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大学入学共通テスト試験場の空白地帯可視化への道のり(その1)

大学入学共通テスト(以下、共通テスト)試験場の空白地帯の可視化に取り組んだ道のりを簡単にまとめてみました。


きっかけ

共通テスト試験場の分布を可視化しようと考えたきっかけは、2022年1月15日にさかのぼります。この日は令和4年度大学入学共通テストの本試験1日目で、地方では「試験場が遠い」「県によって分布が偏っている」といった声を、当時のTwitter(現X)でいくつか目にしました。

共通テストの試験場の一覧は、共通テストを実施している独立行政法人大学入試センター(以下、入試センター)のサイトに掲載されていたため、おおよその分布を把握することはできました。しかし、その分布を地図上で可視化したものは当時どこにも存在しませんでした。そこで、試験場の分布を地図上にマッピングして可視化すれば面白いのではないかと考えました。

《Step 1》 共通テスト試験場分布地図

構想から1年近く経過した2022年の年末、令和5年度(2023年)の共通テスト試験場の分布地図の作成に取り掛かりました。

データの収集と地図の作成

まずはデータの作成に取り掛かりました。入試センターに掲載されている試験場の一覧はPDFファイルでしか公開されていないため、こちらをデータ化する必要がありました。これは、オープンデータ界隈でよくある、いわゆる「餅から米を作る」作業でした。当時は、手軽で精度の高いOCRツールがまだ一般的ではなく、データ化には苦労しました。

作成した試験場データを地図上にマッピングするために、試験場の所在地データに対して「アドレスマッチング」を行い、平面座標情報を取得しました。この処理には東京大学のCSVアドレスマッチングサービスを利用しましたが、一部の試験場はうまくマッチングできず、手動で修正する必要がありました。マッチングした所在地データをQGIS上でポイントデータとして表示し、レイアウトを整えた日本全国地図を出力して、試験場の分布地図を完成させました。

令和5年度(2023年)大学入学共通テスト試験場分布MAP(2023年1月14日公開、修正版)

地図の公開とそれに対する反応

これを「共通テスト試験場分布MAP」として、令和5年度共通テスト本試験1日目の2023年1月14日夜にツイートしました。このツイートは、共通テストの試験場分布を初めて地図上で可視化した事例だったこともあり、大きな反響を呼び、最終的に約4800件のいいねと約2500件のリツイートを得ました。

可視化することで、県庁所在地から離れた地域や離島(佐渡、隠岐、対馬、先島諸島など)にもきめ細かく試験場が設置されている場所がある一方、特に西日本では県庁所在地周辺にしか試験場が設置されていない県が多く(和歌山、愛媛、高知、佐賀、熊本、大分など)、県によって偏りがあることが分かりましたツイートにも同様のレスが多く寄せられました。一方で、従前は試験場がなかった京都府丹後地域で、府が入試センターに働きかけた結果、試験場が設置された例があるとの情報も寄せられ、新たな知見も得られました

次年以降の対応

これを受けて、翌2024年度も同様に分布MAPを作成しました。大半は前年と同じ試験場で実施されるため、ベースとして前年のデータを転用できましたが、差分を確認するため、全ての試験場情報を確認する必要がありました。以降、毎年、共通テストの実施に合わせてその年の分布MAPを作成するようになりました。

なお、試験場の位置情報についてはアドレスマッチングに代えて、令和7年度(2025年)より国土交通省の国土数値情報の「学校」データを使用しています。

令和8年度(2026年)大学入学共通テスト試験場分布MAP(2026年1月17日公開)

出典

大学入学共通テスト試験場分布MAP(画像)

《Step 2》 Web版共通テスト試験場分布地図

地図サイトの作成

一方で、毎年同じ地図を作るだけでは工夫が足りないと感じ、違った見せ方ができないか考えました。そこで、静的画像の地図だけでなく、シームレスかつ動的に閲覧できるWeb版の分布地図を作成することを思い立ちました。

過去にMapLibre GL JSで別のWeb地図を作成した経験があったため、その仕組みを転用してベースを作成し、入試センターが公開している平成26年度大学入試センター試験以降の過去11年分の試験場データを、時系列で参照できるようにしました

公開に当たっての懸念点と公開見送り

ただ、この年の共通テスト試験場MAPに関するXの投稿に寄せられたレスのうち、一つの指摘が気にかかりました。それは、試験場の所在地の情報を可視化することが、2022年1月15日の共通テスト当日に東京大学本郷キャンパス前で発生した殺傷事件も踏まえると、犯罪加害者に犯行場所の候補を知らせることになりかねない、という指摘でした。これ以外にも、受験生を狙った、いわゆる「共通テスト痴漢祭り」と呼ばれる犯罪行為がニュースで取り沙汰されていました。さらに、犯罪に限らず、受験生が指定された試験場とは別の試験場に向かってしまうリスクもあり、かなりセンシティブな情報であると痛感しました

共通テスト試験場の分布を可視化することによって生み出される効果として、試験場の空白地帯が明らかになるという正の作用もありますが、受験生を巻き込んだ犯罪や試験場の間違いなど負の作用をもたらす可能性があることに気づかされました。悩んだ結果、その時点でのWeb版試験場MAPの公開は見送ることにしました。

懸念点を考慮した上で公開へ

最終的に、1年の時を経て令和7年度共通テスト本試験日の2025年1月に公開しました。ただし、ズームレベルを高くした際には背景地図を白地図のみにして試験場の詳細な場所を地図上で特定しにくくしたほか、地図サイトの表示時に注意事項をポップアップ表示するなどの工夫を施した上で公開しました

出典

大学入学共通テスト試験場分布MAP(Web地図)

その後の経緯は「大学入学共通テスト試験場の空白地帯可視化への道のり(その2)」に続きます。


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