【考察】令和7年度 中小企業診断士2次試験合格者数が激減した理由
わたしは、資格の学校TAC名古屋校中小企業診断士講座で2次本科を担当している(令和7年度受講生は12期生)。
よって、2次筆記試験の合格発表日は、10時ぐらいからスマホの前でスタンバって受講生からの報告を待つ。毎年例外なく、喜怒哀楽の感情が忙しい。
まずは、令和7年度2次筆記試験を受験された皆様、本当にお疲れ様でした。これまで積み重ねてきた努力に、心からの敬意を表したい。
先日(2026年1月14日)、令和7年度2次筆記試験の結果が公表された。その数字は、多くの受験生や我々講師陣に衝撃を与えるものであった。合格率は17.6%。近年の18%台という推移から1ポイント程度下落し、合格者数も大幅に減少した。
なぜ、これほどまでに門戸が狭まったのか。そしてこの結果が意味する「診断士試験の変質」とは何か。データに基づき、講師の視点からその深層を考察する。
ただし、コンサル実務を生業とし、診断士受験対策の現場に深く関わる一講師の私見にすぎない。その点はご了承いただきたい。
令和7年度試験は「近年稀に見る難関年」
令和7年度の中小企業診断士試験の動向は、例年以上に大きな注目を集めた。一次・二次ともに合格率が過去5年の水準をほぼ下回り、とりわけ二次筆記試験に関しては 口述試験を受ける資格を得た人数が1,241人にとどまり、割合で言えばわずか17.6% という結果になっている。平成21年度の17.5%に次いでワースト2位だ(※1/23修正)。
一次試験での合格率低下は既に他の分析でも指摘されているが、その余波が二次にも大きく影響を与えた点は見逃せない。特に、一次合格者数が5,358人から4,344人へと大きく減少したこと は、二次の門戸を狭める構造的な要因として明確だ。
合格者数の激減―数字が語るインパクト
まずは数字で比較してみよう。


※令和7年度は合格者数について「口述試験資格取得者数」を採用
最大の特徴は、「2次筆記試験受験生の『数』が減り、会場にいるのは比較的レベルの高い層。それなのに『合格できる人数』を例年以上に絞り込んだ」ということだ。
この背景には二次だけでなく、一次の結果が深く影響している。とりわけ、一次試験における「財務・会計」の合格率は低く、8.4% という数字が出ている。この壁を突破した受験生は基礎力が高い反面、そこから漏れた層が二次の土俵に立てず、結果として例年以上に“選ばれし少数”が二次に進んだ格好だ。
なぜ難化したのか?――3つの背景からの考察
令和7年度の合格者数激減を理解するために、次の3つの側面からその理由を考察する。

① 実務能力のハードル引き上げ

近年、中小企業診断士に求められる役割は、「現場で即戦力となる能力者」である。特に、DX・事業承継・財務戦略といったテーマは、中小企業の支援現場で重要性が増している。
こうしたトレンドを受けて、試験委員会が論理思考・実践的(具体的)答案をより厳格に評価した可能性はある。
単なる解答を超え、「現場対応力」を問う設問が増えているという受験生側の実感もあり、これは単なる難易度上昇ではなく評価軸の変化と言えるのではないだろうか。
② 一次財務・会計の衝撃と事例IVの易化が合否を分ける鍵

一次試験の財務・会計の合格率は8.4%。これはなかなかの厳しさであり、一次突破者の属性自体が変わった可能性がある。
単年度視点で見たときには、財務が苦手な受験生には不利で、得意な受験生を中心に二次へ進出する構図となり、多年度生や一部の受験生は一次の壁で脱落した。
一方で、令和7年度の事例IVは 「落ち着いて解けば満点すらも狙えるレベル」 だったという声も少なくない。
ここに逆説が生じる。
問題が易しい → 多くの受験生が高得点を狙う → 相対評価で順位が決まる
つまり、ケアレスミスが命取りになる。平易な問題ほど、少しでもミスをした人は上位層から脱落しやすい。令和7年度は 「減点差」が合否を分けた年だった可能性が高い。
結果として 、財務的視点で設問構成を読めない、評価基準と合致しない層の離脱が顕著になったのだろう。
③合格枠の削減は「質の担保」か?

以前、金融庁や経済産業省が「伴走型支援」を強化する流れの中で、金融機関における中小企業診断士の活用や登録者数の増加を後押しする動きがあった。しかし、今回の試験結果(1次・2次ともに絞り込み)を見る限り、その「フェーズ(段階)」が明らかに変わったと捉えるのが自然だろう。
「数を増やす」段階から、以下の3つの観点での「質の選別」に移行したとわたしは考えている。
「伴走型支援」の高度化
金融庁が金融機関に求めている支援は、単なるリスケ対応や融資判断ではなく、経営課題を解決する「伴走型支援」だ。現在、中小企業が直面している課題はDX、カーボンニュートラル、事業承継など非常に難易度が高い。 そのため、「肩書きだけの診断士」を増やすよりも、「高度なコンサルティング能力を持った即戦力」を厳選する方向へ舵を切った可能性がある。
当然ながら、新しい情報やツールを取り入れる程度の柔軟性も必要だ。
私見だが、令和の今、現金主義を頑なに通していたり生成AIをほとんど使ったことがなかったりする診断士はオワコンだと思っている。
「財務・会計」スキルの重要性再認識
今回、1次の「財務・会計」が難化したことは、金融庁の意向と無関係ではないだろう。金融機関との連携において、財務諸表を読み解き、キャッシュフローに基づいた改善提案ができることは「最低条件」だ。
「診断士の数だけ増えても、財務が弱い人ばかりでは困る」という、実務現場(金融機関や支援機関)からのフィードバックが、試験の合格基準(特に財務への厳しさ)に反映されているのかもしれない。
「ライセンス価値」の維持
診断士の登録者数は増加傾向にあるが、あまりに急激に増やしすぎると「資格のデフレ(価値低下)」を招く恐れがある。 実際に、補助金申請支援に直結するコンサル以外の実務に関わったことがない診断士は思いの外多い。
合格ラインを甘くせず、あえて絞り込むことで、「難関を突破した高度専門人材」としてのブランドと質を担保しようとする意図すら感じられる。

傾向はどう変わったか?
「診断士を増やす流れ」自体が止まったわけではなく、「真に実務を担えるプロを選抜する試験」へと、選別の解像度が一段上がったと言えるだろう。
国が求める支援のレベルが上がり、それに応えられる人材かどうかを厳しく見極めるステージに来たのかもしれない。
受験生への影響と市場価値の変化
今回の合格者数激減は単なる数字の話ではない。診断士業界全体に次のような変化をもたらす。

① 希少性の向上
合格者が減るということは、資格取得者の希少性が相対的に上がる。これは短期合格やストレート合格の価値を一層高める(ただし、実務上はほぼ関係ない)。
② 多年度生の増加と競争激化
不合格者が再挑戦することにより、来年以降は 経験値のある受験者が集結する可能性がある。
これは競争のレベルをさらに引き上げる要因となる。
令和8年度に向けた対策
令和7年度の結果から言えることは、次の通りだ。
✅一次試験の基礎力強化は必須
一次試験はもはや「通過点」ではなく、 盤石な基礎力の証明になっている。特に財務・会計の理解は不可欠だ。
✅二次試験は「相対評価」を意識
合格率17.6%という数字は、シビアだ。
外さない解答と説得力のあるロジックが、合否を分ける。
ミスを減らす処理工程を含む解答プロセスの安定が、今後ますます重要になる。
総括。
令和7年度は、ミスへの許容度が極限まで低い「選別の時代」の到来を告げる年だった。令和8年度以降は、基礎力 × 正確性 × 実務対応力(具体的助言や柔軟な対応)の3本柱が合格の鍵となるかもしれない。

最後に、宣伝。
1月24日(土)10:00からTAC名古屋校で2次本科ガイダンスを行います。
午後の2次合格要件講義の体験受講もできるので、お近くの方はぜひお立ち寄りください。

次のおすすめ記事
いいなと思ったら応援しよう!
チップは不要です。
また読みたくなったら、戻ってきてね🫶