ここを押さえれば『アルカディア』1場、2場がわかる!~物語のポイントをおさらい~
はじめに
こちらの解説は、2025年3月25日に開催された「play room creations 1-3月 経過報告会」の当日パンフレットに載せるため、わたくし寺村が作成したものです。
お読みいただいた一部の方からの熱い要望を受け、改めてnoteにて公開することにしました。
かなりマニアックな内容ですが、ここに書き残すことで、いつかどこかの誰かの役に立つことがあるかもしれないなぁと思うと「載せとくか~」という気持ちになりました。
『アルカディア』の「理解できた時のおもしろさ」「理解できないけど感じるおもしろさ」が少しでも伝わると嬉しいです。
play room creations 1-3月
— play room (@play_room_info) March 26, 2025
経過報告会無事終了しました!
ご参加いただいた皆様ありがとうございました!
次回、play room creations 4-6月の経過報告会は6/29(日)開催。
俳優が成長していく姿、挑戦していく姿を楽しんでいただけると思います。
ご都合つく方は是非!
#play_room #ぷれくり https://t.co/Gh1Efb3dlH pic.twitter.com/u3VEsiSs9i
こんな方に特にオススメ!
・『アルカディア』を観たことない or 読んだことないけど、どんなお話か要約だけ知りたい方
・『アルカディア』を観たことある or 読んだことあるけど、正直よくわからなかった方
・『アルカディア』にキャスティングされたけど、戯曲読解が苦手な方。取り組む役の「重点」がよくわからない方
・『アルカディア』と聞いただけで「呼んだ?」と集まってくるような方々

作成者:寺村恵理加
📖ここを押さえれば1場がわかる!5つのポイント
1場 1場の日付は1809年4月10日。場所はクルーム伯爵家の館、シドリー・パーク。
1.伯爵令嬢トマシナが「肉欲的な抱擁」の意味を知る
2.トマシナが数学上の仮説を思いつく
3.チェイターがセプティマスに決闘を申し込む
4.庭園設計士ノークスは庭園の改造を計画するが、レディ・クルームが猛反対
5.セプティマスが「二通の手紙」を『エロスの寝台』に挟む
ポイントの解説
1.伯爵令嬢トマシナが「肉欲的な抱擁」の意味を知る
→授業の最中、トマシナは家庭教師セプティマスに「肉欲的な抱擁」の意味について尋ねる。
トマシナによると「ミセス・チェイターが四阿《あずまや》で"肉欲的な抱擁"をしているところを庭園設計士ノークスが目撃し、夫のエズラ・チェイターに話した、という話を執事ジェラビーがしているのを聞いた」という。
その「肉欲的な抱擁」の相手こそセプティマスである!
誤魔化しきれないセプティマスはトマシナに「肉欲的な抱擁」の本当の意味を教える羽目に。
「セプティマスが肉欲的な抱擁の相手である」ことはバレていない。
2.トマシナが数学上の仮説を思いつく
→トマシナは「フェルマーの最終定理」の証明に取り組めるほどの天才的頭脳の持ち主。
執事に夕食のメニューを聞いたことをきっかけに、大好物のライス・プディングと赤いジャムは「逆に掻き混ぜても元には戻せない」ことに気付く。
そこから着想を得て、全ての原子がニュートンの運動の法則に従って動いているのだとしたら「未来を数式で表せるのではないか」という仮説を思いつく。
3.チェイターがセプティマスに決闘を申し込む
→セプティマスのもとに「一通の手紙※1」が届けられる。差出人はエズラ・チェイター。
口頭で「授業後に対応する」と返事をしたが、待ちきれないチェイターが乗り込んでくる。「肉欲的な抱擁」の件で怒り狂うチェイターはセプティマスに決闘を申し込む。
セプティマスはチェイターの『エロスの寝台』の書評を書いていることを明かし「ミセス・チェイターが夫のためを思って、好意的な書評をセプティマスに書かせるためにした行為だった」と思い込ませ、決闘の回避に成功。
チェイターは本に「献辞※2」を書き、セプティマスを「我が友」と呼ぶまでに。
しかし、セプティマスは過去にチェイターの別作品を匿名で酷評しており、今回の書評においても彼をこき下ろす気満々である。
4.庭園設計士ノークスは庭園の改造を計画するが、レディ・クルームが猛反対
→ノークスは現在のシドリー・パークのイギリス式庭園を「ピクチャレスク・スタイル(絵画的風景庭園)」へと改造するアイデアを「スケッチブック」に描いて持ってくる。
生け垣は隠れ垣へ、四阿《あずまや》は「隠者の庵」へと変貌を遂げた庭の姿にレディ・クルーム(+ ブライス大佐)は猛反対。
そこへ狩猟を終えたクルーム伯爵、オーガスタス、そしてバイロン卿が戻ってくる。庭の改造の是非は、クルーム伯爵に話した上で決めることに。
トマシナは、部屋に残されたスケッチブックの「隠者の庵」の部分に「隠者の落書き」を描く。
それが200年後の人々に大きな謎を残すことになるとは知る由もない。
5,セプティマスが「二通の手紙」を『エロスの寝台』に挟む
→セプティマスは「チェイターから受け取った手紙」と、ミセス・チェイターからトマシナを通じて渡された「手紙※3」を『エロスの寝台』に挟んでいる。
肉欲的な抱擁や決闘の件を知られるわけにはいかないからだ。
特に、密かに想いを寄せるレディ・クルームには。

作成者:寺村恵理加
📖ここを押さえれば2場がわかる!5つのポイント
2場 2場の時代は1場から200年後。詳細な日付は不明。場所はクルーム伯爵家の館、シドリー・パーク。(1場と同じ)
1.バーナード・ナイチンゲールがシドリー・パークを訪れる
2.ハンナは隠者の正体を突き止めようとしているが、行き詰まっている
3.バーナードはチェイターの『エロスの寝台』をハンナに手渡し、調査の協力を依頼する
4.バーナードの本当の目的は「バイロンが決闘した証拠を手に入れること」
5.現代のシドリー・パークでも恋が動き出す
ポイントの解説
1.バーナード・ナイチンゲールがシドリー・パークを訪れる
→文学研究者のバーナードは、研究に関する資料を調査するためシドリー・パークを訪れる。ここで調査をしているもう1人の文学研究者に話を聞く予定だったが、その人物がハンナ・ジャーヴィスであると判明した途端、状況が変わる。
実は、バーナードは過去にハンナの著書を新聞で酷評しており、実名も出していた。
調査の協力が得られなくなることを恐れ、バーナード・ピーコックという偽名を使いながら、自身の目的を達成しようと試みる。
2.ハンナは隠者の正体を突き止めようとしているが、行き詰まっている
→ハンナはシドリー・パークの「隠者」について研究している。ノークスによって建てられた「隠者の庵」に住み、1834年に亡くなるまで「この世は終わりに近づいている」という神秘的な数学の証明を大量に書き残した謎の人物である。
ノークスのスケッチブックに描かれた「隠者の肖像画」と、文芸雑誌『コーンヒル・マガジン』に掲載されている「隠者についての評論※4」を手掛かりにその正体を探るも、新たな情報はなかなか見つからず、研究は行き詰まっている。
3.バーナードはチェイターの『エロスの寝台』をハンナに手渡し、調査の協力を依頼する
→バーナードはエズラ・チェイターの物語詩『エロスの寝台』を取り出し、書き込まれた「献辞」を読み上げる。そこにはシドリー・パークや屋敷に関わりのある人物のことが記載されていた。
「チェイターについて研究発表するため、屋敷内の資料を見せてほしい」と頼むバーナード。
しかし、通りがかったクロエがうっかりバーナードの本名をバラしてしまったことで、ハンナは目の前の男が誰なのかをようやく理解する。
4.バーナードの本当の目的は「バイロンが決闘した証拠を手に入れること」
→窮地に立たされたバーナードは、自身の発見と「本当の目的」についてハンナに説明する。
1.『エロスの寝台』はナイチンゲール家の別荘の倉庫から、バイロン卿から買い取った時の伝票とともに発見された。
2.本にアンダーラインの引いてある箇所はすべて、1809年発行の新聞に掲載された「匿名の書評」に引用されている。
3.『エロスの寝台』に挟んであった手紙が三通※1.3.5、そのまま出てきた。すべて決闘に関連する内容である。
これらの情報から、バーナードは「バイロン卿は決闘でチェイターを殺した」と確信しており、その決定的な証拠を探してシドリー・パークへとやってきたのである。
バイロン卿とセプティマス・ホッジが高校からの友人関係であることも判明し、また一歩前進するバーナード。
彼の仮説には懐疑的なハンナだったが、思いがけず新たな情報を手に入れた彼女は、不本意ながらもバーナードの調査に協力することになる。
5.現代のシドリー・パークでも恋が動き出す
→長女のクロエは会ったばかりのバーナードにすでに夢中のようだ。
長男のヴァレンタインはハンナを「僕のフィアンセ」と呼んでいるが、その意図は掴めない。
クロエによると、次男のガスはハンナに恋しているらしい。「冗談だ」と否定するハンナのもとに、ガスは「リンゴ」を渡しにやってくるのであった。
彼らの今後の恋の行方はいかに…?

🔍現在見つかっている19世紀の資料集
※1 セプティマスへの手紙(一通目)
「前略――折り入って話したき儀あり。銃器室にて貴殿を待つ。
E.チェイター」
※2 『エロスの寝台』に書き込まれた献辞
「我が友、セプティマス・ホッジに贈る。彼こそこの詩人の良き理解者にして、最大の支援者なり――エズラ・チェイター、ダービシャー・シドリー・パークにて、一八〇九年四月十日」
※3 セプティマスへの手紙(二通目)
「夫は町から拳銃を取り寄せました。証拠のないことは否定なさってください――私、チャリティの為に――今日は部屋にこもっています」
※4 1860年代の文芸雑誌『コーンヒル・マガジン』に掲載された、隠者や世捨て人についての評論。トマス・ラヴ・ピーコック(イギリスの小説家、詩人)が書いた手紙からの引用
「御婦人方を驚愕せしめる村の虚けの類いではなく、阿呆の碩学(せきがく)、狂気の賢者である」
「この『ヘッドロング・ホール』の著者によって三十年ほど前に書かれた手紙には、クルーム伯爵の領地シドリー・パークへの訪問の様子が語られ――」
※5 セプティマスへの手紙(三通目)
「一八〇九年四月十一日、シドリー・パーク。
前略――貴様は噓つきで、女たらしで、新聞にて毒舌を吐き、我が名誉を毀損する者である。男として、詩人として、我が決闘の申し込みに応じるべく然るべき日時を指定されたし。
E・チェイター」
解説はここまで。
最後までお読みいただきありがとうございました!
『アルカディア』は7場まで続きます。この先を知りたい方はぜひ戯曲を一度読んでみてください。
また、play room creationsの経過報告会(次回は6月29日、5-6場を発表します)も開催されますので、その際はぜひお越しください!
おまけ:解説を書いてみて
・めっちゃ頑張った……
・トム・ストッパード巧みすぎ!あらゆるものが伏線になっていて、短くまとめるのが大変だった。
・削りすぎるとニュアンスが変わってしまう部分がたくさんあって難しかった。
例えば「チェイターが決闘を申し込んだ」にしても、「手紙で」なのか「口頭で」なのかで読む人の印象が全然違ってしまう。手紙の中では、なんとなく匂わせつつも「決闘を申し込む」まではいっていない。ただ、手紙は現代パートに続くキーアイテムでもあるため、削ることもできない。結局詳しく書かざるを得なくて文が長くなっちゃうんだよ…。トム!!(怒)
・19世紀パートでの行動が現代パートにどう影響を及ぼしているか、改めてよくわかって大興奮。「時間」という大きな道の上に、みんな一緒に存在しているような気がした。ほんっっっっっとにおもしろい。
・お客様のために書いたものだけど、ものすごく自分のためになった。なんか要約力というか、戯曲の重点を掴み取る力が上がったのかな?
やってよかった。好きにやらせてくれたplay room運営の野村さんと講師のせりせり(黒澤世莉さん)、ありがとうございました。

