【大人の学び直し数学 Vol.27】 数学の景色が変わる日 〜「関数」という名のブラックボックス〜
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これまで私たちは、長い時間をかけて「方程式」という道具を磨いてきました。
「リンゴの値段はいくらか?」「二人が出会うのは何分後か?」
これらはすべて、「ある条件を満たす正解(犯人)を一人の特定する」という作業でした。言わば、決定的な瞬間を切り取る「写真」の世界です。
しかし、現実はもっと複雑です。
時間は止まってくれませんし、状況は刻一刻と変化します。
「もし、リンゴの値段が変わったら?」「もし、出発する時間がズレたら?」
今日から始まる新しい章では、静止画の世界を飛び出し、「変化」と「関係」を扱う動画(ムービー)の世界へ足を踏み入れます。 その主役となるのが、数学嫌いの人が最も顔をしかめる言葉、「関数」です。
今回は、皆様が嫌いな「ややこしい計算」は一切しません。
その代わり、これからの旅のパートナーとなる$${x}$$と$${y}$$という記号だけは、「入口」と「出口」を表す名札(あだ名)として使わせてください。
まずはこの「関数」という言葉が持つ、本当の意味とイメージを掴んでいただきます。
1. 「関数」って、なんの数?
「関わる数」と書いて、関数。
なんとなく「$${x}$$と$${y}$$が関係してるんでしょ?」というイメージはあるかもしれません。
しかし、英語では Function(機能・働き) と言います。
「数」というよりは、「機能」や「システム」に近い言葉です。
実は、明治時代にこの言葉が日本に入ってきたとき、当時の数学者たちはこれを「函数」と訳しました。
中国語では今でも「函数」と書きます。
ここに使われている「函」という字。
これ、何と読むかご存知でしょうか?
これは訓読みで「はこ」と読みます。
(投函、函館などの言葉に残っていますね)。
つまり、関数とは「数の箱」という意味なのです。
これが関数の本質を理解する最大のヒントです。
2. 数学的な「自動販売機」
関数とは、ズバリ「魔法の箱(ブラックボックス)」のことです。
イメージしやすいように、「自動販売機」を想像してください。
入力(Input): お金を入れる $${\rightarrow}$$ ここを$${x}$$と呼びます。
機能(Function): 内部で選別・計算される(箱)
出力(Output): ジュースが出てくる $${\rightarrow}$$ ここを$${y}$$と呼びます。
この一連の流れが「関数」です。
上から数字($${x}$$)を入れると、箱の中で何らかの加工(2倍されたり、5を足されたり)をされて、下から別の数字($${y}$$)が出てくる。
この「箱そのもの」あるいは「箱の機能」のことを関数と呼びます。

3. 関数のたった一つのルール(数学編)
では、ここから少し数学的な話をします。
「$${x}$$と$${y}$$に関係があれば、なんでも関数なのか?」というと、そうではありません。
関数と呼ばれるためには、たった一つだけ、絶対に守らなければならない厳しいルールがあります。
【関数の絶対ルール】
入力($${x}$$)を一つ決めたら、必ず出力($${y}$$)が「ただ一つ」に決まること。
これを、実際の数学の例で見てみましょう。
○ 関数である例:『2倍する箱』
「入れた数字を2倍して出す」という箱を考えます。
(式で書くと$${ y = 2x }$$です)
$${x}$$に$${3}$$を入れる $${\rightarrow y}$$ は絶対に $${6}$$になる。
$${x}$$に$${-5}$$を入れる $${\rightarrow y}$$ は絶対に $${-10}$$ になる。
答え(出力)は一つしかありませんよね。「6かもしれないし、8かもしれない」とはなりません。
だから、これは「$${y}$$は$${x}$$の関数である」と言えます。
× 関数ではない例:『2乗するとその数になる箱』
逆に、「2乗すると$${x}$$になる数を出せ」という箱を考えてみましょう。
$${x}$$に$${9}$$を入れる $${\rightarrow}$$ 2乗して9になる数は?
答えは$${3}$$
しかし、$${-3}$$もあります($${-3 \times -3 = 9}$$だから)。
このように、入力($${x}$$)を一つ決めたのに、出力($${y}$$)が「3」と「-3」の2つ出てきてしまいました。
ボタンを一回押したのに、ジュースが2本出てきたり、あるいは何も出てこなかったりする。
これは「予測不能」な状態であるため、数学の世界では「$${y}$$は$${x}$$の関数ではない」と判断します。
まとめ:数学的な定義
最後に、今日のお話を数学の言葉でまとめておきます。
教科書にはこう書かれています。
【関数の定義】
2つの変数$${x}$$、$${y}$$があり、$${x}$$の値を決めると、それに対応して$${y}$$の値がただ一つに決まるとき、$${y}$$は$${x}$$の関数である という。
なぜ「ただ一つ」にこだわるのか。
それは、関数が「未来予測のツール」だからです。
「$${x}$$(原因)が決まれば、必ず$${y}$$(結果)が決まる」
この因果関係が確定しているからこそ、私たちは計算だけで未来を予測し、コントロールすることができるのです。
さて、この「魔法の箱」には様々な種類が存在しますが、次回はその中でも最もシンプルで、最も美しい箱をご紹介します。
その名は、「比例(Proportion)」。
世界を最も単純化して捉えるその仕組みを、次回は解剖していきましょう。
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