「文科省の職員は、我が子を公立学校に通わせるべきである」という暴論の正論

「学校に行く意味がわからない」という子供の素朴な疑問から始まった、親たちの脱線だらけの教育制度論。リコーダーの謎から霞が関へのデモまで、日本のガラパゴス教育を笑い飛ばす風刺エッセイ。

居酒屋で話し込む二人

山本: 相談があるんねけどな、子供が全然勉強せいへんし、学校行くのを
   嫌がるんや。
田中: それは心配やな。お子さんはなんて言うてるの?
山本: 子供が言うにはな、「そもそも、学校へ行く意味が分からへん」
   という訳や。
田中: まっ、一度は通る道やな。でも、知識は必要やろ?
山本: 勿論、言うてるよ。でもな、わてが答えられへん質問をしてきよる
   ねん。
田中: どんなこと?
山本: 「体育の授業は将来何になるねん、音楽は何になるねん。私はス
    ポーツ選手になる気はないし、音楽家になる気もない。そもそ
    も、学校教育からプロのスポーツ選手や音楽家が生まれたこと
    あるんか?」ちゅう訳や。
田中: (少し考えて)……確かに。一理あるな。
山本: そやろ? 誰に教われなくても走ることはできるし、歌は歌える。
   じゃあ学校で何を習ってるんや?って。体育の授業で何が身に
   ついた? 音楽の授業で何が身についた?って言われたら、親
   として答えられへん。
田中: 確かに、あの「リレーの練習」がその後の人生のどこに役立ってる
   のか。「合唱」でみんなと声を合わせた経験が、社会に出てどう活き
   るのか……聞かれたら分からんな。
山本: おまけに音楽の時間の「リコーダー」やあれなんや! あんな楽器、
   学校以外で見たことないぞ! あれを必死に練習して、もし達人にな
   れたとして、将来何になれるんや?「リコーダー・マスター」か?
田中: ますます答えられへんわ。
山本: そやろ! 大体、「こうしたら速く走れます」とか「こうすれば歌が
   上手くなります」なんて、学校の先生から論理的に聞いたことある
   か? 学校卒業して、何割の人間が楽譜読めるようになってるのよ?
    楽譜も読めへん、音痴も治らん……じゃあ、あの時間は何やったん
   や!って話や。
田中: 確かに、ピアノとかバレエみたいに、やりたい奴が家庭で月謝
   払って習うべき内容かもしれんな。それを全員強制のカリキュラム
   に入れてるのは、言われてみればおかしいな。
山本: そやろ! つま先立ちで歩けへんでも人生困らん! 楽譜が読めんで
   もマクドでバイトはできる! 一律全員に教える意味があるんか、
   と。……なぁ、これ誰に文句言ったらええの?
田中: ああ、公立学校のカリキュラムを作ってるのは、霞が関の文科省の
   官僚や。
山本: 官僚?
田中: 運動会や学芸会なんて、日本の学校特有のガラパゴス文化やからな。
   音楽も体育もそのたぐいよ。海外の音楽や体育の授業は楽しむことが
   目標で全員が一律で逆上がりが出来なきゃダメとかはない
   あいつらは、現場で悩む庶民の子供のことなんて、これっぽっちも
   考えてへんのよ。
山本: いやいや、考えてないことはないやろ。自分の子供だって学校に行
   くわけやし。
田中: そこがちゃうねん! あいつらの子供は、高い入学金と授業料
   払って、独自のカリキュラムを持った私立学校に行かせてるケース
   が多いわけよ。 公立学校に通う庶民のことなんて、実験台としか
   思ってへん。
山本: なんだと!? 奴らにとっては、公立学校の崩壊なんて「対岸の火
   事」ってわけか!
田中: そういうこと。
山本: 許せん……それは酷すぎる。なぁ、なんとかならんか? ……(閃く)
   あ、これどうや! 「文科省に勤める職員の子供は、全員公立学校に
   通うことを法律で義務づける」!
田中: えっ……。
山本: これなら、自分の我が子が通うわけやから、奴らも命がけで公立教
   育を良くしようと考えるやろ!
田中: ……それは確かに一理ある。公的教育のシステムを作ってる人間が、
   公的教育を信用せずに子供を私立に行かせるのは、確かに矛盾してる
   わ。けど、選択の自由もあるわけやし
山本: いや! 文部科学省の職員の子が私立に行くのは絶対におかしい!
田中: まぁ、自分で作ったもんを放り投げて、子供を私立に行かせるとい
   うのは確かにおかしいよ
   最近じゃ、私立高校の授業料まで実質無償化しようとしてるしな。
山本: 誰のための無償化やねん! 自分らのためやないか!
田中: まぁまぁ、落ち着けって。
山本: 許せん! 俺は明日からデモを起こす! 霞が関の前でプラカード
   掲げたるわ!
田中: やめとけって、お前一人が行ったところで何も変わらんて。
山本: 一人ちゃうわ! うちには今、「学校に行きたくない」って言うて、
   時間が有り余ってる子供がおる!
田中: え……?
山本: あいつを学校に行かせる代わりに、明日からデモに連れて行く! 
   拡声器持たせて、最前線で叫ばせたるわ! 「子供が喜ぶ、行きたく
   なる学校つくれーー!!」ってな!
田中: いや、デモさせる前に学校行かせ!

前回の記事はこちら  https://note.com/tom2020/n/n49263bb95c97

#ショートショート #コント #会話劇 #ユーモア #クスッと笑える #政治風刺

いいなと思ったら応援しよう!