トコの観察日記 〜産まれた日のこと 後編〜
はじめに
これは娘である「トコ」の出産時の日記です‼️
私の視点から書き綴ったものです。
こちらに自己紹介を書いています。
今回は後編です。前編はこちらです。
産まれた日の午後

陣痛の間隔は短くなっていた。
そしてついに、出産の準備に入る。
先生と助産師さんがバタバタと部屋に入り、静かに、けれど確実に「その時」へと空気が変わっていく。
分娩台がカチャカチャと変形していく。
「ああ、始まるんだ」
そんな覚悟のようなものが、喉元までこみ上げてくる。
見ていることしかできないのがもどかしい。
邪魔にならないようにその様子を眺めていた。
妻の表情も一層苦しそうな顔になっていた。
私の手も、じわっと汗ばむ。
命が生まれるって、こんなにも壮絶なことなんだ。
その現実を、目の前で突きつけられている気がした。
妻の体力を考えても早く生まれて欲しいと思う。私の感覚も鈍ってきている。
「1分ってこんなに長かったっけ?」と思えるぐらい時間が進むのが遅く感じる。
1秒も目が離せないとは、このことだ。
そこで込み上げてきた気持ちは「立ち会ってよかった」だった。
自分でも意外だった。
最初は立ち会いはしたくないと思っていたのに今は立ち会えて良かったと思っている。
立ち会わなかったら、こんなにも頑張っている妻の姿は見れなかっただろう。
どんなに頑張って生命が誕生しているのか知らないままだっただろう。
どこか他人事だったのだと思う。
立ち会いをしなくても生きているし、その頑張りを知らなくても生まれてくる。
だけど、知ったことで自分の中に変化が生まれたのだ。
誕生日は「お母さんが一番頑張った日」だと言われるけれど、まさにその通りだった。
これ以上ないくらい命を削って、命をつないでいる。
それを、私はこの目で見た。
忘れられない記憶とはこうして生まれるんだなと今わかった。
そして、ついに

「産まれましたよ!」
助産師さんの声とともに、時間が告げられる。
午後2時。
赤ちゃんはすぐに体を拭かれて、体重が測られ、指の数を数えられている。
そうしている間に「おぎゃー、おぎゃー」と泣き声が聞こえた。
か細くて、でもしっかりとしたその声に、胸がぎゅっとなった。
羊水がまだ口に残っているらしく、看護師さんが一生懸命、吸引してくれた。
そして、ひととおり確認が終わると、赤ちゃんは抱きかかえられ、妻の元へ。
妻の顔が、ふっと緩む。
やっと会えたね。そんな表情だった。
私はここぞとばかりに写真を撮った。
10ヶ月一緒にいたのに、はじめて対面した親子だ。
気づいたら私は、パパになっていた。
いや、実際は10ヶ月前に子どもができたときからパパだ。
今やっと実感したんだ。
その感覚がじんわりと胸に広がっていく。
ゴールデンウィークおわりの晴れた午後。
世の中は何も変わらない。
外を見れば、主婦の人がスーパーに買い物に行って、サラリーマンがスーツ姿で電車を待っている。
しかし私にとっては特別な日だった。
とても特別な体験だった。
そして、何よりも大切な、大切な日になった。
今日は、あなたが生まれた日。
ここからが本当のはじまり。
これからよろしくね。

