趣味を語る言葉』(中公新書 2009)(いま書架を覗いてびっくりしたのですが、3冊も読んでいました!)の言葉、文章、文体を懐かしく思うことが最近重なっていて、ついポチってしまったのです。
で、結果「あー美味しかった。ごちそうさまでしたー」でした。
不思議ですが、内容はすごくよく分かって興味深いのに面白くない本があります。逆に内容(今回の場合は、クラシック・モーツァルト)については何も知らないのに、すごく楽しめる本もあります。『西洋音楽史』の帯にこんな惹句がありました。
「聴かずにわかるクラシック」
あーっ、わかっていらっしゃいますねぇ。今回のそれは「大団円なんかいらない!」となっています。これも素晴らしいコピーでした。この一冊の美味しいところが、一言で表現されています。
興味がない分野の本も手に取ってみるべきだよなぁ、なんて思ってもう一冊。
秋田麻早子さんの『絵を見る技術』(朝日新聞社 2019)はね、「50年前に読みたかったよー」という一冊です。こゆこと。こゆことを教えてほしかったんです、美術のセンセー! もう、それだけです。
ぼくのように「自分は、絵はわからないんだよなー」と思っている人、一日も早くこの本を読みましょう。絵を見に行きたくなること必至です。読みながら何度も、ほぉーっ、はぁーっと息を吐いてばかりいたような気がします。惜しい点は一つだけ。本が小さい! 画像だけでも二倍の大きさにしてほしい! 美しい画像にしてほしい! わかりますよ。これだけの画像があって、この値段って凄いことです。朝日新聞社、頑張った! と思います。限定版10000円でいいので、画像を二倍の大きさにして!
続けてnoterでもある北村匡平さんの『遊びと利他』(集英社新書 2024)を読みました。ぼくら(狭い範囲です)は彼らのことを一味と呼んでいますが、東京工業大学「未来の人類研究センター」の二期メンバーの一人です。伊藤亜紗さんの著作には以前から触れていたのですが、あれれっという間に一味を立ち上げ、ボスに就任(おめでとうございます!)。いま注目の一味のメンバーでもある北村さんの最新作です。
「モノによる空間の政治的な管理」は、以前から気になっていました。ヤバいな、と(もちろん悪い意味で)。でも同時に、その逆もあるなと感じていました。ベンチに手すりをつけて浮浪者が横になれないようにできるのであれば、逆に誰でも気軽に横になれる「モノ」を設計することができるはずだ、と。
北村匡平さんは、それを「公園と遊具から考える」といいます。絶妙な切り口ですね。「公園と遊具」であれば、誰もそこに排除や断絶があることを良しとしないでしょう。商業地域や駅舎内のベンチと浮浪者ではなく、公園と子どもたちの組み合わせから端緒を切っていくのですね。素晴らしい戦略です、北村さん。応援しちゃいます!
「子どもたち」と「公園」と「遊具」から始まる動きが、「みんな」と「社会」に広がっていくことを願っています。
「未来食堂」は、『RITA MAGAZINE テクノロジーに利他はあるのか?』(ミシマ社 2024)にも紹介されていました。このお店について、もう少し知りたい方にも、この『遊びと利他』はオススメ。付録にちょこっと、より深くより真摯に、書かれていますよ。
あーっ、今回は長くなりすぎています。もう一冊だけです。
『聖老人』(山尾三省 野草社 1988)。
サンセイさんの言葉にはじめて触れたのは17歳のころでした。たぶん「夢見るやどかり族」の経営していた喫茶店(スナック? 飲み屋?)の「やどかり」店内に貼ってあった(ような気もする・ファイルで読んだかも?)「部族宣言」だったと思います。ラームプラサードの「母神讃歌」を教えてくれたのもサンセイさんでした。
そこは、それから何度も何度も遠く離れたけれど、また戻ってきてしまうところです。サンセイさんの周りには、ナナオがおり、ナーガがいて、ポンがいて、キョクがいました。ときおりパーティーや「やどかり」店内で見かける彼らは、遠くから眺めていた憧れでもあり、怖くもある人たちでした。セブンやマコトさんもいましたね。
ヒッピー・ムーブメントが流行の動きではなくなったころに、ひっそりと出版されたこの一冊。
ぼくには、とても大切な一冊です。
何度目かは覚えていませんが、今回もしみじみ読ませていただきました。
ありがとうございます。
よろしければ、こちらも。読書記録も31回目になります。
