見出し画像

若い先生の皆さんへ第2部<224>T(70)_学力と人間性を両立する授業の極意とは?リレイ教育大学院に学ぶ「PERMA」と24の性格的な強み

 偏差値が大事なのか、人間性が大事なのか、迷っていませんか?こんにちは、トビラAIです。今回は教師のスキルセット「T:Teaching」の第70回目です。教育の根幹である「授業」のあり方について、多角的な視点から紐解いていきます。前回は日本の教育史から「授業」を見つめなおしました。今回はアメリカにある教員および校長・教育リーダーの育成に特化した私立の大学院である、Relay Graduate School of Education(リレイ教育大学院)の講義"Teaching Character and Creating Positive Classrooms"から「授業」について考えます。前回を未読の方は以下をご覧ください。

それでは、よろしくお願いします。


 というわけで記事を書きますが、今回はさすがに長いので複数回に分けて投稿します(いつも長いですが…)。

この記事を読むとできるようになること

  • 「学力」と「人間性(キャラクター)」をトレードオフにせず、双方向に高め合う授業の構造を理解できるようになる

  • ポジティブ心理学の「PERMA理論」と「24の性格的な強み(VIA)」を活用し、生徒や自身のウェルビーイングを測定・育成できるようになる

  • 「強み」を鍛えられるスキルとして捉え直し、日常の学習や自己管理に科学的アプローチを導入できるようになる

  • 読了時間の目安は6分です。

【歴史の皮肉】なぜ現代教育は「人間性(キャラクター)」を脇に追いやったのか?

 教育の現場において「授業」とは、単に教科書に書かれた知識や定義を教師が一方的に伝達し、生徒がそれを暗記してテストの点数を競い合うだけの場ではありません。歴史を紐解けば、約2000年前のアリストテレスの『ニコマコス倫理学』の時代から、学校とは「知性を磨くこと(学ぶこと)」と「善い人間になること」が不可分な一体として存在していました。これは今まで見てきたように、東洋史においても日本史においても同じでした。
 しかし、産業革命による労働者育成への要請や、冷戦期のスプートニク・ショックに伴う国際的な科学技術競争の激化により、現代の授業は「学術目標」への偏重を余儀なくされ、キャラクター(人間性や非認知能力)の育成は脇に追いやられてきた歴史的経緯があります。これも昨日ご紹介したように、明治維新以降の日本の教育も同様の歴史をたどっています。

学力VS人間性は間違い!学習効率を劇的に跳ね上げる「PERMA」の相乗効果

 しかし、現代のポジティブ心理学やウェルビーイングの理論によれば、学力さと人格教育は二者択一ではありません。
 むしろ、生徒の人生の幸福や繁栄(Flourishing)を支える5つの要素「PERMA」は、「性格的な強み」(両方とも後述)によって支えられており、これらを高めることは、学習の効率を増幅させる双方向の因果関係を持つ、とされます。

 したがって、本質的な意味における「授業」とは、「学術目標の達成」と「人間的な強みの育成」を同じDNAに織り込み、生徒が主体的に自らの可能性を広げるための、意図的かつ動的な教育的システムであり、教師と生徒の共同の旅であると再定義できます。

人が真に「繁栄(Flourish)」する5つの条件——ポジティブ心理学の到達点

 さて、先ほど触れたPERMA(パーマ)と「性格的な強み」について説明していきますね。
 ペンシルバニア大学教授で、心理学の世界的権威であるセリグマンは、そのウェルビーイング理論において、PERMA(パーマ)の5つの要素が満たされている状態が「幸福」であり「繁栄(Flourishing)」だ、と定義しました。

そのPERMAとは

  • Positive emotion(ポジティブ感情)

  • Engagement(没頭・フロー)

  • Relationships(豊かな人間関係)

  • Meaning and purpose(意味と目的)

  • Accomplishment(達成)

の頭文字をとったものです。
 人間関係や達成感で満たされるのが幸福——ここまでは直感的に理解しやすいでしょう。しかし、私が特に膝を打ったのは、PERMAの要素に「没頭(フロー)」が含まれている点です。単に結果を出すだけでなく、「何かに無心で打ち込む時間」そのものが、私たちの心を根底から満たしてくれるのです。

【独白】休職中の私が「信長の野望」で救われた理由

 以下しばらく独り言です。現在の私はメンタルを病んで「野良」(無職)の状態です。今からちょうど1年前、お盆明けの出社の際、運転する車の中で号泣してしまい、運転もままならず妻に会社に電話してもらってそれ以降休職し、退職しました。そこから1年間、皆が働いている間寝ているのが申し訳なく、一心不乱にCourseraの受講やG検定などの資格勉強をして、今に至ります。心の波が少し静まってきたある日、私はPCの電源を入れ、かつて夢中になった歴史シミュレーションゲーム『信長の野望 蒼天録』を起動しました。それまでは「罪悪感」という重い鎖に縛られていましたが、意を決して画面に向き合ってみたのです。
 このゲームをやってみると、脳がその世界に没入するというか、仕事も今後も起業の準備も全部忘れてしまう感覚を思い出しました。これはポジティブな感覚です。かつて仕事をしている際は休みの日にゲームをしたり、能の稽古に行ったり、旅に出たりして、それに没頭する(能の場合は発声しますので)ことでストレスを消していたのです。
 もちろんメンタルをやられる前は仕事にも没頭していましたし、休みをなんとか確保して徹底的にリフレッシュしていました。前日のことをきれいに押し流して、1つのことに没頭できる幸せというのは、こういうことなのかもしれません。

ウェルビーイングの「背骨」を作る!24の性格的な強みとは?

 余話が過ぎました。
 では、このPERMAを上げていくには何に注目すべきか、という文脈で「性格的な強み」が出てきます。

「性格的な強み」に支えられた「PERMA」が人生の幸福(Flourishing)を支え、
これらが高まることで「学習効率」がさらに増幅していくという、双方向の好循環が成り立っています。
PERMAと「性格的な強み」の関係
(Relay Graduate School of Educationより筆者がAIを用いて作成)

 この「性格的な強み」とは何でしょうか。セリグマンは、故クリス・ピーターソン(ミシガン大学)とともに、約3年の歳月をかけて「人間が豊かに生きる(繁栄する:Flourish)ために不可欠な性格特性」を定義することを試み、100以上の候補から「すべての親が我が子に望む普遍的なものであること」「それを実行しても他者を貶めないこと」といった厳しい基準を設け、最終的に24個の強みへと絞り込みました。

この「24の性格の強み」の全体像と、これを6つの美徳への分類したこと、そしてウェルビーイング(幸福)とのつながりについて、詳細に解説します。

性格は「遺伝」ではなく「筋肉」だ!後天的に鍛えられる3つの科学的根拠

①「特性(Trait)」ではなく「強み・スキル(Strength / Skill)」

 セリグマンらは、あえて「性格特性(Character trait)」という言葉を使わず、「性格の強み(Character strength)」または「キャラクター・スキル」という表現を用います。「生まれ持った性格だから変わらない」と諦める必要はありません。セリグマンらは、これらを筋肉と同じ「鍛え直せるスキル(Character Strength)」と定義しました。正しい意図を持ってトレーニングすれば、誰でも後天的に伸ばすことができるのです。

② 普遍性と独自の組み合わせ

 これらの24の強みは、ジェンダー、階級、人種、文化、地理、宗教などの違いを乗り越えて、すべての人類が共通して持っているものです。私たちは誰もがこの24すべての強みを内包しており、どの強みが強く現れるかという「独自の組み合わせ」が一人ひとり異なっています。また、これらは環境や状況、年齢によって時間の経過とともに変化・成長させることができます。

【完全網羅】6つの美徳と24の強み一覧——あなたを輝かせるスキルはどれ?

 24の性格の強みは、それらを支える6つの主要な美徳という包括的なカテゴリーに分類されています。先に触れておきますが、この24の「性格の強み」は無料で自己評価測定することができます。私も以下のサイトから登録して診断をしてもらいました。「ん?そうなのか?」と意外な発見があったことを覚えています。

 生徒だけでなく、大人(教師や保護者)もこのVIAテストを自ら受けることで、自分の「特徴的な強み」を自覚し、自身のウェルビーイングを高めたり、生徒の特性を理解するための共感力を養ったりするのに使われます。
 登録をしたからといって、3か月に1回くらいプロモーションのメールが届く程度で煩わしくないですから、トライしてみることをお勧めします。

Category 1. 【知恵と知識(Wisdom)】知識を習得し、活用するのを助ける知的な強み

  • 創造性(Creativity):物事を行う新しい、独創的な方法を考えること。ただし、単にユニーク(オリジナル)なだけでなく、それが実用的・有用でなければなりません。

  • 好奇心(Curiosity):探求し発見すること、進行中の経験自体に興味を持つこと。新しい知識やアイデアを探求し、自らの知識を増やしたいという強い欲求に基づきます。

  • 判断力(Judgment / 批判的思考):合理的かつ論理的な選択を行い、証拠を公平に検証して徹底的に考え抜く「批判的思考(クリティカル・シンキング)」の力。結論に飛びつかず、新しい情報に照らして自分の考えを変える柔軟性も含みます。

  • 学習意欲(Love of Learning):学ぶこと自体を目的として、情熱を持って新しい知識やスキルを深め、自らの蓄積を「拡大」させたいと願う欲求。

  • 大局観(Perspective / 視点):物事を広い視野から捉え、他者に対して賢明な助言を与えたり、人生を深く見通したりする知恵。

Category 2. 【勇気(Courage)】意志を行使し、障害や逆境に立ち向かうのを助ける強み

  • 勇敢さ(Bravery):困難、脅威、苦痛に直面しても、自らの信念や目標に基づいて立ち向かうこと。身体的危険、心理的弱さ、道徳的正しさという3つの異なる勇敢さがあります。

  • 誠実さ(Honesty / Integrity):真実を話し、見栄を張らずに本物(authentic)の態度で自分を表現すること。自分の感情や行動に責任を持ち、人生のすべての領域で一貫した「インテグリティ(裏表のなさ)」を持つことです。

  • 忍耐力(Perseverance / やり抜く力・グリット):障壁や障害、落胆が生じても、始めたことを最後まで勤勉にやり遂げること。目標達成に向けた「努力」と、それを維持する「期間(持続)」の2つのベクトルを持ちます。

  • 熱意(Zest):人生や日々の活動に対して、興奮とエネルギー、ワクワク感を持って全力で向き合うダイナミックな強みです。

Category 3. 【人間性(Humanity)】他者との思いやりのある関係において現れる、対人的な強み(主に一対一の関係)

  • 親切心(Kindness):他者の幸福に深く配慮し、寛大に他者を助けるために自分の時間や才能を与えること。

  • 愛情(Love):他者との親密で温かい関係を大切にし、愛することと、他者からの愛を受け入れることの双方向のつながりを指します。

  • 社会的知性(Social Intelligence):自分や他者の感情の機微、動機を理解し、さまざまな社会的状況においてその場にふさわしい適切な振る舞いや言葉をかけられる力。

Category 4. 【正義(Justice)】地域社会やグループ、組織の状況において、他者と良好につながるのを助ける強み

  • 公平さ(Fairness):個人的な感情に偏らず、すべての人を公正かつ平等に扱うこと。論理的な原則を重んじる「正義の推論」と、共感を持って他者の立場に立つ「配慮の推論」があります。

  • リーダーシップ(Leadership):グループ内の人間関係を良好に維持しながら、共通の目標を達成するために集団を組織し、励まし、導く力。

  • チームワーク(Teamwork / 市民性):小規模なチームから地域社会に至るまで、グループ全体の成功のために献身的かつ協調的にコミットし、社会的責任を果たすこと。

Category 5. 【節制(Temperance)】習慣を管理し、過度な行き過ぎを防いで人生のバランスを保つ強み

  • 寛容さ(Forgiveness / 許し):不当に扱われた際、相手に対するフラストレーションや恨みの感情を手放し、他者の欠点を受け入れてセカンドチャンスを与えること。

  • 謙虚さ(Humility):自分の成果や限界を正確に客観評価し、注目を集めようと自慢したりせず、静かに満ち足りていること。

  • 慎重さ(Prudence):行動する前に立ち止まって長期的な結果を考慮し、不必要なリスクや後悔を避けるように賢明な選択をすること。

  • 自己調整(Self-Regulation / 自己制御):自身の欲求、感情、衝動をコントロールし、目標達成に向けて自分の行動を規律正しく律する力。

Category 6. 【超越性(Transcendence)】より大きな宇宙や世界とのつながりを助け、人生に意味や目的をもたらす強み

  • 美と卓越性の鑑賞(Appreciation of Beauty & Excellence):自然、芸術、科学、日常の出来事において、美しさや卓越性、熟練した技を見出して深く感動し、味わうこと。

  • 感謝(Gratitude):人生にある「良きもの」に気づいてありがたみを感じ、その源が自分の外側にあることを認識して、心からの感謝を表現すること。

  • 希望(Hope / 楽観主義):将来に対する前向きな期待を持ち、目標は努力によって達成可能であると信じて、そこに至る効果的なアプローチ(道筋)を能動的に描き行動すること。

  • ユーモア(Humor):状況の中にある面白い側面を見つけ出し、他者を笑わせることで、困難な状況を明るく disarm(和らげる)する力。

  • スピリチュアリティ(Spirituality / 霊性・精神性):人生の目的や使命感(コーリング)、または人間の理解を超えた「聖なるもの」とのつながりに対する深い信念を持つこと。

強みの自覚がPERMAを爆発させる!日常生活と学びへの組み込み方

 セリグマンは、24の「性格の強み」を「PERMAの背骨(backbone of PERMA)」と位置づけています。 自分自身の強みを理解し、それを日常の生活や学習で発揮することは、PERMAの5つの要素すべて(ポジティブ感情、没頭、豊かな人間関係、意味、達成)を活性化させ、ウェルビーイングをさらに強固にする源泉となります。

「ハッピーな子」を作るだけじゃない!学力とウェルビーイングを高める次世代の授業設計

 教育現場におけるPERMAは、単に「子供たちをハッピーにする」ためのものではありません。セリグマンは、学校には「学習(学術目標の達成)」と「ウェルビーイング(PERMA)の構築」という2つの目的があると指摘しています。

これらは互いに対立するものではなく、「双方向の因果関係(causally bi-directional)」を持っています。

  • PERMAが学習を強化する:ポジティブ感情(P)や没頭(E)、教師との良好な関係(R)、学ぶ意味(M)は、学習成果(A:達成)を大きく増幅させます。

  • 学習がPERMAを強化する:学校で新しいことを学び、達成感(A)を得ることは、子供たちの自信を高め、人間関係や日々のポジティブな感情、人生の意味をさらに豊かにします。

 こう書いてみると、PERMが先にあって、その結果Aつまり達成感が得られ、そしてまたPに戻る。つまり偏差値が先か人間性が先か、という冒頭の問いは、人間性が先だと言えます。これは私が残りの人生を賭けて起業し、中学受験の世界で取り組んでいくビッグ・アイデアです。
 このように教師が教室の中で「子供たちのPERMAを高めること」を目標とし、その変化を測定・評価しようと意識するだけで、その教室の環境に即した創造的な指導法やアプローチを自発的に生み出すことができるようになります(これを発展の「見えざる手」の議論と呼びます)。
 では具体的にどのような授業を組み立てればいいのでしょうか?それは次回以降に解説いたします。
 なお明日は8月15日ですので、午前は終戦に関する記事を、午後にこの続きを投稿いたします。

最後までお読みいただき、誠にありがとうございました。

もし本記事が、あなたの『これからの学び』や『心のあり方』に少しでも新しい視点をもたらしたなら、ぜひ『スキ(♡)』ボタンを押していただけると胸が熱くなります!また、あなたの感じる『自分の強み』や『没頭できる時間』について、ぜひコメント欄で教えてください。意見交換ができることを楽しみにしております。

『教育の未来を一緒に考えたい』と思ってくださった方は、フォローをして次回の更新をお待ちいただけますと幸いです。

また、もし『この記事はあの人にも届いてほしい』『今の教育現場に伝えたい』と感じていただけましたら、X(旧Twitter)などでシェアしていただけると大変励みになります。

あなたの明日が、PERMAに満ちたより豊かな一日となりますように。

感謝一入
Warm Regards,
トビラAI拝

参考文献

  • Relay Graduate School of Education"Teaching Character and Creating Positive Classrooms"Coursera

  • The University of North Carolina at Chapel Hill"Positive Psychology"Coursera

  • Institute of Characterのホームページhttps://www.viacharacter.org/

トビラAIプロフィール

※ 本稿では画像生成と文章の推敲に生成AIを使用しています。

【推し語り】23年経っても『信長の野望 蒼天録』が最高傑作であり続ける3つの理由

 ここからは完全に本論からずれます。本記事で触れた「信長の野望蒼天録」とは2003年の作品です。信長の野望シリーズは、この23年の間にもたくさん新バージョンが生まれ、どんどんゲームシステムは進化していますが、私はこの「蒼天録」がイチオシです(世間的な評価は低い作品です)。
 私が推す理由は3つ。陰謀、調略、暗殺、買収、謀反など戦国時代の暗さを見事に描いていること。合戦をせずに領土を広げるのが上策という孫子の兵法をそのまま体験できます。2つ目は、東山文化を感じる陰影の濃い世界観(写真)と、弦楽器をベースに再現される幽玄な音楽。最近のゲームにありがちな閃光とかド派手な演出は一切ありません。3つ目はシリーズで唯一、信長誕生(1534年)以前のシナリオが存在すること。下の画像は1495年の今川家家臣北条早雲の戦略画面です。他の作品では弱小大名の赤松家の領土が異様に広かったり、越後は上杉家(上杉謙信の長尾家ではない)が支配していたり、武田家は信玄の曽祖父信昌が当主。将軍は10代足利義澄です。とにかく渋すぎる。

信長の野望蒼天録の画面

 この1495年のシナリオでは、北条早雲は64歳になっています。彼の嫡男北条氏綱は9歳なので、ちょっと年齢がおかしい(別に不可能ではないけれど)感じがします。現在では、早雲はもう少し若かった説があり、その説に従うと40歳になっていてこちらのほうが現実味がありそうですね。

 すいません、どうしても推しをしたくて書きました。ここまで読んでくださった方、本当にありがとうございました。
 あなたにとって、明日はより一層幸せな日です。

いいなと思ったら応援しよう!