「ロジック風の感想」という詐欺師
みなさんこんにちは 株式会社風凜 代表の小澤哲也です。
突然ですが、みなさんに質問です。
会議などで、発言した際の
「難しいと思います」
それは、感想でしょうか?情報でしょうか?
企業の規模や業種を問わず、多くのチームが「会議の生産性」という壁に直面しています。 特に、誰かが意欲的に「タタキ台(提案)」を持ってきた時、こんなやり取りが起きていないでしょうか。
提案者: 「この新しい市場に対し、こういうアプローチで進めたいと思います」
参加者A: 「うーん、でも、その業界は特性が特殊だから、ちょっと難しいんじゃないですかね…」
一見、まともなフィードバックのように聞こえます。
しかし、この「難しいんじゃないですかね」という言葉。これは一体、何を意味しているのでしょう。
提案者が知らない「具体的な情報(ロジック)」に基づき、戦略の穴を指摘しているのでしょうか?
それとも、単に「(自分が)やりたくない」「興味が持てない」という「感情」を、それっぽくオブラートに包んで伝えているのでしょうか?
多くの会議が不毛な時間になってしまう原因の一つは、まさにこの点にあります。
生産性の高い、いわゆる「一流」と呼ばれるチームは、この「ロジックと感情の分離」を徹底しています。今日は、その技術について深掘りします。
1. 打ち合わせで本当に共有すべき「2つのこと」
提案者がタタキ台を示した時、参加者から提供されると非常に価値が高いフィードバックは、突き詰めると以下の2種類しかありません。
① 建設的な情報提供(ロジック)
これは、提案者が持っていない「視点」「知見」「経験」に基づく、純粋な情報提供です。 目的はただ一つ、「提案をより良く(ブラッシュアップ)する」ことです。
(例) 「そのアプローチは良いですね。ただ、この業界には『〇〇』という独自の商慣習があるので、ここの決済フローにこういう工夫をしないと、現場が動かない可能性があります」
(例) 「過去にA社が似た施策で失敗しています。原因は〇〇だったので、我々はその対策を盛り込むべきです」
これらは、提案の精度を高めるための、貴重な「建設的なロジック」です。
② 提案に対する自身の受け止め(感情)
これは、その提案やタスクに対して、自分の感情がどう動いたかを率直に伝えることです。 具体的には「やりたい」と感じるか、「やりたくない」と感じるか、です。
(例) 「戦略は理解できます。ただ、正直に言うと、私はこの業界にあまり興味が持てません」
(例) 「(感情として)このタスクは難易度が高そうで、気が進みません」
これらは、提案の良し悪しではなく、「その人とタスクの相性(マインド)」の問題です。
2. なぜ「感情」と「ロジック」の分離が最重要なのか?
会議が停滞する最悪のケースは、この2つがごちゃ混ぜになった状態です。 特に深刻なのが、「やりたくない」「興味が持てない」といった感情的なブレーキを隠したまま、それを正当化するために、ロジック(論理)に見せかけて否定的な意見(感想)を述べることです。
(避けたい例)
本音(感情): 「正直、面倒くさそうだし、この業界はやりたくないな…」
発言(ロジック風の感想): 「この業界は〜〜という側面があるので、全体として難しいと思います(だから、やるべきではない)」
なぜ、これらを分離しなければならないのでしょうか?
それは、リーダー(提案者)が次の「意思決定」ができなくなるからです。
「難しいと思う」という曖昧なフィードバックを受けたリーダーは、袋小路に陥ってしまいます。
(それは、戦略が間違っている【ロジックの問題】なのだろうか? それとも、この人がやりたくないだけ【感情の問題】なのだろうか?)
このスタンスが不明瞭なまま議論を続けても、お互いの本音が隠されているため、不毛な時間だけが過ぎていきます。
もし、参加者が自分のスタンスを明確に分離して伝えてくれたら、リーダーの取るべきアクションは非常に明確になります。
「ロジックの問題」だと分かれば…
リーダーは「なるほど、その視点は抜けていた。ありがとう」と情報を受け入れ、戦略自体をアップデートします。「感情の問題」だと分かれば…
リーダーは「OK、率直に伝えてくれてありがとう」と受け止め、その人をタスクから外し、他の「やりたい」と思うメンバーをアサインするなど、合理的なリソース配置(適材適所)を判断します。
「やりたくない」人に無理にやらせても、良いパフォーマンスは期待できません。合理的なリーダーであれば、その人のマインドを無理に変えようとするのではなく、「適材適所」を判断したいだけなのです。 感情を隠されてしまうと、この最も合理的な意思決定ができなくなってしまいます。
3. 「感情」を伝えていい。ただし「態度」で示すな。
「そうは言っても、仕事の場で『やりたくない』なんて言えない…」
そう思われるかもしれません。特に日本の組織では、感情を率直に表現することが未熟だと捉えられがちです。
しかし、生産性の高い組織ほど、「感情を出すこと自体は問題ない」というコンセンサスが形成されています。 「やりたくない」「興味がない」という感情があるのであれば、それを隠さず、「感情的にやりたくないです」と率直に言語化して伝えること。これは立派な「情報共有」です。
ただし、ここで絶対に守るべき境界線があります。
それは、「感情」を「態度」で示すこと(例:不機嫌になる、ふてくされる、沈黙する)は別問題だということです。
OK: 「ロジックとしては理解できますが、私の感情としては、このタスクは気が進みません」 (→ 感情を「情報」として言語化し、伝達している状態)
NG: (戦略の説明中に、腕を組んで、明らかに不機嫌そうな顔で黙っている) (→ 感情を「態度」で示し、コミュニケーションを阻害・妨害している状態)
感情を「態度」で示すのは、周囲をコントロールしようとする行為であり、建設的な議論を破壊してしまいます。
結論:あなたのフィードバックは、チームの資産ですか?コストですか?
会議の生産性は、参加者お一人お一人の「フィードバックの質」で決まると言っても過言ではありません。
今、あなたが会議で発しようとしているその言葉は、「ロジック(建設的な情報)」でしょうか、それとも「感情(率直な受け止め)」でしょうか。
もし「やりたくない」という感情があるなら、それをロジックの仮面で隠し、議論を停滞させる「コスト」になってしまっていないでしょうか。
「やりたくない」という感情は、罪ではありません。 それを率直に、かつ「態度」ではなく「言葉」で伝えること。そして、提案を良くするための「ロジック」は、それとは明確に分けて提供すること。
たったこれだけの「分離」をチーム全員が心がけるだけで、意思決定のスピードと議論の質は、劇的に向上するはずです。
いかがだったでしょうか。
ぜひ、このあとの会議で「感情」ではなく「感情を「情報」として言語化」してみてくださいね
では、また次回の記事でお会いしましょう。
