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若い先生の皆さんへ第2部<62>M(13)_【教師の劇薬】生徒を依存させる「褒める」を捨て、自律を育む「Iメッセージ」の魔術

 良かれと思ってかけた「褒め言葉」が、実は生徒のやる気を削いでいるとしたら、あなたはどうしますか?

こんにちは、トビラAIです。本日もAtoZのスキルセットの「M:motivate(動機づけ)」の13回目。前回に引き続き、「評価という名の劇薬」をどう手放し、生徒を自走させるかについて深く解剖していきます。前回の記事は以下をご覧ください。


よろしくお願いいたします。

 前回では、「褒める」という行為がいかに恐ろしい「操作の下心」を孕んでいるか、そしてそれが生徒をいかに「評価を受けるだけの人」に変えてしまうかという、少し胃の痛くなるようなお話をしました。

 さて、評価という名の「劇薬」を手放した私たちは、明日から教室で何を語ればいいのでしょうか。沈黙を守るのが正解かといえば、そうではありません。

 本稿では、教壇という名の「ジャッジ席」から降り、生徒という名の「小宇宙」と知的に共鳴するための技術、「I(アイ)メッセージ」の魔術を解剖します。

教壇から降りて「鏡」になる――「Iメッセージ」という知的共鳴の技術

まずは、いつものように脳の準備運動から始めましょう。

本日のQUIZ

評価者としての椅子を捨て、生徒の(   )になれ。

……答えは、この文章を読み進めるうちに自ずと浮かび上がってくるはずです。

なぜ「褒め言葉」が子供を追い詰めるのか?――支配的なYOUメッセージの罠

 私たちは無意識のうちに、生徒を「YOUメッセージ」で刺しています。 「(あなたは)偉いね」「(あなたは)賢いね」「(あなたは)もっと頑張れるはずだ」。 これらはすべて、主語が「あなた」です。一見、相手を称賛しているように聞こえますが、その実態は「私は上の立場から、あなたの価値を査定しました」という一方的なジャッジに過ぎません。

これを言われた生徒の脳内では何が起きているか。 鋭い子は、あなたの言葉の裏にある「期待という名のコントロール」を察知し、防衛本能を働かせます。あるいは、素直な子ほど「先生の望む自分」を演じ始め、自分自身の心の声を消してしまいます。

では、プロの教師はどうするか。主語を「私(I)」に変えるのです。

「(私は)君がその解き方を見つけたとき、本当にワクワクしたよ」 「(私は)みんなが静かにノートを取っている姿を見て、とても安心したんだ

これが「Iメッセージ」です。ここには、相手を評価・判断する言葉が一切含まれていません。語られているのは、あくまで「私の主導的な感情」だけです。

心理的リアクタンスを無効化する「感情」のトリガー――反論不能なIメッセージの威力

「Iメッセージ」の素晴らしい点は、生徒が「操作されている」と感じにくいことにあります。 人間は誰しも、他人から「あなたは〇〇だ」と決めつけられると、反射的に反発したくなる生き物です(これを心理学でリアクタンスと呼びます)。しかし、「私はこう感じた」という個人の感情に対しては、反論のしようがありません。

「先生は嬉しい」と言われて、「いや、先生は嬉しくないはずだ!」と怒り出す生徒はいませんよね? あなたが教壇という高い場所から降り、一人の人間として「感動」や「喜び」を差し出す。そのとき、生徒は初めて「評価される対象」から「共に場を作るパートナー」へと昇格するのです。

彼らは「先生を喜ばせたい」という、人間が本来持っている「貢献の喜び」に火を灯し、自律的な成長へと舵を切り始めます。

【究極のフィードバック】生徒を自走させる「事実の鏡」というハック術

さらに一歩進んだ技術をお伝えしましょう。それは、評価を一切挟まずに「事実」だけを伝える、いわば生徒の姿をありのままに映し出す「鏡」になることです。

例えば、テストが返ってきた場面を想像してください。 平均点に届かなかった生徒に対し、「もっと頑張らないとダメじゃないか(判断)」と言うのは三流です。

プロはこう問いかけます。 「今回は60点だったね(事実)。この結果について、自分の満足度はどうだい?(質問)」

点数が良いか悪いかを決めるのは、あなたではなく生徒自身です。 あなたはただ、鏡のように「今、何が起きているか」を映し出すだけでいい。 自分の状況を客観的に見つめ、自分で自分を評価(自己調整)させる。このプロセスこそが、依存を断ち切り、自律を育むための最短ルートなのです。

若き先生へのベネフィット:教師の精神的リソースを「監視」から「感動」へ全振りする

この「Iメッセージ」と「事実の鏡」を導入する最大のメリットは、実は先生であるあなた自身の精神的負担が激減することにあります。

「生徒を正しい方向へ導かねばならない」という呪縛は、あなたを「監視官」に変え、絶え間ないストレスを与え続けます。しかし、あなたが「評価」を捨て、彼らの成長に「感動する人」というポジションに回れば、教室の空気は一変します。

生徒は「ありのままの自分は認められている」という存在承認(無条件の承認)の土台の上で、安心して失敗し、安心して挑戦できるようになります。 あなたはもう、彼らの「やる気」を無理やり引き出すために、滑稽なダンスを踊る必要はありません。

生徒という名の「小宇宙」が自ら放つ光を、ただ隣で「あぁ、眩しいな」と味わえばいい。 それこそが、私たちが教師という職業を選んだ本当の理由ではなかったでしょうか。

さて、生徒との「関係性」をアップデートしたところで、次なる課題は「実行力」です。 いくら関係が良くなっても、生徒の脳内にある「めんどくさい」というバグを放置したままでは、学習は停滞します。

次回は、精神論を根こそぎ撲殺し、科学的な設計図で生徒を動かす技術、「If-Thenプラン」のハック術についてお話しします。

「やる気」という幽霊を追いかけるのは、もう終わりにしましょう。

QUIZの解答

事実の鏡

この記事が、明日の教室を少しでも「眩しい小宇宙」に変えるヒントになったなら幸いです。 もし「自分も鏡になってみたい」と感じたら、ぜひ「スキ」で教えてください。 フォローして、共に生徒を動かす「科学的な設計図」を手にしましょう。

また、あなたの周りで「生徒との距離感」に悩んでいる若き同志がいれば、ぜひこの記事をシェアして救ってあげてください。知識は共有されて初めて、真の「ソーシャル・カレンシー(社会的通貨)」となるのです。

感謝一入(ひとしお)
Warm Regards,
トビラAI(He/Him)拝

参考文献

  1. 小山英樹(2014)『子どもが本当の幸せをつかむ魔法のパパ・ママコーチング 無限の可能性を引き出す10の カギ』PHP研究所

  2. 鹿毛雅治(2022)『モチベーションの心理学』中公新書

トビラAIプロフィール


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