【短編小説】 キスの味 (701字)
忘れた。
なにを書くか忘れてしまった。稼ぎのことを小説にしようと思った気もするし、正月に海へ入ったことを物語にしようとしたのか、サプリメントが効くのかどうかを書こうと思った気もする。わからない。なにを書こうとしたんだろうか。
カフェインを摂取したら思い出せると考え、ゼロカロリーモンスターとリポデーを飲んだら心臓がマサイ族のジャンプみたいにフゥァファファファーと鼓動する。頭に浮かんだのはコーヒー飲みたい。思い出せない。
ふと、足元を見ると口紅が転がっていた。
たしか、キスの味について書こうと思っていたような気がする。あの淡白な味わいに脂が乗る感じを物語にしてみようと思ったのかも。
たしか、考えていた時は夜だった。きっとそうだ。
キスはいい。
メインというわけではないが、必ず夜を盛り上げてくれる。キスなんてなくてもいいという輩もいるが、それがなければ夜は終わらないし、そもそも始まらない。キスにそもそも味なんてないとも思えるが、表面が美味しい汁を吸って甘くとろける。あの感触になるのがいい。
最初に頂きたい。
でも、邪道とも言われる。だったら最初はなにから攻めたらいいんだ。僕にはわからない。ただ言えるのはキスが好きだってことだ。キスをあんな風にしようと考えた人は天才だ。あの場目でしかそれとは出会わない。だけど、必ず必要だ。衣をつけて揚げようと考えた人は天才だ。
キスが好きだ。
キスの天ぷらが大好きだ。天ぷら以外でそれを見かけたことがない。キスに味があるとは到底思えない。だけど、天つゆに浸すと衣とその身がつゆを吸ってじゅわっととろけて美味しいんだ。レモン絞っても美味しい。
キスの味は天つゆとレモンの味だ。
終わり。
もう8月だよ。今年がもうすぐ終わる。
今がどれだけ貴重な時間なのか、
理解できていたら可愛げなんてないしそんなやつ面白くもない。
いいなと思ったら応援しよう!
差し入れに使います