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“苦手”だと思っていたものは、本当は好きだったのかもしれない

「それ、苦手なんです」

そう言って、避けてきたものはありませんか。

うまくできないから。

怖いから。

なんとなく、自分には向いていない気がするから。

わたしたちは「苦手」という言葉を、便利なラベルのように使っています。
理由を深く説明しなくても、それひとつでその場をやり過ごせてしまう。
でも、もしその「苦手」の奥に、あなたが本当は大切にしてきた「好き」が眠っているとしたら、どうでしょうか。

この記事では、わたし自身の体験と、ある友人の話を通して、「苦手の奥にある好きの見つけ方」について考えてみたいと思います。


好きがわからない時代

「好きなことを仕事にすればいい」

いまではよく聞く言葉になりました。
けれど、わたしが就職活動をしていた約20年前、周りにそんなことを言う同期や先輩、先生は誰一人いませんでした。
むしろ耳にするのは、安定している会社に入ること、ちゃんとした道を選ぶこと。
そんな言葉ばかりでした。

だから当時のわたしは、
「好きなことって何?」
と聞かれても、よくわからなかったのです。

また、最近では、「好きなことはある?」と聞かれて「特にない」と答える若い人が増えていると聞きます。
でも、それも当然だと思うのです。
その親世代であるわたしたちが、そもそも「好き」を大事にしてこなかったのですから。

ちゃんとしなさい。

失敗するな。

迷惑をかけるな。

そう言われ続ける中で、「好き」という感覚は、少しずつ自分の奥にしまわれていきます。


小学2年生の長男が保育園の頃、同じクラスの子どもたちは、みんな「好き」を全開で生きていました。
走る子、作る子、叫ぶ子。
誰も遠慮していない。
けれど、今その子たちを見ると、あのときのイキイキした感じが少し薄れている気がすることがあります。
空気を読む、周りに合わせる、「こうあるべき」を守る。
そういったものが増えてきたからかもしれません。

そうやって「好き」は少しずつ、後ろに追いやられていくのでしょう。

では、「好きがわからない」と感じる人は、どうやって自分の好きに出会えばいいのでしょうか。

わたしがすすめたいのは、「苦手」に向き合うことです。

ここから、わたし自身が苦手だと思い込んでいたものの奥に「好き」を見つけ直してきた、3つの体験をお話しします。


「歌いたいときに歌う」が教えてくれたこと

小学6年生のとき、「歌、下手だね」。
そう言われた一言が、ずっと残りました。
その瞬間から、歌うことは怖いものになりました。
中学ではカラオケに誘われても断り続け、高校でようやく行ったものの、声は出ないし、楽しくない。
正直、苦痛でした。

そんなある日、大好きだったアニメ『マクロス7』の中で、主人公の熱気バサラがこう言いました。

「歌いたいときに歌う。それが歌だ」

その台詞をきいた瞬間、考え方が変わりました。

「上手く歌う」ではなく「歌いたいように歌う」。
そう決めたとき、不思議と声が出るようになったのです。

今でも、自分が歌が上手いとは思っていません。
でも、自分を表現できているときの歌は、ものすごく気持ちがいい。
(ああ、自分は歌うことが好きだったんだ)
そう思いました。

「上手くできるかどうか」と「好きかどうか」は、まったく別の物差しです。
わたしたちはこの2つを無意識に重ねてしまい、「上手くない=苦手=嫌い」だと思い込んでしまう。
でも本当は、上手くなくても好きなものは、いくらでもあるのです。


苦手の奥にあった"絵を描くこと"

高校2年生の美術の時間。
校舎内で自分のお気に入りの場所を選んで写生する、実習の時間がありました。
わたしは、好きで絵を描いていました。
けれどそのとき、同級生から「下手だね」と、からかうような調子で言われたのです。
それがすごくショックでした。
それ以来、絵を描くことに対して、ものすごく抵抗感を感じるようになりました。

その苦手意識を抱えたまま、何年も経ったある日。
わたしは仕事で読んだ本の内容がまったく記憶に残らないことに悩んでいました。
一冊を読み終えて次の本を読むと、前の本の内容をすっかり忘れてしまっている。
そんな状況をなんとかしたくて、自分に合う情報整理術を探していたときに出会ったのが「マインドマップ」でした。

出会ってすぐに参考書を購入し、独学をスタートしました。
けれど、見本の絵があまりにも上手すぎて、同じようには描けない。
一枚のマップを描くのに2時間以上もかかってしまい、これでは使い物にならないと思い、三日坊主で終わってしまいました。

それでも、なぜか一年後にまた学びたくなり、今度は専任講師から学ぶことを決意しました。
講座に参加してまずわかったのは、マインドマップはそもそも絵を上手く描く必要がないということ。
「とにかく楽しむこと」が大事だと教わったとき、今まで感じていた絵を描くことへの苦手意識よりも、「もっと楽しんで描けるようになりたい」という気持ちのほうが大きくなっていきました。

だからこそ、講師のアドバイス通りに、まずはすべてやってみることからスタートしました。
当初はまだ、絵を描くことに苦痛に近い感覚がありました。
けれど毎日描き続け、描いたマップを直接会う機会のあった友人たちにシェアし続けるうちに、いつの間にか「絵を上手く描くこと」よりも「絵を描くこと自体が楽しい」と体感できるようになっていたのです。


この話には、後日談があります。
マインドマップを人に伝える中で、わたしと同じように絵を描くことに苦手意識がある人がたくさんいることを知りました。
友人のNさんも、絵を描くことが苦手すぎて、「絵ではなく、人型の簡単なイラストだけでもいいですか?」と質問を受けて。
まずは楽しむことが大事だと思っていたので、それでいいと伝えました。

それから数週間後、プライベートで会ったときのことです。
Nさんは会うなり「見て見て!」と目をキラキラさせながら、あるものを見せてくれました。
それは、マップの中央に描かれた、とても素敵な"荷車"の絵でした。

「あれ? 簡単なイラストだけ描くんじゃなかったんですか?」と聞いてみると、Nさんはこう答えました。

「しばらくはそれしか書けなかったけど、なんか急に描きたくなって描いてみた」

そう楽しそうに話してくれたNさんの雰囲気が、とても印象的でした。
10年以上経った今でも、はっきりと覚えています。

苦手だと思っていたものの奥には、
「本当はやってみたい」
「描いてみたい」
という気持ちが、ずっと眠っていたのだと思います。
それはわたし自身にも、Nさんにも、同じように起きたことでした。


答えは、自分の中にしかなかった

高校1年生のとき、わたしが書いた作文について、クラスのみんなの前で「お前日本人か?」と小馬鹿にするように言われたことがありました。
すごくショックで、それ以来、文章で自分の想いや考えを表現することが怖くなってしまいました。

小論文を考えるのも苦痛でしたし、就職活動で自己PR文を考え、それをベースに面接で話すことは、もっと苦痛でした。
常に周囲の反応が気になり、自分の意見もろくに言えず、かといって相手の話も耳に残らない。
そんな状態が続いていたからか、就活時の面接、特にグループワークは、正直なところ不安と恐怖でしかありませんでした。

大学院1年目の秋、進学か就職かで迷った末、わたしは就職を選びました。
とはいえ、まったく気が乗っていませんでした。
エントリーシートを書くのも億劫で、面接はとにかく苦手。
面接が終わるたびに、帰り道はいつも反省会でした。
「なんであんな言い方をしたんだろう」
「もっと気の利いたことが言えたはずなのに」
落ち込むのが、いつもの流れでした。

面接後はいつも、横浜駅近くにあった「あおい書店 横浜店」(今はもう閉店)に通っては、不安を解消するための本を読み漁っていました。
けれど、読めば読むほど、本に書いてある通りにうまくできない自分に焦りを感じ、かえって不安が募る結果になっていました。

そんな中、とりあえず受けてみたのが、横浜・関内にある会社のグループ面接でした。面接が終わったあと、少し珍しい時間が設けられました。
フリーディスカッションのあとに、面接官から直接アドバイスをもらえる時間です。

そのとき、若手の女性面接官が、わたしにこう言いました。

「あなたが言った長所以外にも、長所があると感じましたよ」

思わず、聞き返してしまいました。
「え……それは、なんですか?」

すると、その方は少し微笑んで、こう続けました。

「それがなんなのかは、自分と向き合ってみて、見つけてくださいね」

正直に言うと、最初は不満でした。
(教えてくれないんだ……)
(そこまで言うなら、答えも教えてほしい)
そんな気持ちのまま、会場をあとにしました。

けれど、駅へ向かう帰り道、いつもとは明らかに違う感覚がありました。
反省が、始まらないのです。
代わりに浮かんできたのは、ひとつの問いでした。

「……自分の長所って、なんだろう?」

それは、誰かに評価されるための問いではなく、初めて自分自身に向けられた問いでした。
今まで「どう見られるか」「どう思われるか」ばかりを気にしていたことに、そこで気づいたのです。
自分自身に興味を向けるという体験は、それまでの自分にはないものでした。

この出来事をきっかけに、わたしは少しずつ自分と向き合い始めました。
不思議なことに、それ以降、面接に対する感覚も変わっていきました。
避けたくて、早く終わってほしいとさえ思っていた面接が、気づけば楽しくて仕方ない場になっていたのです。
なぜなら、興味を持って話を聞いてくれる人と一緒に、自分自身について考える時間になったから。

今では、あのとき答えを教えてくれなかったことに、心から感謝しています。
もしあの場で「これがあなたの長所です」と言われていたら、わたしは自分で問い続けることをしなかったと思うからです。

答えは、外からもらうものではありませんでした。
問いが自分に向いたその瞬間から、少しずつ見えてくるものだったのです。

自分自身に興味がわいてきたら、いつの間にか文章で表現することにも、人に想いを伝えることにも、苦手意識を感じることがなくなっていきました。
いまではむしろ、そういった想いを語り合える場所や機会を、自分でつくる側になっています。


苦手の正体

ここまで、歌うこと、絵を描くこと、文章を書いて人前で伝えること、3つの体験をお話ししてきました。
これらに共通しているのは、苦手は、ただの「できないこと」ではないということです。

むしろ、うまくやりたい、ちゃんと表現したい。
そんな気持ちが強いからこそ、思い通りにいかないことが苦しくなる。
その苦しさから自分を守るために、わたしたちは「苦手」というラベルを貼っているのかもしれません。

これは、わたしだけの話ではありません。
ある友人は、「パソコンが苦手なんだよね」と言っていました。
でも話を聴いていくと、本当は「自分の活動を誰かに伝えたい」という想いがあり、そのために資料をつくりたかっただけでした。
ただ、「うまく作らなきゃ」「ちゃんとしなきゃ」と思うほど、空回りしてしまう。
気づけば、「伝えること」よりも「上手くやること」が目的になっていました。
本来の目的に立ち返ったとき、その人は少しずつ楽になっていきました。

苦手だと思っているものは、本当は大好きで、表現したいことなのかもしれません。
それは少し遠回りな考え方に聞こえるかもしれませんが、わたし自身の3つの体験も、友人たちの体験も、同じ構造をしていました。


苦手と向き合うための小さな実践

ここからは、自分の「苦手」の奥にある「好き」を見つけるための、具体的な方法をお伝えします。
わたし自身がマインドマップを学ぶ中で身につけ、他の方にもお伝えした中で実際に効果を感じてきたやり方です。

ステップ1:苦手を中央に置いて、自由に書き出す

紙を1枚用意してください。
デジタルでも構いませんが、できれば手書きをおすすめします。
手を動かすこと自体が、頭の中の情報を引き出す助けになるからです。

紙の中央に、「苦手」と書きます。
「にがて」や「ニガテ」と書いてもOKです。

そこから、30秒だけタイマーをセットして、思いつく単語をできるだけたくさん書き出していきます。
文章にする必要はありません。
単語の断片で十分です。
「恥ずかしい」「比べられる」「避けたい」など、出てきたものをそのまま書いていきます。

うまく整理しようとしなくて大丈夫です。
30秒という短い時間に制限することで、頭で考える前に、感覚が先に出てきます。


ステップ2:「避けていること」を15分間、書き続ける

次に、ノートを1冊用意してください。
問いはひとつだけです。

「わたしが避けていることは何か?」

この問いに対して、15分間、手を止めずに書き続けてください。
うまい文章である必要はありません。
1行でもいいので、思いついたことをそのまま書いていきます。

これを、1週間続けてみてください。
日によって出てくる答えが変わることに、きっと気づくはずです。
同じ「苦手」の奥にも、日によって違う感情が隠れていることがあります。


ステップ3:すぐに克服しようとしない

向き合うときに、ひとつだけ大事なことがあります。
それは、すぐに克服しようとしないことです。

「なんとかしよう」と急ぐと、かえって不安や不足感が強くなります。
大切なのは、いま自分が何を感じているか、どんな解釈をしているか、ただ気づくことです。

不安は「敵」ではありません。
それは、自分の現在地を教えてくれる羅針盤のようなものです。
苦手を克服する対象として見るのではなく、自分の「好き」のありかを教えてくれるサインとして見てみてください。

わたし自身、マインドマップと出会ってから一度三日坊主で挫折しているように、最初からうまくいくとは限りません。
でも、もう一度向き合い直したときに、見える景色が変わることがあります。


最後に

もしかすると、あなたがこれまで「苦手」だと思ってきたものの中に、大切にしたかった「好き」が、そっと眠っているのかもしれません。

今すぐ何かを変えなくてもいいのです。
ただ、「それは本当に、苦手なのだろうか?」そう問いかける時間を、少しだけ持ってみてほしいです。

その先に、あなたらしい「好き」が、静かにつながっているかもしれないから。


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