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【世界のオンチェーンプロジェクト File.013】Project Helvetia

CBDCとRTGS接続は、どちらが現実的か

スイスが本番環境で試す「統合型」と「同期型」

最終更新:2026年8月

トークン化証券を中央銀行マネーで決済する方法には、大きく二つあります。

一つは、中央銀行マネー自体をDLTへ載せる。

もう一つは、資産はDLT、資金は従来のRTGSに残し、二つを同期する。

スイス国立銀行、SNBのProject Helvetiaが興味深いのは、どちらか一方を選ばず、両方を実運用に近い環境で比較していることです。

現在のProject Helvetiaは少なくとも2028年6月まで継続されます。


方式1|Integrated Settlement

第一の方式では、SNBが金融機関向けのホールセールCBDC(wCBDC)をSIX Digital Asset Platformへ直接発行します。

資産も中央銀行マネーも同じDLT環境に置かれます。

そのため、

Security Token ↔ wCBDC

を同一基盤上でDvP決済できます。

SNBによれば、このwCBDCは経済的・法的にはSNB当座預金を技術的に異なる形で表現したものです。

これは最も「オンチェーンらしい」構成です。

資産とマネーを同じスマートコントラクト・ワークフローへ組み込めます。


方式2|Synchronised Settlement

第二の方法では、中央銀行マネーをDLTへ発行しません。

資産はDLT上。

資金は既存のSwiss Interbank Clearing、SICのRTGS上。

そして両方をRTGS Linkで同期します。

実際にBX Digitalは、public Ethereum上のDLT資産をSIC上の中央銀行マネーで決済する仕組みを本番利用しています。

つまり、

Ethereum上の証券

既存RTGS上の中央銀行マネー

でもDvPは成立します。


では、wCBDCは不要なのか

ここがHelvetiaの面白いところです。

技術的にはRTGS Linkでも成立します。

しかし、資産とマネーを別台帳に置けば、

状態同期、通信、タイムアウト、障害処理が必要です。

一方、wCBDCを資産と同じDLTへ置けば、スマートコントラクトの中でより直接的にDvPを実装できます。

ただし中央銀行側は、

DLTノード運営、サイバーセキュリティ、台帳ガバナンス、稼働時間、流動性供給、障害対応まで新たに担う必要があります。

wCBDCは「高機能」ですが、中央銀行が負うシステム範囲も広くなります。


Pontesとの違い

ECBのPontesは、短期的には「橋を架ける」戦略です。

既存TARGET Servicesを生かし、市場DLTと接続します。

Helvetiaはその一歩先で、

橋渡し型と、中央銀行マネーを直接DLTへ載せる型を、同時に比較している

と見ることができます。

Project Acaciaも「多くの便益は既存中央銀行残高でも実現可能」と結論づけました。

スイス、欧州、オーストラリアの動きを並べると、中央銀行の議論が

「wCBDCを発行すべきか」

から、

「どの取引にはIntegrated型が必要で、どの取引ならRTGS同期で十分か」

へ進んでいることが分かります。


Project Helvetiaが示したこと

タイトルの問いに、現時点で一つの答えはありません。

むしろHelvetiaは、

ユースケースによって両方を使い分ける可能性がある

ことを示しています。

高度なプログラマビリティとオンチェーン完結性を求めるならwCBDC。

既存中央銀行システム、流動性、法的枠組みを最大限活用するならRTGS Link。

重要なのは中央銀行マネーを「トークン化すること」そのものではありません。

資産の最終移転と中央銀行マネーの最終移転を、どこまで安全に一体化できるか。

Helvetiaは、その二つの答えを同じ国で比較している、非常に実務的なプロジェクトです。


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