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Xがアルゴリズムを全公開した──コードが語る「選ばれないAI作品」の条件


※ 本記事はGitHub上で公開されたXのアルゴリズム(xai-org/x-algorithm)のコード分析に基づく筆者個人の考察です。同リポジトリは2026年1月に初公開され、2026年5月15日にGroxパイプライン等を含む大規模アップデートが行われました。コードの解釈には@AlexFinnX(X上のアカウント)のスレッド分析を参照しています。


はじめに

2026年1月、Xがフィードのランキングアルゴリズムをオープンソースとして公開した。そして2026年5月15日、Groxパイプラインを含む大規模アップデートが行われた。

xai-org/x-algorithm──Rust 62.9%、Python 37.1%で構成された約600,000行規模のコードベース。

これまで「シャドウバンされている気がする」「NSFW投稿はリーチが落ちるらしい」と言われてきたことが、コードとして読める状態になった。

AI画像クリエイターにとって、これは他人事ではない。

なぜなら、コードの中にNSFW判定slop_score(低品質AI検出)広告安全性フィルター著者多様性スコア(AuthorDiversityScorer)が明確に実装されていたからだ。


第1章:Phoenixモデル──あなたの投稿はこう採点されている

Xのフィードランキングの中核は「Phoenix」と呼ばれるトランスフォーマーモデルだ。各投稿に対して、エンゲージメント確率(P(reply)、P(repost)、P(click)など)を予測し、WeightedScorerがそれぞれに重み付けしてスコアを算出する。スコアの高い順にフィードに表示される。

負のシグナル(スコアが下がる行動)

・すぐにスクロールされる(quick scroll)

・「興味なし」をクリックされる

・ブロックされる

・ミュートされる

・通報される

正のシグナル(スコアが上がる行動)

・リプライがつく

・リポスト(RT)される

・画像がクリックされる

・プロフィールがクリックされる

・シェアされる

・DMでシェアされる

・リンクがコピーされる

・長時間滞在される(dwell time)

ここで注目すべきは、「いいね」がリストに入っていないこと。いいねは加点されるが、リプライやRT、画像クリックに比べて重みが低い。

AI画像クリエイターの視点で言えば、「いいね」を集めるだけではリーチは伸びない。画像をクリックさせ、プロフィールを見に来させ、リプライを誘発するような投稿──つまり「立ち止まらせる力」が必要になる。


第2章:シャドウバンは実在した──SafetyLabelTypeの全貌

「シャドウバンなんて都市伝説だ」という声がある。

コードを見れば、そうではないことがわかる。

Xのアルゴリズムにはsafety_label_typeという列挙型が定義されており、投稿に付与されるラベルによってランキングが制御されている。

MEDIUM_RISK_LABELS(中リスク=ランク大幅低下)

・NSFW_HIGH_PRECISION──性的コンテンツ(高精度検出)

・NSFW_HIGH_RECALL──性的コンテンツ(広範囲検出、グレーゾーンも拾う)

・NSFW_CARD_IMAGE──カード画像内の性的コンテンツ

・NSFW_TEXT──テキスト内の性的表現

・EGREGIOUS_NSFW──極めて露骨な性的コンテンツ

・NSFA_HIGH_PRECISION──広告非安全(Not Safe For Ads)、高精度判定

・GORE_AND_VIOLENCE_HIGH_PRECISION──グロ・暴力表現(高精度検出)

・GORE_AND_VIOLENCE_REPORTED_HEURISTICS──通報ベースのグロ・暴力判定

・NSFW_REPORTED_HEURISTICS──通報ベースの性的コンテンツ判定

・DO_NOT_AMPLIFY──拡散禁止フラグ

・PDNA──児童性的搾取コンテンツ検出

LOW_RISK_LABELS(低リスク=軽度の制限)

・NSFA_LIMITED_INVENTORY──広告在庫制限(一部広告主のみ表示可)

・GROK_NSFA_LIMITED──Grok判定による広告非安全(限定的)

・NSFA_HIGH_RECALL──広告非安全(広範囲検出、際どいものも拾う)

「NSFW」「Gore」「Violence」──記事冒頭で定義した3カテゴリが、そのままコードに実装されている。

しかも「NSFA(Not Safe For Ads)」という広告安全性専用のラベルまで存在する。これは「NSFWではないが広告の隣には置きたくない」というグレーゾーンまでフィルタリングしていることを意味する。

AI美少女画像を「SFW」タグで投稿しても、コンテンツの実質がNSFW寄りであれば、アルゴリズムは判定する。タグではなく、コンテンツそのものを見ている。


第3章:slop_score──AIスロップは検出されている

コードの中に、BangerInitialScreenResultというクラスが存在する。Xのアルゴリズムが「バズるべき投稿(Banger)」を選別するためのスクリーニング構造だ。

このクラスのフィールドに、以下がある:

・quality_score: float

・slop_score: int

・has_minor: float

・is_image_editable_by_grok: bool

・taxonomy_categories: list[dict]

・tags: list[str]

slop_score──「スロップ(低品質コンテンツ)」のスコアが、投稿の初期スクリーニング段階で計算されている。

Alex Finnはこう分析している:Xはslop_scoreを複数箇所で参照しており、AI生成の低品質コンテンツを検出・排除するロジックを実装している、と。

さらにis_image_editable_by_grokというフィールドは、Grok(XのAI)が画像を編集可能かどうかを判定するものだが、裏を返せば画像がAI生成かどうかを分析するパイプラインが存在することを意味する。

何が「スロップ」と判定されるか

コードから明確なしきい値は読み取れないが、文脈から推測される条件は:

・同じプロンプトで量産されたような類似画像の連投

・テキストとの乖離が大きい(画像だけで文脈がない)

・エンゲージメントパターンがbotに似ている(大量いいねだけで会話がない)

・taxonomy_categoriesによるコンテンツ分類で低品質判定

AI画像クリエイターにとっての示唆は明確だ。「生成して投げるだけ」は、アルゴリズムが弾く対象になった。


第4章:広告安全性──あなたの投稿の隣に広告が出るか

Xの収益は広告に依存している。だからアルゴリズムにはhas_avoidという関数が存在し、すべてのスコアリング済み投稿をsafe(安全)とunsafe(危険)に分類する。

unsafe判定を受けた投稿は、広告の隣に表示されない。

広告の隣に表示されないということは、フィードの中で「収益に貢献しない枠」に押し込められるということだ。プラットフォームとしては、そのような投稿のリーチを積極的に伸ばす動機がない。

NSFW系のAI画像は、この広告安全性フィルターに引っかかる最有力候補だ。

企業が「うちの広告をセクシーなAI美少女の隣に出すな」と考えるのは当然であり、Xはコードレベルでその要求に応えている。


第5章:連投は減衰する──AuthorDiversityScorerの仕組み

アルゴリズムのコードにはAuthorDiversityScorerが実装されている。これは同一著者の投稿がフィードに連続して表示されることを防ぐスコア減衰メカニズムだ。

計算式は multiplier = (1.0 - floor) * decay_factor^position + floor で、同一著者の2投稿目以降は指数関数的にスコアが減衰する。

※ なお、PreviouslySeenPostsFilterという別のフィルターも存在するが、これはユーザーが既に見た投稿を除外するブルームフィルターであり、著者多様性とは別の機能だ。

これはAI画像クリエイターの「量産投下」モデルに対する構造的な不利だ。

1日に10枚、20枚とAI画像を投稿しても、フォロワーのフィードで優先表示されるのは最初の1〜2枚。残りはスコア減衰によってリーチが大幅に低下する。

少数精鋭の投稿で深いエンゲージメントを取るか、量産して減衰に沈むか。

アルゴリズムは明確に前者を優遇している。


第6章:Banger検出──アルゴリズムは「良い投稿」を探している

PlanInitialBanger()──これはアルゴリズムの中でも特異なロジックだ。

Xのアルゴリズムは、低品質コンテンツを排除するだけでなく、「バズるべき高品質コンテンツ」を積極的に探している

BangerInitialScreenResultの構造を見ると、quality_score、description、tags、taxonomy_categoriesで投稿を多角的に分析し、品質の高いものを優先的にブーストしている。

これは「排除のアルゴリズム」ではなく「選別のアルゴリズム」だ。

良いものを見つけて伸ばす。悪いものを見つけて沈める。両方を同時にやっている。


第7章:プラットフォーム経済の構造的趨勢

ここまでの分析で見えてくるのは、Xが「NSFWと量産AIを排除する方向に動いている」という単純な話ではない。

プラットフォーム経済全体が、同じ方向に動いているということだ。

Floyoは「Studio and Enterprise Production」を掲げ、NSFWモデルのプリロードを拒否し、2GBアップロード上限で大型NSFWモデルを構造的に排除している(詳細は筆者の別記事を参照)。

CrowdWorksは2026年7月に「AIクラウドワークス」を始動する(2026年5月14日より事前登録開始)。AI人材マッチングのカテゴリに「AI画像生成」が含まれる見込みだ。企業がAIクリエイターに発注する時代が来たとき、ポートフォリオがNSFWだらけのクリエイターに依頼が来るだろうか。

そしてXのアルゴリズムが、NSFW・slop・量産投下をコードレベルで排除している。

制作環境(Floyo)→ 配信レイヤー(X)→ 収益化レイヤー(CrowdWorks)

この3層すべてが、同じフィルターを適用し始めている。


第8章:では、AI画像クリエイターは何をすべきか

1. 「主語」を変える

AI生成物の主語が「美少女」「セクシー」であるうちは、3層すべてのフィルターに引っかかる。

主語を技術・質感・素材に変えること。テクスチャ、マチエル、構図──これらは広告安全性をクリアし、slop判定を回避し、商用プラットフォームの審査を通る。

2. 量より質に転換する

XのAuthorDiversityScorerは、量産モデルに対してスコア減衰を適用する。1日の投稿数を絞り、その1投稿が「画像をクリックさせ、プロフィールに飛ばせ、リプライを誘発する」ものであること。

3. コンテキストを付与する

slop_scoreは「画像だけ投げる」行為を検出している可能性が高い。テキストで文脈を与え、タグで分類し、会話を生む投稿にすることで、slopではなくbangerとして判定される可能性が上がる。

4. 商用導線を設計する

Floyoで制作し、Xで配信し、CrowdWorksで収益化する──このパイプラインを意識的に設計すること。各レイヤーのフィルターを理解した上で、すべてを通過するコンテンツを作る。


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おわりに

Xのアルゴリズム公開は、AI画像クリエイターにとって「答え合わせ」だ。

「NSFWは見えなくなっている気がする」→ コードで確認できた。

「量産投下してもリーチが伸びない」→ AuthorDiversityScorerによるスコア減衰があった。

「AI画像は不利な気がする」→ slop_scoreで検出されている。

感覚だったものが、コードになった。

そしてこの構造は、XだけでなくFloyo、CrowdWorks、そしておそらくこれから登場するすべての商用プラットフォームに共通する趨勢だ。

「何を生成するか」ではなく「何のために生成するか」。

その問いに答えられるクリエイターだけが、プラットフォーム経済の中で生き残る。


※ 本記事はXの公開アルゴリズム(xai-org/x-algorithm)および@AlexFinnX(X上のアカウント)の分析スレッドに基づく筆者個人の考察です。コードベースはRust + Pythonで構成されており、本記事で参照したのは主にGroxパイプライン(Python)とPhoenix/home-mixer(Rust)部分です。アルゴリズムは今後変更される可能性があります。


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著者

TextureLoRALab|質感LoRAラボ

厚塗りの重厚感やマチエルをAIに刻むLoRA学習を研究。キャンバスの質感をデジタル資産化する提案を行っている。高校で日本画、公立芸大で芸術学、イギリスで博物館学修士課程を修了。

note: https://note.com/texture_lora_lab

CivitAI: https://civitai.com/user/TextureLoRALab

Web: https://texture-lora-lab.com

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