ニューサムに見る民主党の嘘①住宅事情
ここ数週間大物民主党議員達がメインメディアでは無く、ポッドキャストなどの民主的メディアに一斉に顔を出しては、テレビ局ニュースでは問われない直球の質問に晒され無様な答えしかできない様子が拡散されている。
その中でも一番炎上したのがこの現カリフォルニア州知事、2028大統領選、民主党からの出馬の可能性が非常に高いと言われるギャビン・ニューサムのものだ。媒体はHigher Learningポッドキャスト。カリフォルニアベースのホストが社会・政治・文化などを語る人気ポッドキャストだ。
ニューサムはトランプ政権への強い反発姿勢により民主党リベラル有権者の人気を集めている。しかし、「米国リベラル」という政治的立場が抱える矛盾が10/7以降のイスラエル問題を経て一般有権者の目に余りにくっきりと映っている現状で、ポッドキャストのような提供スポンサーの影響の無い民主的言論空間では彼のような雄弁な政治家スターですらスマートに言い逃れることができない。
このインタビューが映し出すのは米国民主党総体としての欺瞞である。それを明文化したのが左派論客ブリアナ・ジョイ・グレイによる左派経済学者リチャード・ウルフと反帝国主義ブラックカルチャー研究の歴史学者で、次のカリフォルニア知事選に立候補しているブッチ・ウェアのインタビュー。

ポッドキャストのポッドキャスト(笑)
ブリアナ本人も番組内で言っていたがこの回は彼女の番組史上かなり上位の出来栄えで、包括的でコミカルでとても勉強になったので、2時間に及ぶこれを5回に分けて訳してみる。
こういうの、いつもはかなりざっくりと意訳する私だが、今回はかなり忠実に拾って行く。
カリフォルニア住宅問題に関してのニューサムの返答
ホスト、バン・レイサン:
カリフォルニア州の抱える問題が民主党の問題そのものだ、との右派からの指摘に対してどう思いますか?
ニューサム:
右派論客の多くがカリフォルニア州をターゲットにしていますね。州の政治がありとあらゆる面で彼らの主張と全く逆だからです。彼らの批判とは裏腹に、我が州は発展しています。賃金・生産性は保守州に大きく差をつけています。殺人犯罪率のトップ10全て保守州です。もらう連邦補助金が献上する連邦税収を上回る(taker state)のは保守州です。2023年カリフォルニア州の連邦への献上額(連邦徴税-連邦補助金)は$83.1B。テキサスは逆に$71.1B連邦補助金が上回る。州民の孤独感、平均寿命、出産死亡率、そのようなデータでも保守州はリベラル州に劣ります。そんなデータを無視して、最も活気に溢れ動的なカリフォルニア州をターゲットにするのはおかしな話です。
レイサン:カリフォルニア州に顕著な住宅難については?15%の州民が平均的な住居環境にいません。
ニューサム:そうですね。何十年もそうです。大きな問題です。需要と供給のバランスが取れていないのが問題です。もっともっと住宅を建設しなければなりません。昨年大きな予算を住宅問題解決に充てました。NIMBY(Not In My Back Yard)マインドセットからYIMBY(Yes In My Back Yard)マインドセットに変える変革です。大幅な改革をしています。住宅開発規制法を根本から変えていきます。住宅難の問題を解決するためです。開発を渋っている市政を州が訴えます。開発の実務は市が行いますので州はそれをやり易い環境を整えます。経済学101。エズラ・クラインの提唱するAbundance(豊穣)思想です。
(*このエズラ・クラインの"Abundance豊穣思想"は言葉巧みに「配分ではなくパイを大きくすべきだ。」との新自由主義を新しい思想であるかのように演出したもの。住宅問題の原因を政府規制だとし、規制緩和を訴える実は企業寄り右派の思想をリベラル風に包み直したものだと、多くの批判が出ている。もの凄い勢いで民主党が推しに推し、あっという間に現れた関連シンクタンクやカンファレンスには多くのシオニストやエネルギー・テック業界の寡占企業が出資している。)

ニューサムが語らないカリフォルニアの現状
ウェア:
カリフォルニアが素晴らしい経済・生産性を持っている、とは民主党が強調するレトリックです。「世界で4位の経済規模!」と良く聞きますね。しかし彼らが語らない事実として、全米最大レベルの経済格差と貧困度(ルイジアナ州と同等)があります。186人のビリオネア。18万7千人の路上生活者。シリコンバレーは9家族の「華麗なる一族」達が$183Bの富を蓄え、政府は貧困地域での食料配布所まで取り締まります。最も貧しい層から何もかも奪っているのがニューサム知事です。

彼は「もっともっと建設を!」と言います。これは開発屋への横流し宣言です。サンフランシスコでは路上生活者一人に対して14室の空き部屋が既に存在します。建設が足りないのでは無いんです。もっと、もっと開発屋に税金を流すのが解決なんだ、と言う現在の民主党新自由主義の暴走はレーガン政権より右寄りだと言えます。ニューサムの現状把握の余りの恣意的な歪曲は直視に耐えます。
営利目的の住宅建設
ウルフ:
カリフォルニア住宅難は「何十年も問題のままだ」と彼は強調しますね。なぜでしょう?住宅は人間の基本的なニーズである衣食住の一つです。その住宅の運営を営利モードの機関に任せて来たからです。そのモードでは「利益が発生する場合にのみ」ビルが建ちます。環境を整えるのが政府の仕事だと彼は言いましたが、何十年もその問題が解決しないのは、政府がその営利モードを奨励する環境を整えて来たからです。民間企業は利益にしか反応しません。現在ラグジュアリーユニットばかりが建てられ、一般人用のユニットが不足しているのはそういう理由です。それはカリフォルニア州に限った状況ではありません。
ニューサムの使うレトリックは非営利機関(公的機関)が行う社会的投資性(未来の経済成長)を極端に矮小化します。例えば我々は(社会主義を非効率だと印象付けるために)中国での公的住宅の過剰建設を取り上げバカにします。しかしあれは「開発を促したい場所の社会的安定を先回りに提供する」との思想に基づいた公的事業です。住宅供給が安定していない社会が生み出す2次的な社会問題は枚挙にいとまがないほど研究し尽くされています。子供が学業に専念できない。家庭内環境が悪化する。などなど。
営利以外のモードで住宅問題に取り組む必要性に人々が気づいてしまうと、州知事としてニューサム氏に(民間に頼らず)できるはずの様々な公的事業の可能性がバレます。そのような予算を彼は持っています。州予算。連邦予算も。
政府予算の議論と同じ構造です。支出緊縮か赤字拡大の二択しか無い、と言う。法人税や富裕税の話は出てこない。彼ら政治家は大型寄付者に忖度しています。政治と営利企業が同化しています。
州政府にできること
ウェア:
「who funds you runs you出資者があなたを操る」と言いますね。民主党議員とよく討論しますが、彼らが頭の中で「大口寄付者を怒らせないようにどうやって答えるべきか」と考えてを巡らせているのを何度も見て来ました。ブラック・ストーン、ブラック・ロック。彼らが3割もの住宅・ユニットを所有し、価格を釣り上げています。
彼らのような価格高騰目的に空き部屋を保持に、州政府は大きく課税することもできます。州に売却した方が安い、との環境を作る。例えばビエナ。賃貸ユニットの43%は政府持ちで、運営費だけで回されています。これによりビエナの平均的家庭が家賃に使うのは収入の28%。マーケットをこのように規制することによって、住宅問題に取り組むことも可能なのです。
カリフォルニアはどうですか。私が働くカリフォルニア大サンタバーバラ校では車で寝泊まりする教員すらいます。カリフォルニアでは公共のエリアでの車内就寝を違法にしていましたが、「大学教員ならオッケー」と言う例外が設定されていました。大学IDを持っていれば収監しませんよ、という訳です。
住宅難の憂き目にあい、路上生活を強いられる市民を逮捕・収監するのが解決法だとするのが今の州政府です。
「解決策としてハンマー(懲罰)しか持たない者には全ての問題は打つべき釘に見える」"If all you have is a hammer, then every problem looks like a nail."
公共サービス、公共予算へのアクセスを制限し、お友達の開発屋への横流しを優先してきた州政が現状を生みました。
「社会利益」という概念
ウルフ:私は経済歴史学者として、英国コロニーから現在に至る米国経済の歴史や、中国の目覚ましい経済成長の歴史などを研究していますが、以下の例を幾度となく見て来ました。
民間セクターがXをするがYをしない時、Yの実現は実はXを長期的に促進する。
実例は数えられない程あります。路上生活者の方々にまともで安全な住居を提供(これが上記のY=直接的利益が発生しないので民間企業はそれをしない)。結果得られる社会利益はX(直接的企業利益)に比べ物にならないほど高額だ、と言う事実です。生活環境が安定していれば、医療セクターへの負担が減ります。雇用機会も変わります。学業成功の機会も変わります。ここから派生する社会利益は計り知れない。私はNYCで教えています。生徒の10%がホームレスです。10%ですよ!?信じられますか?もちろんそれは彼らの学業に決定的な悪影響を及ぼします。当たり前です。今日寝る場所も分からないのに、勉強なんてできますか?
経済学の授業ではprivate profitの他に、social profit(社会利益)の存在を教わります。ニューサム氏は経済学101で教わらなかったのでしょうか。民間セクターは自らの投資の結果としてprivate profitしか眼中にありません。social profitはexternality(外部性)とも呼ばれ、彼らの資本主義的関数の外側にあるものです。しかしそれは甚大な重要性を持つもので、実は彼らの利益(private profit)すらsocial profitの影響下にあります。
有害物質を撒き散らす工場は工場主の直接的な利益になるかも知れません。しかし、人々の健康を害し、近隣居住環境を破壊する。その補償費用を考えれば長期利益にはならない。有害物質処理義務を法的に設定する事は実は工場主にとってもお得なのです。目の前の利益だけを追いかける行為は誰にとっても不利益なのです。マルクスも言いますね。資本主義は資本家にとっても不利益だ、と。
第二回に続く。
