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EMはなぜ「便利な人」で終わってしまうのか——『GIVE & TAKE』が暴く“ギバーの罠”

-- 「頼られること」は、必ずしも価値を生まない

Adam GrantのGIVE & TAKEを読み返しながら、私は自分のEMとしての振る舞いを振り返っていた。

本書の問いはシンプルだ。
「成功するのはギバーか、テイカーか、それともマッチャーか?」

グラントは、ギバーが「最も成功する層」と「最も失敗する層」の両極に存在すると指摘する。
与えることは、美徳であると同時に、戦略を誤れば致命傷にもなる。

この事実は、EMという役割に重くのしかかる。

「便利な人」という名の吸収材

EMの仕事は、構造的にギバー的だ。

相談に乗る。
レビューを引き受ける。
他部署の摩擦を吸収する。

一見、それは正しいマネジメントに見える。

しかし、かつての私は、他部署からの調整案を一人で飲み込み続け、
単なる「組織の吸収材」と化していた。
• ロードマップは後ろ倒し
• 1on1は圧縮
• 思考時間は消滅

「頼られている」という感覚は、麻薬のように心地よい。
だが、その仕事がどんな価値を生んだのか、後には何も残らなかった。

私は「良い人」ではあっても、
「戦略的なギバー」ではなかった。

「絆」よりも「橋」を設計せよ

グラントが示すのは、成功するギバーは“無差別に与えない”という事実だ。
彼らは、影響が波及する場所にエネルギーを投下している。

EMにとってそれは、「絆」よりも「橋」を設計することを意味する。

強い信頼関係は心地よい。
だが、それは時にサイロを生む。

EMの役割は、弱いつながりを接続し、情報の流れを設計することだ。

絆は安心を生む。
橋は成果を生む。

視点なきギブは、ただの浪費である。

「傾聴」という戦略

本書が推奨する「思いやりある質問」や「忍耐強い傾聴」は、ヒューマニズムではない。
それは、相手の自己効力感を最大化する戦略である。

答えを与えれば、チームは依存する。
問いを投げれば、チームは自走する。

傾聴とは優しさではなく、組織設計だ。

燃え尽きの正体

ギバーが壊れるのは、量の問題ではない。
自らの貢献が不可視になるとき、心は折れる。

フィードバックの循環が断たれた瞬間、
与えることは意味を失い、消耗へと変わる。

だからこそ、成功するギバーほど「頼る」。
貢献の連鎖を起動させるために。

抱え込みは美徳ではない。
それは設計放棄である。


EMの仕事は、摩擦を消すことではない。
摩擦を価値へと変換する構造をつくることだ。

あなたは今、
単なる便利な「吸収材」だろうか。
それとも、価値の流れを設計する「戦略的なギバー」だろうか。

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