【世界のオンチェーンプロジェクト File.016】Canton Network / DTCC
トークン化国債を、既存証券市場の正本と接続できるか
「RWAを新規発行する」から「既存の100兆ドル市場をオンチェーン化する」へ
最終更新:2026年8月
これまでのRWAトークン化の多くには、ある弱点がありました。
既存の証券とは別に、オンチェーン用の商品を新しく作る必要があったことです。
しかし、世界最大級の証券保管・決済インフラであるDTCCがトークン化に入れば、話は変わります。
DTCは2025年12月にSEC StaffからNo-Action Letterを取得し、DTCが保管する米国債、Russell 1000構成株、主要ETFなどをトークン化する限定的サービスを認められました。
重要なのは、そのデジタル版が従来証券と同じ権利、投資家保護、ownership rightsを持つ設計であることです。
「デジタルツイン」の問題を変える
従来型のトークン化では、
オフチェーン証券
↕
デジタルトークン
という二重管理になりがちでした。
「本当の所有者はどちらの台帳か」という問題が残ります。
DTCCのアプローチでは、DTCに保管された既存証券のポジションを、DTC自身のTokenization Serviceを通じてDLT上でも記録します。DTCCはこれを、既存中央台帳とDLT記録を並行させる構成として説明しています。
つまり、外部事業者が勝手に米国債のコピーを作るのではありません。
既存証券市場の正規インフラ自身が、オンチェーン表現を提供する。
ここが大きな違いです。
Canton Networkの役割
最初の主要接続先の一つがCanton Networkです。
DTCCとDigital Assetは、DTC保管の米国債をCanton上へMintする構想を2025年12月に発表しました。
Cantonの特徴は、金融取引に必要なプライバシーを維持しながら、異なるアプリケーション間で取引を同期できる点です。
ただし重要なのは、DTCCはCanton専用インフラを作っているわけではないことです。
DTCCはmulti-chain戦略を明示し、Stellarなど他ネットワークへの展開も予定しています。
つまり、
DTCCが正規の証券表現を提供し、複数チェーンへ配布する
方向です。
2026年7月、本番取引へ
2026年7月15日、DTCCはDTC保管資産を実際にトークン化し、本番環境で複数の取引を処理しました。
対象には、
担保差入れ、証券貸借、米国債レポのDvP、株式DvP、株式DvD、トークン移転、CCPマージンなどが含まれています。正式サービス開始は2026年10月予定です。
これはかなり大きな転換です。
「トークン化国債を発行した」というレベルではありません。
既存証券市場の資産を、そのままオンチェーン金融で使えるようにする段階です。
なぜ担保が重要なのか
米国債の最大の用途の一つは、保有することではなく、担保として使うことです。
レポ、デリバティブ証拠金、中央清算、資金調達。
もし米国債を24時間オンチェーンで移動できれば、
「市場が閉じているから担保を動かせない」
という時間制約を減らせます。
Cantonでもクロスボーダー・イントラデイレポや担保移動の実証が続いています。
Canton/DTCCが示したこと
トークン化市場が大きくなるために必要なのは、必ずしも新しいRWAを大量に作ることではありません。
既存市場には、すでに巨大な流動性があります。
DTCだけでも114兆ドル超の資産を保管しています。
したがって本当のゲームチェンジャーは、
既存の高流動性資産を、法的権利を変えずにオンチェーンで利用可能にすること
かもしれません。
タイトルの問いへの答えは、
既存証券市場の正本と切り離されたトークンを作るのではなく、正本を管理するFMI自身がオンチェーン表現を発行すれば接続できる。
です。
これはRWAの世界が「新商品」から「市場インフラ」へ移る象徴的な転換です。
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