【世界のオンチェーンプロジェクト File.017】 Regulated Settlement Network
証券・預金・中央銀行マネーを米国の共通台帳へ載せられるか
「全部を一つのチェーンへ」ではなく「各社の領域を持つ共有台帳」
最終更新:2026年8月
米国の金融市場では、国債は国債のシステム。
銀行預金は銀行のシステム。
中央銀行マネーはFedのシステム。
それぞれ別々に存在します。
取引するたびに複数システムを同期し、照合します。
Regulated Settlement Network、RSNは、この分断を共有台帳によって減らせないかを検証した米国金融業界のPoCです。
2024年の実証では、トークン化商業銀行預金、トークン化中央銀行預金、米国債、投資適格債などを共通の規制された市場インフラで24時間同期決済する構成を検証しました。
「一つの台帳」だが「一つの財布」ではない
RSNの特徴は、各金融機関が共有台帳上に自らのpartitionを持つ構造です。
銀行Aの預金はAの領域。
銀行Bの預金はBの領域。
中央銀行マネーも別の領域。
証券も別の領域。
しかし、同じ基盤上なので、
「それぞれ別の正本を維持しながら、一つの取引として同期する」
ことができます。
これはProject Agoráにも近い発想です。
二つの実証
RSNでは大きく二つが検証されました。
一つがMulti-Asset Delivery。
米国債、投資適格債、商業銀行預金、中央銀行預金などの移転を、あらかじめ設定された条件に従って同期します。
もう一つがCross-Network Interoperability。
RSNの外にある第三者ネットワークとも接続し、複数ネットワーク間の決済を同期できるかを試しました。Swiftが相互接続のプロトタイプを提供しています。
「Fedも参加した」は誤解
ここは重要です。
New York Innovation CenterはTechnical Observerとして参加しました。
しかしFederal ReserveがRSN導入を決めたわけではなく、SIFMAも、PoCの内容がFedの見解やFedがRSNへ参加する法的権限を示すものではないと明記しています。
さらに、実証は模擬データを使ったテスト環境です。
実価値取引ではありません。
The Clearing Houseとの違い
TCH構想は銀行マネーの共同ネットワークです。
RSNはもっと広い。
Money + Securities
を同じ取引基盤へ載せようとします。
したがって、
TCHは銀行間決済インフラ。
RSNは将来の金融市場インフラ。
という違いがあります。
RSNが示したこと
実証では、共有台帳上のmulti-asset settlement、外部ネットワークとの同期、既存米国法の下での法的成立可能性について肯定的な結果が得られました。ただし、商用化には追加的な規制当局との検討が必要です。
タイトルの問いへの答えは、
技術的には載せられる。
法律的にも直ちに不可能とは確認されなかった。
しかし、中央銀行マネーまで本番環境へ載せるには、技術より公共政策とガバナンスの判断が大きい。
となります。
RSNは「米国版Agorá」そのものではありません。
しかし、米国金融界にも
MoneyとAssetsを別々に動かす金融市場を、共通状態へ再構成する
という方向が存在することを示したプロジェクトです。
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