大学教員をやめてポスドクとして再出発することにした
「将来、研究者になりたい。」
この気持ちは、研究を始めた学部生の頃から変わらない。
博士課程修了後、私は運良く20代で大学の助教のポジションに就いた。
しかし今私は、せっかく掴んだ教員の立場を手放し、ポスドクとして研究を続ける道を選んだ。その理由を自分の経験として書いてみる。
博士号取得後、私は助教として大学で働いてきた。
授業、海外出張、シンポジウムの企画、学生支援。研究室の外に出て、大学という巨大な組織がどのように動いているのかを、内側から見る貴重な経験を得た。
一方で、次第にはっきりと見えてきたこともある。
若い時期に教員になることのデメリットだった。
教育、運営、調整、会議。
研究に使える時間とエネルギーは想像以上に少なかった。
研究は思うように進まず、「今、自分は何を専門にしているのか」「どんな問いを追っているのか」を、はっきりと言葉にできなくなっていた。
役割は増える。肩書きも増える。
それでも、専門性は積み上がらない。
この状態で教員を続けて、仮にポストを上げていったとして、私は学生に何を語れるのだろうか。
「研究とは何か」「なぜこの分野をやるのか」
その問いに、実感を伴った言葉で答えられるのだろうか。
私は、面白い話ができる研究者になりたい。
それは話し上手である、という意味ではない。異なる分野や研究環境を経験し、自分が向き合ってきた問いを、自分の言葉で語れる研究者でありたい、ということだ。
そのためには、若いうちにどっぷりと、研究だけに集中する時間がもっと必要だと感じた。
博士課程のように「守られた研究」ではなく、より主体的に、成果の責任を引き受けながら研究に向き合う時間だ。
それが今の自分にとっては、ポスドクという立場だった。そして、私は自分の興味のある分野のポスドク研究員へ応募し、現在の大学へ辞表を提出した。
せっかく教員のポストが得られたにも関わらず、不安定な職であるポスドクを選び直すことに、不安もある。
教員の立場は任期付きとはいえ、継続すれば終身雇用に至る可能性が高い。
一方、ポスドクは多くがプロジェクトベースで、将来の保証はない。給与も下がる。評価軸も不透明だ。
それでも、自分が納得できる研究者像に近づくためには、安定を捨てて様々な分野の研究を経験する時間が必要だと思ったのだ。
若いうちに教員になることが、良い道とは限らない。
勿論、この選択の行く末は、数年後にしか分からない。『置かれた場所で咲く』という言葉のように、得たポジションで努力を重ねていれば、研究も教育も両立できる理想の教員になれる可能性もあるだろう。
それでも私は今の自分の直感に従い、研究に没頭できる環境で、ポスドク研究員として、もう一度、研究者としての軸を組み立てていくことにした。
未来はどうなるか分からない。それでも、安定した立場で業務に追われていた半年前よりも、先が見えなくても新しい研究分野にワクワクしている今の自分が、圧倒的に好きだ。
以上、キャリアに悩む最中の研究者のお話でした。
もう少し、日々の日記も書いてみたい。
研究に関係ないことも、なんでも色々書いていきたい。少しずつ。
26.2.14 追記
辞職の経緯についても書いてみたので。
