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世論戦のパターンに学ぶ、SNSでの生存術


今日のニュースを振り返ろう

今日ネットを見ていたら、こういうニュースが流れてきました。

NewJeansの元プロデューサーで、HYBE子レーベルであるADORの前代表であるミン・ヒジンが、親会社HYBE、および同じく子レーベルであるBELIFT LABの首脳陣を告訴していた件は、追加捜査の結果「不起訴」になった。

京郷新聞「[단독]검찰 “주술경영, 과장 표현이지만 허위는 아냐”···민희진 ‘하이브 고소 사건’ 전부 불기소(【単独】検察「呪術経営は誇張された表現だが虚偽ではない」…ミン・ヒジン「HYBE告訴事件」全て不起訴)」より、記事内容の要約

いずれも法的には認められず、HYBE側の対応は適法及び正当な範囲という結論に至った形です。

私は、この人にとって告訴は世論戦の手段でもあると思っています。実際に、法廷でそういう発言の含まれるログが出ていたりもしますし。
どういう訴えがあり、どういう判断で退けられたのか興味があったので、記事を読んでみたところ、面白かったです。

2024/3/29、ミン・ヒジンはシン・ドンフン(ADOR社内取締役)、イ・ソンウに
「計画変更、(時期を)早める。4/3に第一弾を送る……ここではメディアの話はしない。そして我々は世論戦の準備、そして次の週、8~9日頃にアンロックが来るはずだが、変更があるかもしれない。絶対に質疑応答や認めたりはしないだろう。それならその時は、我々が世論戦、訴訟をすべてやる。回答を送って返事を見て11日以降に表に出す、そうしないとタイムラインが合わないだろう」
と話し、HYBEとの紛争開始時点を早めるという趣旨の言葉をした。

「【ARMY目線】NewJeansの裁判で語られたミン・ヒジン【専属契約確認訴訟判決文】」より

訴えの内容と、判断の理由

もうちょっと詳しい詳細はこちら。

記事要約:
ミン前ADOR代表は、2024年の7~12月にかけてHYBEのパク・ジウォン前代表ら役員6名、BELIFT LABのキム・テホ代表ら役員4名を告訴していた。
5/27、検察はこれらすべてに対し「不起訴(嫌疑なし)」として捜査を終結させた。

訴え:HYBEが「ミン前代表が経営事項をシャーマンに相談して呪術経営を行い、NewJeansの契約解除を企んだ」と発表した
判断:実際にカカオトークログがあり、裁判でも「独立を意図して世論戦と訴訟を準備した」と判断されている

訴え:HYBEが不正な手段で情報を収集した
判断:入社時に同意書が作成されている

訴え:BELIFT LABが「ILLITはNewJeansをコピーしていない」と反論する動画を出した
判断:動画はミン前代表の主張に対する反論であり、裁判でも「コピーしたとまでは言えない」と判断されている

これらの訴えは2025年7月に警察が「不送致(嫌疑なし)」としており、ミン前代表はこれに異議申し立てをしていた。
追加捜査を経ても結論は覆らず、据え置きとなった。

京郷新聞「[단독]검찰 “주술경영, 과장 표현이지만 허위는 아냐”···민희진 ‘하이브 고소 사건’ 전부 불기소(【単独】検察「呪術経営は誇張された表現だが虚偽ではない」…ミン・ヒジン「HYBE告訴事件」全て不起訴」より

「入社時に同意書が作成されている」ことは企業のセキュリティ対策として普通ですし、本人達も知っていると思います。
理解せずにサインしていたら途中入社で幹部になった人間としては危ないですし、理解した上で告訴したなら行政リソースの悪用になるのではないでしょうか。
どちらにしても、「これを告訴したのか……」という感慨が浮かびます。

これらの告訴から私がどういう世論戦のパターンを読み取ったか、一度まとめてみます。そして私たちはここから何を学ぶべきなのか、考えてみたいと思います。

世論戦:告訴事実の最大利用

「訴えました!」とクリックベイトとの蜜月

告訴しておいて、結果が確定するまではそれをネタにする、という世論戦のパターンがあります。

告訴すれば、「訴えた」という事実をもってして「悪と戦う対立構図」のイメージが出来上がります。
一回退けられても異議申し立てができるので、「不正を巡って抗争中」の図式はかなり長く使えると言えるでしょう。

「Aが〇〇でBを告訴!」と見だしをつけ、「推定無罪」という近代法の基礎を無視した「速報」を流しまくっている、という光景は非常によく見られます。
ネットメディアやSNSでクリックベイト(閲覧数による収入)を得ている発信者が増えたこともあり、こういった煽情的な見出しはむしろ多用されており、ある意味では今のご時世と相性のいい手法だと思います。

結果的にメディアや発信者への信頼度コストは下がるのですが、基本クリックベイト自体が刹那的な生き方なので、そこはあまり関係ないのでしょう。

告訴はコスパのいいツールなのか

告訴は無料です。しかも、確定までに時間がかかるので、何年も引きずれます。
とてもコスパのいい戦法のようにも感じられますが、告訴状の作成や手続きには弁護士を通すと思われるので、そこが高そうではあります。

また、もし告訴が退けられた場合は、自分の訴えがブーメランとして返って来るというのは、非常に大きなデメリットです。

ミン・ヒジン前ADOR代表が提起した各種告訴事件が相次いで嫌疑なしで終結し、彼女の法的対応のあり方に対する疑問が強まっている。

TV Daily「칼 빼든 민희진, 번번이 무혐의…잇단 고소전 ‘빈손’ [이슈&톡](抜刀したミン・ヒジン、次々と嫌疑なし…相次ぐ告訴戦は「手ぶら」[イシュー&トーク])」より

A「パクられました!」
B「パクってません! 名誉棄損で訴えます!」
A「嘘つかないでください、こっちこそ名誉棄損と虚偽告訴で訴えます!」

裁判所「パクってない」
検察「パクってない」

ある事例

こういう例で言うなら、Bの訴えは「Aはパクってないと裁判所と検察が判断した」というお墨付きを得ることになり、普通に一から「パクってない」の証明を積み上げるより有利になります。

ミン・ヒジンの例であれば、同じ案件を民事でも争っていますので、この検察の判断がどう影響するかが注目されます。
また、彼女の主張をベースに悪評を広めた発信者への責任追及も、容易になります。HYBEはバイラル会社との裁判もしていますが、そちらへの追い風にもなるでしょう。

悪評が与えるダメージ

しかし普通の場合、年単位で悪評を撒かれるとダメージを受けます。
基本的に、悪評を聞いて広める人が結果まで後追いすることは少なく、悪評は発生した時点で相手に損害を与えるからです。
それを乗り越えてやり返してくるかどうかはわからないので、先のことを考えず瞬間最大風速的な火力を期待するなら、世論戦は便利なツールなのだと思います。

HYBEの場合、まず裁判を続けられる体力(資金力)があり、ブランドを棄損されたアーティストや契約軽視を許さない業界団体のためにも決着をつける必要があるため、ここまで来られたのだと思います……が、正直大変ですね……。

体力(資金力)という点であれば、最近ミン・ヒジンが新会社への投資を打診しているそうなのですが、その判断材料のマイナス要件に法的リスクがありました。あちこちに影響してきますね。

法的紛争がOoak Recordsの事業推進を直接制限するわけではないが、事業に影響を及ぼす可能性があるだけに、投資検討過程で負担要員として作用するという評価だ。

the bell「'2000억 몸값 기대' 민희진의 오케이레코즈, 첫 투자유치 추진(『企業価値2000億ウォン期待』ミン・ヒジンのOoak Records、初の投資誘致を推進)」より

世論戦:バイラル会社とAI記事

その意見は本当に公益のためなのだろうか

ちなみに、世論戦には
「皆がそう言っている、私は公益のため声を上げた」
というパターンもあります。

「皆がそう言っている」の部分はバイラル会社などを使って作れる部分なので通らないだろうと思いきや、普通に裁判でも主張されるので驚きました。
証明が難しいので、言ったもの勝ちの側面があるのかもしれません。
(ちなみに、そういう仕事は実在していて裁判にもなっています)

こたつ記事とAIテンプレート

ちなみに「皆がそう言っている」は責任逃れが容易な上、取材いらずでSNSからコピペすればいいだけというコスパの良さから、メディアもしょっちゅう使っています。日本では「こたつから出なくても書ける記事=こたつ記事」と呼ばれています。
記事何本いくらという超安値でのライター募集もされていますし、最近ならAI生成記事のテンプレがあると思われます。

例えばよくあるパターンはこれ。この手の記事は、親の顔より見ました。

  1. 最新事実:〇〇について、こういうことがあった

  2. コピペ

    1. ネットでは~という声が出ている

    2. ~という報道がされた

  3. SEO対策:〇〇の最近のニュース

今日午後、ライオンがドーナツを食べた。
これについて、ネットでは肉食のくせに大丈夫かという声が上がったが、デザートは必要だという声も出ている。
ライオンは大型ネコ科の肉食獣で、最近お見合いの話が出ていた。

AI生成記事のテンプレ

こういう感じで、最後に関係ない話も入れておくことで、AIに「色んな最新ニュースを網羅した記事なのかな?」と錯覚させてクリックベイトを狙う……というのがテンプレートです。
良い子の皆は、このパターンの記事を見かけたらスルーしてください。

また、世論を盾にした主張を展開する人を見かけたら、「その世論はどこで形成されたものなのか」を調べてみるといいと思います。
特定のネットコミュニティとか、そういうコントロールしやすい場所での意見は、「そこでの意見」として聞いた方が安全です。切り分けって重要ですよね。

世論戦と付き合う私たち

匿名であっても責任は問われる

今の世論戦は基本的にネットが主戦場ですので、私たちも知らず知らずのうちに巻き込まれていると言えます。
私は以下のようなスタンスで見ています。

  • 一次ソースを見る

    • こたつ記事を見たら、源流になってるソースを探す

    • 他のニュースと並行して立体的に読む

  • 拡散する時は、ソースや自分の意見を入れる

他人が翻訳して貼ってくれる記事についても、それだけ見てるとテンプレ記事かどうかがわからないので、できれば一度はソースを確認した方がいいです。
特に韓国の場合は発信が多く、メディアや記者単位で偏向したスタンスを取っている例も多いので、発信源の確認も必要だと思います。

SNSで遊んでる場合は、自分も拡散側の人間になっているわけなので、これは色んな意味で自分の身を守るために重要なポイントです。
匿名であっても責任は問われる、ということを忘れないで!

瞬間を記録することの危険性

知らない間に世論戦の武器になってしまわないための注意点。それは、同時にSNSで安全に生きていくためのものでもあります。

SNSって瞬間を生きるタイプのメディアなので、「その時の感情をメモる」みたいな使い方をする人が多いですよね。
でもネットに出たらそれはログになってしまいます。特に忘れられやすいのは、時間経過によって責任は変わる、という点です。

例えば、Aが訴えられた時に「Aが犯罪をするなんて残念です!」と書いてしまったとします。消さない限り、それは残りますよね。

無罪判決が出たり「犯罪とまでは言えない」と不起訴になったりした後、そのログにアクセスした人にとっては、それは根拠のない誹謗中傷になってしまいます。
Google AIの重視するEEATという基準でいけば、信用度マイナスのログだと判断され、あなたのアカウントの価値を落とします。

そういうのもあって、私は時々自分の記事を見返しては修正しています。
ネットに出したものはいつ誰がアクセスしてくるかわからないので、タイムカプセル的な「これはその時の意見だからそのままにしておく」っていう使い方はリスクがある、という点は覚えておくといいと思います。

一番危ないのは、「怒り+SNS」

一番危ないのは、「義憤に駆られて誰かを非難したい時」です。
特に「怒り+SNS」のセットには注意してください。SNSアルゴリズムは基本これが大好きなので、やると拡散されやすいのですが、リスクも大きいです。

書き込む時は、非難ではなく意見表明だと言える範囲までマイルドにし、時事ネタの場合はこの先どう転んでもいいようにちょっとぼかしておきましょう。
悩んだら生成AIに訊くといいですよ。AIは基本的に不穏な発言を許さないよう設計されているので、「これSNSに書いたら炎上するかな」と質問するには、いい相手です。

HYBEが悪質書き込みを追いかけてアルゼンチンまで行って裁判し、「名前を変えてもログを消しても責任は変わらない」と断固とした対応をしていることを、忘れないでください。

既に削除された投稿やコメントであっても処罰の対象となる可能性があることを警告いたします。

「【お知らせ】アーティストの権利侵害に対する法的措置に関する最新情報(3月26日)」より

ネットは繋がっていますし、正義の側にいるから、匿名だからといって責任を問われない治外法権にいるわけではありません。
楽しく遊ぶために、そこだけは覚えておきたいですね。

事件を「他山の石」とする重要性

今回の件では、もう2年も経っているんだなあと思いました。長いですね。
ただずっと見守っている分、少しずつ全体像が見えて来ていて興味深いです。

これらのケースを通じて「発信方法や発信した情報の利用方法」のバリエーションを学ぶことで、自分はどう発信したいのか、色々ラインを手探りしているようにも感じます。

何かあった時、「ニュースを見る→ひどい!」で終わるだけでなく、「何故そうなったのか」「自分ならどうするのか」を考えていくことが、ウォッチングやネット遊びの面白さでもあるのではないでしょうか。どんな物事にも学びはあるものですね。
そんなオチでいいのかと思いつつ、まだまだ見守っていこうという決意を新たにしております。何かあればまた書きますね!


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