構造思考OS|Vol.8.5 思考を“設計”するための再現可能な原則 ―なかがき

前回の記事:思考の技術 ― ステップの適用と限界


本編あとがきにあたります。
思考技術にご興味の方は、目次より本編をお読みください。


なかがき

本来であれば「あとがき」として書くべきなのかもしれませんが、

このシリーズはまだ、続くのかもしれません。

だからここでは、「なかがき」として、一度立ち止まって書いておくことにしました。

もしかすると、これがこのシリーズの最後になるかもしれないし、

あるいはまた別のかたちで、続きを書くことになるかもしれません。

けれど今、ここで一区切りつけておきたかったのです。

Vol.0からVol.8まで、思考という行為と、構造という視点に向き合ってきた中で、

いったん、自分自身のためにも、言葉を置いておこうと思いました。

私がこの「思考そのもの」や「思考技術」を書こうと思ったのには、いくつか理由があります。

ひとつ目は、AIの存在です。

AIが広まってくると、処理的な仕事──すでに定義された構造の中で繰り返される業務の多くは、代替されていきます。

一方で、「問いを立てて、構造そのものを組み替えていく思考」は、まだAIには難しい領域です。

実際に周囲を見渡してみると、多くの人が日々の業務や生活の中で、既存の枠組みに従って動いているように感じます。

それは決して悪いことではなく、むしろ社会の多くはそうした“構造に沿う”力で支えられています。

けれど、もしその構造が崩れたり、変化にさらされたときに、

「自分で問いを立て、新しい構造を描き直す力」があるかどうかは、とても重要になります。


私は、その思考のあり方──問いから構造をつくる思考──を、どうしても伝えておきたかったのです。

AIがあたりまえに存在するこの時代だからこそ、人間にしかできない思考の力を再確認したいと思いました。

ふたつ目は、車輪の再発明を避けてほしかったということです。

人の進歩は、積み重ねによって成り立っています。

私自身も、これまでにたくさんの書物に出会い、人から学び、多くの知恵に支えられてきました。

そうした知の積層のうえに、自分なりの構造を組み立ててきたという感覚があります。

だからこそ今、私もまた、誰かの支えになれたらと思いました。

考えに迷ったときに立ち戻れるような場所として。

誰かが、もっと遠くへ進むための足場として。

このnoteシリーズが、そんなふうに使われていけば、本当にうれしく思います。

3つ目は、区切りとしてです。

かつて、ある後輩を指導していたときのことです。私は、目の前のタスクやスキルだけではなく、**「どこに行ってもやっていける力」や「考え方の土台」**を伝えたいと思っていました。

仕事への姿勢や、構造の見方、問いの立て方まで含めて、本気で、真剣に、向き合ってきたつもりです。

結果として、その後輩には深く感謝されました。でも私は、「でも、もっとちゃんと伝える方法があったんじゃないか」 
という心残りを、どこかでずっと抱えていました。

このnoteは、別のところで活躍しているだろう後輩への花向け、そして、やり残したことをやり終え、次に進むための自分への区切りでもあります。

もちろん、ほかにも小さなきっかけはいくつかありますが、大きな理由としては、この3つが軸になっています。


また実際に書いてみて、あらためて感じたのは、

自分の中で自然に使っていた思考の構造を、言葉として切り出すことの難しさでした。

すでに“できている”ものを、操作単位にまで分解して、順序性を持たせて整理する。

それは、まるで頭の中にあるソフトを、いちから言語マニュアルに変換していくような作業で、かなりエネルギーを使いました。

そして、内容そのものがもともと抽象度の高い話なので、どうしても具体例という補助線を入れないと伝わらないという難しさもありました。

ただ、具体を入れすぎると論点がぶれてしまうし、抽象度が高すぎるままだと咀嚼しづらい。

そのバランスの調整がいちばん難しくて、結果として今読み返しても「少し抽象度が高いかもしれない」と感じる部分はあります。

けれど、それ以上具体に寄せると、本来進めたかった構造の軸がぼやけてしまう感覚もありました。

伝えるための具体と、考えを貫くための抽象──その間のちょうどいいところを探すことが、今回いちばん神経を使ったところかもしれません。

またこのnoteでは、思考技術をただ説明するだけでなく、読んでいくなかで“5つのステップ”を自然に体験できるような構成にすることを目指しました。

思考技術に原則はないか?という問い、目的から始まり、思考の操作要素を分析し、(変数というより演算子ですが)

「役に立つとは何か?」という観点で技術としての要件定義を行い、

さらに具体的活用方法の提示によって構造思考の具体化を模擬し、

最後には「使いにくい場面」や限界を示すことで、思考技術そのものの評価まで含めました。

このように、全体構成そのものに「構造化する思考のプロセス」を重ねることにも、かなり苦労しました。

そのため、今回は触れなかった具体的要素もあります。

たとえば、この構造思考をどうやって自分の力にするのかとか、

プロダクト設計や戦略などに実際にどう応用していけるかといった話です。

そちらは論点がずれるため、今回は削りましたが、機会があれば別で書いてみたいと思っています。

ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました。

思考という、かたちのないものをどう扱うか。

その試みを一緒にたどってくれたことに、心から感謝しています。

もしかすると、これがあとがきになるかもしれないし、また続きを書くことになるかもしれません。ひとまず、ここで一区切りとして、この“なかがき”を置いておきます。

どうか、この思考技術があなたの役に立つことを願って。

2025年6月末日
車窓から、山並みを眺めながら。


Vol.0 目次はこちら


#構造思考OS  
#思考法
#構造化
#問いの立て方
#思考技術
#創作の裏側

#創作大賞2025
#ビジネス部門

いいなと思ったら応援しよう!

Daisuke よろしければ応援お願いします! いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!