【ARMY目線】標準専属契約書を和訳して読んでみた【K-POP】
契約書に興味があるお年頃
私は普段BTS(バンタン)を推している一介のファン(ARMY)です。
バンタンで初めてK-POP沼へ来たのですが、「この沼変わってるな」と思うことがあった時、原因が「業界ルール=専属契約書」であるケースが時々ありました。そんなのあるんだ。
時々拾い読みしていたのですが、記事を書くついでに原本を読みに行くことが多くなり、関連項目を探すために下訳したりしていました。せっかくなので、皆さんと共有します。
HYBEのオーディションに留まらず、K‐POP業界を志望する日本人も多く存在しますので、何かのご参考になれば幸いです。
文章が固く読みづらいので、「和訳→簡単な要約」の順でまとめを挟んでいます。長いよ!という方はそこだけ拾い読みしてください。
和訳について
これは韓国の「韓国芸能製作者協会」HPの「コミュニティ>資料室」にある、文化体育観光部が定めた「大衆文化芸術人(歌手中心)標準専属契約書(2024.6.3.改正)」です。
わかりやすく言うと、国が定めた、K-POP歌手と事務所が契約する際のベースとなる契約書です。
置換リスト
直訳すると読みづらい表現があるため、文脈に従って以下のように置換しました。間違ってたらすみません。
企画業者(기획업자)=事務所
大衆文化芸術人(대중문화예술인)=芸能人
歌手(가수)=アーティスト
大衆文化芸術用役(대중문화예술용역)=芸能活動
青少年(청소년)=未成年
注意書き
これは各種報道や公開された資料を読んだ上での、BTSファンサイドによる和訳や感想であり、法的な正確性は保証しません。
引用する時は、この記事へのリンクを貼っていただければと思います。
※読みやすさ重視のため、一部改行を追加しています。
【全文訳】
芸能人(アーティスト中心)標準専属契約書
文化体育観光部告示 第2024-0021号(2024年6月3日改定)
事務所〇〇とアーティスト〇〇は、次のように専属契約を締結するにあたり、相互に信義誠実をもってこれを履行する。
第1条(目的)
本契約は、事務所とアーティストが相互の利益と発展のために積極的に協力することを前提とし、アーティストは最善の努力を通じて自身の才能と資質を発揮し、自己の発展を図ることはもちろん、芸能人としての名誉と名声を大切にし、事務所はアーティストの才能と資質が最大限発揮されるようマネジメントサービスを誠実に履行し、アーティストの利益が最大化されるよう最善を尽くすことで、相互の利益を図ることをその目的とする。
この契約は、事務所とアーティストがお互いに協力し、共同の利益と発展を目指すことを目的としています。
第2条(マネジメント権限の付与など)
①アーティストは事務所に、第4条に定める芸能活動に対する独占的なマネジメント権限を委任し、事務所はこのマネジメント権限を委任され行使する。
ただし、アーティストが事務所にこの独占的なマネジメント権限の一部を委任することについて留保することに両当事者が合意する場合には、この限りではない。
②事務所はアーティストが自身の才能と実力を最大限発揮できるよう、誠実にマネジメント権限を行使し、マネジメント権限の範囲内で芸能活動に関
してアーティストの私生活保障など人格権が内外に侵害されないよう最大限努力する。
③アーティストは契約期間中、事務所の事前承諾なく自身で、または事務所以外の第三者を通じて出演交渉を行ったり、芸能活動を提供することはできない。
ただし、第1項ただし書きにより一部の権限を委任しない場合、委任が行われなかった範囲内では本項を適用しない。
アーティストは事務所に、芸能活動における独占的なマネジメント権を委任します(ただし一部の権限は、両者が合意している場合のみ、委任しないことも可能)。
事務所は芸能活動におけるアーティストを保護する努力をし、アーティストは事務所の事前承諾なく、自身または第三者を通じて活動を行えません。
第3条(契約期間および更新)
① 本契約の契約期間は
_______年_______月_______日から_______年_______月_______日まで(_______年_______ヶ月)とする。
② 第1項による契約期間は、7年を超えることはできない。
ただし、契約期間を延長しようとする場合には事務所とアーティストが書面で合意し、延長することができる。
③ 契約期間中、次の各号のいずれかのようにアーティストの一身上の都合に関する事由によりアーティストが正常な芸能活動を提供できなくなった場合には、該当期間分だけ契約期間が延長されるものとし、具体的な延長日数は事務所とアーティストが合意して定める。
軍服務
妊娠・出産および育児
大学院進学、留学
芸能活動と無関係な事由により病院などに連続して30日以上入院する場合
その他アーティストの責任ある事由により芸能活動を提供できなくなった場合
④ 必要な場合、第1項の契約期間内に発売しなければならないアルバムの数を併記することができる。
⑤ 本契約の適用範囲は、大韓民国を含む全世界の地域とする。
契約期間は最長7年で、両者の合意があれば更新できます。契約期間中に発売するべきアルバムの数を決めることも可能です。
軍服務、出産、留学、30日以上の入院など、アーティストの個人的な事情で芸能活動ができない期間は、その分契約期間が延長されることになります。
第4条(芸能活動の範囲および媒体)
① アーティストの芸能活動は、次の各号の活動を指す。
作詞・作曲・演奏・歌唱などミュージシャンとしての活動、およびそれに付随する放送出演、広告出演、イベント司会などの活動
俳優、モデル、声優、TVタレントなど演技者としての活動(ただし、事務所の独占的マネジメントの対象となる範囲については、事務所とアーティストが別途合意するところによる)
その他、上記第1号または第2号の活動と密接に関連したり、文芸・美術などの創作活動として、事務所とアーティストが別途合意した活動
② アーティストの芸能活動のための媒体などは、次の各号の通りである。
TV(地上波放送、衛星放送、ケーブルTV、IPTV、その他新しい映像媒体を含む)、ラジオおよびインターネットなどネットワークを活用するコミュニケーション手段
LP、CD、LDP、MP3、DVD、その他音源および映像の固定のための媒体物とビデオテープ、ビデオディスク、その他デジタル方式を含む映像録音物
映画、公演、広告、イベント
ポスター、スチール写真、写真集、新聞、雑誌、単行本、その他印刷物
著作権、肖像権およびキャラクターを利用した各種事業やニューメディアなど、事務所とアーティストが別途合意した事業や媒体
③ 第1項および第2項の規定にもかかわらず、具体的な芸能活動の範囲と
芸能活動の媒体などは、事務所とアーティストが附属合意書で別に定めることができる。
アーティストが事務所を通して行う「活動内容とその発表の場」には、ミュージシャンとしての活動(作詞作曲、歌唱など)に加え、俳優やモデルとしての活動も含まれます。これらの活動は、テレビやラジオ、インターネット、CDなどの媒体を通じて行われます。
第5条(事務所のマネジメント権限および義務など)
① 本契約による事務所のアーティストに対するマネジメント権限および義務は、次の各号の通りである。
芸能活動に必要な能力の習得および向上のための一切の教育実施
または委託
第4条第1項の芸能活動のための契約の交渉および締結
第4条第2項の媒体への出演交渉
アーティストの芸能活動に関する広報および広告
第三者からアーティストの芸能活動に対する対価の受領および管理
芸能活動に関する企画、構成、演出、日程管理
コンテンツの企画・制作、流通および販売
その他、アーティストの芸能活動のための諸般の支援
② 事務所は、アーティストを代理して第三者とアーティストの芸能活動に関する契約の条件と履行方法などを協議・調整し、契約を締結する権限を持つ。
ただし、アーティストに契約の内容および日程などを事前に説明しなければならず、アーティストの明確な意思表示に反する契約を締結することはできない。
③ 事務所はアーティストに、第2項による契約に基づく義務を誠実に履行するよう要請することができ、アーティストは、身体的・精神的な準備状況など正当な事由がない限り、該当義務を誠実に履行しなければならない。
④ アーティストの芸能活動を第三者が侵害または妨害する場合、事務所は
その侵害や妨害を排除するために必要な措置を取らなければならない。
⑤ 事務所は、本契約によるアーティストの芸能活動、または芸能活動の準備
以外に、アーティストの私生活や人格権を侵害したり、侵害する恐れがある
行為を要求することはできない。
⑥ 事務所は、アーティストに不当な金品を要求してはならない。
⑦ 事務所は、アーティストの事前書面同意を得た後、本契約上の権利または地位の全部または一部を第三者に譲渡することができる。
⑧ アーティストが事務所所属の役職員によりセクシャルハラスメント・性暴力の被害に遭い、事務所にその事実を告げた場合、事務所は事実を確認して該当役職員の業務排除およびその他適切な措置を履行しなければならない。
事務所がアーティストに対して果たすべき「役割と責任」について、アーティストのスキル向上のための教育や、活動に関わる契約の交渉・締結、広報活動、収入の管理など、幅広い支援内容が含まれます。
また、事務所はアーティストのプライバシーや人権を尊重し、不当な要求やハラスメントを行ってはならず、特に芸能活動の妨害や職員によるセクハラについては措置を行うべきであることが明確に記されています。
第6条(アーティストの一般的権限および義務)
① アーティストは、第2条および第5条に基づき行使される事務所のマネジメント活動に対し、いつでも自身の意見を提示することができる。
② アーティストは、本契約目的の履行に必要な場合、芸能活動に関連する
資料(書類など媒体の種類を問わず)などを閲覧またはコピーすることを事務所に要請することができ、この時、事務所はその要請に応じなければならない。
③ アーティストは、事務所のマネジメント権限行使に基づき、自身の才能と実力を最大限に発揮し、誠実に芸能活動を提供しなければならず、アーティストは正当な事由なく芸能活動の提供を拒否してはならない。
④ アーティストは、芸能活動に支障をきたすほど芸能人としての品位を損なう行為、または事務所の名誉や信用を傷つける行為をしない。
⑤ 第5条第5項および第6項の規定にもかかわらず、事務所がアーティストに不当な要求をする場合、アーティストはこれを拒否することができる。
⑥ アーティストは、契約期間中に事務所の事前同意なく、第三者と本契約の内容と同一または類似の契約を締結するなど、本契約の効力を失わせたり、事務所の契約上の利益を不当に侵害する行為をしてはならない。
⑦ アーティストは、本契約で定めた事務所の義務が適切に履行されていない
時に、事務所に契約の適切な履行を要求することができる。
ただし、アーティストは事務所に本契約の目的を逸脱する不当な要求をしてはならない。
⑧ アーティストは、事務所所属の役職員によりセクシャルハラスメント・性暴力の被害に遭った場合、その事実を事務所に告知し、該当役職員の業務排除などの措置を要求することができる。
アーティスト自身の「権利と責任」について定めています。
アーティストは事務所の活動に意見を述べたり、関連資料の閲覧を求めることができます。不当な要求は拒否できますし、事務所の義務が果たされない場合には、契約の範囲内で是正を求めることもできます。
しかし、正当な理由なく芸能活動を拒否したり、芸能人としての価値を損なったり事務所の信用を傷つけたりする行為をしてはいけません。
第7条(アーティストの人間性教育および精神健康支援)
① 事務所は、アーティストが芸能人として資質と人間性を備えるために必要な教育を提供することができ、芸能人に対する教育提供に関連して現行法上
付与された義務を誠実に履行しなければならない。
② アーティストにうつ病の症状などが発見される場合、アーティストの同意のもと、適切な治療などを支援することができる。
事務所にはアーティストの成長と健康をサポートする義務があります。
(訳注:事務所は一種の教育機関でもあるんですね)
第8条(商標権など)
① 契約期間中、事務所は自身の名義でアーティストの姓名(本名、芸名、愛称、グループ名などを含む)、写真、肖像、サイン、音声、その他アーティストの同一性(identity)を表す一切のものを使用し、商標およびデザインを開発、出願・登録することができる。
② 事務所は、第1項に基づき取得した商標権またはデザイン権を、事務所の業務またはアーティストの芸能活動上の利用(第三者に対するライセンスを含む)に限定して使用しなければならない。
③ 契約終了時、事務所は第1項に基づき取得した商標権またはデザイン権を
次の各号のように移転する。
ただし、合意により別に定めることができる。
アーティストがグループの一員として活動した場合:事務所とグループメンバー間で合意された内容に従い、権利を移転する。
アーティストが単独で活動した場合:アーティストに権利を移転する。ただし、アーティストは自身の意思により権利移転を放棄することができる。
④ 事務所が商標およびデザイン開発に多額の費用を投資するなど、特別な貢献をした場合、第3項による権利譲渡時、事務所はアーティストにこれに対する適切な対価を要求することができる。
ただし、事務所がアーティストと精算時に本文の費用をすでに控除している場合、これを再度要求することはできない。
アーティストの芸名やグループ名などの商標権に関しては、事務所が登録し芸能活動の範囲内で使用します。契約終了時には、ソロアーティストの場合は個人、グループの場合はメンバー間の合意に基づいて、権利が移転されますが、事務所の投資額によっては対価を要求することも認められています。
第9条(パブリシティ権など)
① 本契約を通じて形成されるアーティストの姓名(本名、芸名、愛称、グループ名などを含む)、写真、肖像、サイン、音声、その他アーティストの同一性(identity)を表す一切のものを商業的に利用できる財産的権利、およびそれに関する人格的権利はアーティストにあり、事務所とアーティスト間で別途合意された内容がない限り、事務所は契約期間に限り、これをアーティストの芸能活動または事務所の業務と関連して排他的に利用できる権限を持つ。
② 第1項による事務所の権限は、契約期間終了と同時に消滅する。ただし、
契約期間終了後も事務所が第1項による財産的権利を利用しようとする際は、アーティストと事前に書面で合意しなければならない。
③ 事務所は、第1項による権限を行使する際、アーティストの名誉など人格を毀損しないようにしなければならない。
アーティスト自身の名前や肖像などの商業的利用に関して、アーティストはそれを使用できますが、事務所も契約期間中独占的に使用できます。契約期間後も使用したい場合は、別途合意が必要です。
第10条(著作権帰属など)
① 契約期間中にアーティストと関連して事務所が開発・制作したコンテンツ(本契約で「コンテンツ」とは、アーティストの芸能活動と関連して第4条第2項の媒体を通じて開発・制作された結果物を指す)に対する著作権は、著作権法に基づき帰属する。
② 契約終了後、第1項に基づき売上が発生する場合、事務所はアーティストに売上の_____%を精算し、( )ヶ月単位で(例:契約終了後0年)まで支払う。
ただし、アーティストが事務所に支払わなければならない金銭がある場合には、上記精算金から優先的に控除することができ、事務所はアーティストの要求がある時、精算金支給と同時に精算資料をアーティストに提供する。
③ アーティストは、事務所がアーティストを通じてコンテンツの素材として生み出した著作物と同一または実質的に類似するものを、契約終結日から3年間、直接または第三者を通じてコンテンツ(例:アーティストが同一曲を再歌唱したアルバム、デジタルファイルなどの録音物)として制作して使用または販売することはできない。
④ 事務所とアーティストは、両者が保有する著作権および著作権以外の著作権法が定めた権利(著作隣接権など)を適切に活用することで、多様な価値創出および収益拡大を図れるよう、積極的に協力しなければならない。
アーティストに関連して制作されたコンテンツの著作権については、著作権法に従いますが、契約終了後にコンテンツから発生した売上は、定められた比率でアーティストに分配されます。
アーティストは契約終了後3年間、事務所が制作したコンテンツと実質的に同じものを自分で作ったり販売したりしてはいけません。
第11条(権利侵害に対する対応)
第三者が第8条から第10条までに規定された権利を侵害する場合、事務所は自身の責任と費用でその侵害を排除するための措置を取らなければならず、アーティストはこのような事務所の侵害排除措置に協力する。
アーティストの権利(商標権・パブリシティ権・著作権など)が侵害された場合、事務所は責任を持って解決に当たります。アーティストはそれに協力します。
第12条(収益の分配など)
① 本契約を通じて得る次の各号のすべての収入は、いったん事務所が受領し、これを第2項および第3項に基づいて分配しなければならない。
アルバムおよびコンテンツ販売に関する収入(第8条から第10条までに伴う収入を含む)
芸能活動の対価として得る収入
② アルバムおよびコンテンツ販売に関する収入(第8条から第10条までに伴う収入を含む)は、各種流通手数料、著作権料、実演料などの費用を控除した後、事務所とアーティストに分配し、その分配方式(例:スライディングシステム(訳注:契約期間や人気に応じて分配率が変動するシステム))や具体的な分配比率は事務所とアーティストが別途合意して定める。
③ 芸能活動に関する第1項各号による収入は、芸能活動の対価として得る収入から次の各号の費用を控除した金額を意味し、分配方式(例:スライディングシステム)や具体的な分配比率は、事務所とアーティストが別途合意して定める。
アーティストの公式的な芸能活動と関連して直接的に必要な費用(車両維持費、衣食住費用、交通費など、芸能活動の補助・維持のために必要的にかかる実費)
広告手数料費用
その他、事務所がアーティストの同意のもとに支出した費用
④ アーティストがグループの一員として活動した場合には、第2項および第3項による分配時、該当グループの人数で均等に分割して支給する。ただし、これに対する事務所とアーティスト間で別途の合意があれば、それに従う。
⑤ アーティストの帰責事由により、事務所がアーティストに代わって第三者に賠償した金銭がある場合、この金銭および賠償にかかった費用をアーティストの収益から優先的に控除することができる。
⑥ 事務所が第三者からアーティストの芸能活動提供の対価を受領した場合、受領日から45日以内にアーティストに契約で定めた金銭を支払う。ただし、
支払いを遅延する正当な事由がある場合は、支払日から45日の範囲でその支払期限を延長することができる。
⑦ 事務所は、第1項に基づいて分配された収益をアーティストに支払うと同時に、収益の精算内訳(総収入、収益の分配、精算方法および費用控除などを確認できる資料)をアーティストに提供する。この時、アーティストは必要な場合、精算内訳を受領した日から30日以内に事務所に精算内訳について異議を申し立てることができ、事務所はアーティストに精算内訳の根拠を誠実に提供しなければならない。
⑧ アーティストは、必要な時、事務所に精算内訳を要求することができ、その提供周期は「大衆文化芸術産業発展法」で定められた通りとする。
⑨ 事務所とアーティストは、各自の所得に対する税金をそれぞれ負担する。
アーティストの活動で得た収入はまず事務所が受け取り、各種費用を差し引いた後、事前に合意した比率でアーティストに支払われます。グループの場合、収入は人数で均等に分けられます。アーティストに責任のある特別費用(賠償など)は、事前に差し引かれます。
また、事務所は収益の受領から45日以内に支払うこと、そしてアーティストに精算内訳を明示することが義務付けられています。
第13条(諸費用負担)
① 事務所は、自身のマネジメント権限の範囲内で、アーティストの芸能活動に必要な能力の習得および向上のための教育(訓練)にかかる諸費用を、原則として負担する。
② 第1項による諸費用は、アーティストの同意のもと、アーティストに負担させることができ、 今後発生するアーティストの収入から控除されうる。事務所は、アーティストが負担する費用の範囲が合理的な程度を逸脱しないようにしなければならない。
③ アーティストは、芸能活動と無関係な費用を事務所に負担させることはできない。
アーティストのスキルアップのための費用は、原則として事務所が負担しますが、アーティストの同意があれば、その費用を出世払いで負担させることも可能です(合理的な範囲に限る)。
アーティストは、芸能活動と関係のない費用を事務所に要求することはできません。
第14条(確認および保証)
① 事務所は、契約締結当時、アーティストに対し、第5条第1項および第12条のマネジメント権限および義務を適切に行使するのに必要な人的・物的資源を保有し、適切な能力を備えていることを確認し、保証する。
② アーティストは、事務所に対し、次の各号の事項を確認し、保証する。
本契約を有効に締結するのに必要な権利および権限を保有していること
本契約の締結が第三者との他の契約を侵害しないこと
契約期間中、本契約内容と抵触する契約を第三者と締結しないこと
事務所はアーティストを適切にサポートする能力と資源を持っていることを保証し、アーティストは契約締結可能(未成年ではない、もしくは保護者が同意している)であり、かつ他の事務所と専属契約したり、契約期間中に他の事務所とこっそり契約したり許可なく芸能活動を行ったりしないことを誓います。
(訳注:要するにタンパリング防止のための項目です)
第15条(契約内容の変更)
本契約内容の一部を変更する必要がある場合は、事務所とアーティストの書面合意により変更することができ、その書面合意で別に定めがない限り、変更された事項はその合意があった時から効力を有する。
契約内容の変更には、事務所とアーティストとの合意が必要です。
第16条(契約の解除または解約など)
① 事務所またはアーティストの一方が本契約で定めた内容を違反した場合、
その相手方は、有責当事者一方に対し14日の期間、違反事項を是正するよう
要求し、その期間内に違反事項が是正されないか、あるいは是正できない
場合には、契約を解除または解約することができ、損害賠償を請求することができる。
ただし、違反事項の是正が遅延する正当な事由がある場合には、是正日から14日の範囲でその是正期限を延長することができる。
② 事務所が契約内容に基づき自身の義務を誠実に履行しているにもかかわらず、アーティストが契約期間の途中で契約を一方的に破棄する目的で契約上の内容を違反した場合、アーティストは第1項の損害賠償とは別途で、契約解約当時を基準として、直前の2年間の月平均売上額に契約の残り期間の月数を掛けた金額(アーティストの芸能活動期間が2年未満の場合は、実際の売上が発生した期間の月平均売上額に残り期間の月数を掛けた金額)を違約罰として事務所に支払う。
③ 契約解約日現在、すでに発生した当事者間の権利・義務は、本契約の解約により影響を受けない。
④ アーティストが重大な疾病にかかったり負傷を負い、芸能活動の提供を
継続することが困難な事情が発生した場合、契約当事者間の合意に基づき本契約を解約することができ、この場合、事務所はアーティストに損害賠償などを請求することができない。
⑤ 事務所または事務所所属の役員(登記役員を指す)、事務所所属の
職員(雇用形態を問わない)がアーティストに対するセクシャルハラスメント・性暴力により裁判所の確定判決を受けた場合、アーティストは契約を解約することができ、それによる損害賠償を請求することができる。ただし、事務所所属の職員が犯した性犯罪の場合、事務所がこれに対する帰責事由がないことを立証する場合には、契約解約および損害賠償の事由にならない。
契約を途中でやめる場合のルールです。
どちらか一方が契約に違反した場合、相手方は14日間の猶予期間を与えて是正を求め、それが叶わない場合は契約を解除し、損害賠償を請求できます。アーティストが一方的に契約を破棄しようとした場合は、残りの契約期間に応じた違約金を支払う義務があります。
アーティストが病気や怪我で芸能活動を行えなくなったり、事務所の役員などからセクハラや性暴力の被害に遭ったりした場合は(裁判所の判断が必要)、合意の上で契約を解除でき、その際の損害賠償は請求されません。
第17条(秘密維持)
事務所とアーティストは、本契約の内容および本契約と関連して知り得た相手方の業務上の秘密を第三者に漏洩したり、不当な目的で使用してはならない。
この秘密維持義務は、契約の解除・解約および契約期間終了後も維持される。ただし、契約関連の諮問などのために秘密維持義務を負う弁護士などの専門家、政府などに提供する場合は例外とする。
事務所とアーティストは、契約を通じて知り得た相手方の秘密をリークしたり不正利用したりしてはいけません。契約が終了した後も同様です。
第18条(紛争解決)
① 本契約から発生するすべての紛争は、事務所とアーティストが自律的に円滑に解決するよう努力する。
② 第1項に基づき解決されない場合は、次の各号の一つに該当する手続きを
訴訟に先行して経ることができ、両当事者は該当手続きに誠実に取り組まなければならない。
コンテンツ紛争調整委員会の調整
韓国著作権委員会の調整
大韓商事仲裁院の仲裁
☞「仲裁」紛争を該当分野の専門家たちの判定によって解決する制度であり、訴訟(三審制)とは異なり、一審で終わる(仲裁判定は裁判所の確定判決と同一の効力)
③ 第2項による手続きを進めない場合、本契約に関する紛争の解決は
民事訴訟法による訴訟手続きによる。
契約に関するトラブルが起きた場合は、「話し合い→専門の紛争解決機関(調整、仲裁など)→裁判」という段階で解決することになります。
第19条(未成年の保護)
① 事務所は、未成年(満19歳未満の人を指す。ただし、満19歳になる年の1月1日を迎えた人は除く)芸能人の身体的・精神的健康、学習権、人格権、睡眠権、休息権、自由選択権など、基本的な人権を保障する。
② 事務所は、芸能マネジメント契約を締結する場合、芸能人の年齢を確認し、未成年の場合、過度な露出や著しく扇情的な表現を要求することはできない。
③ 事務所は、未成年芸能人の芸能活動提供時、「大衆文化芸術産業発展法」に基づく活動提供時間の規定を遵守しなければならない。
④ 未成年芸能人との関係において、本契約で定めていない事項は、「未成年芸能人(または練習生)標準附属合意書」で定めることができる。
事務所は、成人年齢(19歳)に達していないアーティストの健康、学習権、睡眠時間などを保障する義務があります。また、過度な露出や扇情的な表現を要求することはできず、活動時間についても法律で定められた規定を守らなければなりません。
第20条(附属合意)
① 事務所とアーティストは、本契約の内容を補足したり、本契約で定めていない事項を規定するために、附属合意書を作成することができる。
② アーティストがグループの一員として芸能活動を提供する場合、第8条から第10条までの規定は別途の合意で定めることができる。
③ 第1項による附属合意は、本契約の内容に抵触したり違反したりしない範囲に限定する。
④ 第19条第4項による「未成年芸能人(または練習生)標準附属合意書」は、第3項の例外とし、本契約に優先して適用する。
基本契約書でカバーしきれない部分に関しては、「附属合意書」を作成し、詳細なルールを追加できますが、基本契約書に反する内容であってはいけません。ただし、未成年に関する合意書は、基本契約書よりも優先されます。
契約の成立および内容を証明するため、契約書2部を作成し、事務所とアーティストが署名捺印後、それぞれ1部ずつ保管する。
感想
専属契約書は、いわばK-POPアイドルにとってのルールブック。
こうして知ることにより、あれはそこが根拠なのかと改めて納得することもあり、大変興味深かったです。
よくK-POP界隈で言われる「魔の7年」などの論拠に当たる、契約の最大年数についても明確に記載されており、なるほどと思わされます。
ただし、韓国ガールズグループ「FIFTY FIFTY」問題によってこの条項は改められ、デビュー後最初の契約は基本7年まで、になりました。
(2024/6/3、文化体育観光部が改正案の告示を明らかにした)
こうして全体に目を通してみると、妙に具体的に盛り込まれてる要素があって(報酬分配とか性被害とかタンパリングあたり)、「ああ裁判になったんだな……」って思いますね。
性被害を理由にした契約解除には裁判での認定が必要、は妥当なんでしょうか。
警察・検察の判断だけでなく、裁判所で確定させてから動く、というのは韓国の契約文化によるものなのかもしれませんが、被害者の立場から見るときついですね。
タンパリングについては「FIFTY FIFTY」問題で一度盛り込まれたものの、このまま行くとNewJeans・ミンヒジン裁判辺りから新たな判例が生まれ、反映されそうです。
以前K-POPの業界団体が声明を出してましたが、業界としても国がどう動くかは死活問題ですから、今後の展開が注目されますね。
5つの音楽団体は本日(19日)、報道資料を通じて「健全で持続可能な発展のため、一部の企画会社とアーティストたちには世論を誘導した根拠のない心理戦を通じて自分の利益を収めようとする行為を中断するよう、国会と政府には主要な葛藤の原因になる“タンパリング”の防止のための政策支援を進めてくださるよう、心からお願いする」と訴えた。
契約や法律は生き物。現在の状況を反映させ、より良い関係に向けて発展していって欲しいものですね!
個人的には、次のBTSの契約更新と内容が一番気になります。気が早い。
自分で読んでみたい人へ
この契約書の原本ファイルは「.hwp」っていう形式になっています。韓国製ワープロソフト「Hancom Office」のものだそうですが、初めて見たわ……。
韓国ではメジャーらしく、公的資料でも結構使われてるらしいんですが、日本が昔文書作成ソフト「一太郎」使ってたようなもんなんでしょうか(調べたらまだ使われてて震えました)。
世界で唯一、Microsoft Wordがシェアの第1位でない国が韓国である。
オンライン変換サービスはたくさんあったのですが、Wordへの変換はエラーが出たので、PDFにして翻訳のためのテキストデータを回収しました。
思わぬところで躓くものだな……と遠い目になったので、知識として共有しておきます。こんな知識どこで役に立つんだろうかと思いはしますが、いつか誰かが検索で辿り着くかもしれません。ファイティン!
関連記事
いいなと思ったら応援しよう!
もしこの記事が気に入ったり、役に立ったりしたら、コーヒー1杯奢ってください。やる気が出ます!( *´艸`)