この町に、総合の風を。 【総校①#00】/校長の挑戦 ― 総合の力を信じて 第1章
これから「総合的な学習の実践」を連載していく予定ですが、思った以上に「離島編」に時間をかけてしまっています。
そこで今回は、20年前の記録である離島編と並行して、自分にとって最新となる校長時代の実践を掲載していくことにしました。
シリーズは全3章構成を想定しています。
今回は、その第1章にあたるプロローグ的な内容です。
今から約5年前,2020年度コロナ禍での総合的な学習の時間を核とした学校経営の実践です。
全3章のうちの第1章(2020年度)3月からことです。
※注 今回も本文中の一部地名や商品名等は必要があれば,仮名(かめい)にしています。
1.校長の視点で記す、学校づくりの記録
今回から、新シリーズ 「校長の挑戦 ― 総合の力を信じて」 を連載します。
このシリーズでは、私が校長として勤務した学校で、教職員や地域の方々の理解と支援を得ながら、「総合的な学習の時間」 を学校づくりの核に据えて取り組んだ3年間の実践記録を紹介していきます。
挑戦は数多くありました。
しかし、そのどれもが私ひとりの力で成し遂げられたものではありません。
多くの方々の支えがあってこそ形になったものであり、まさに協働の物語だったと思います。
このシリーズでは、そうした挑戦と感動のエピソード、そしてワクワクする実践の裏側を綴っていきます。
校長としてどのように構想を描き、どんな手を打っていったのか。
また、「総合的な学習の時間」そのものが持つ学びのエッセンスについても紹介していきたいと思います。
当時は、まさにコロナ禍のまっただ中でした。
感染対策に追われながらも、私たちは「学びを止めない」を合言葉に、教職員が一丸となって前へ進みました。
その3年間は、学校の力、そして教育の底力を改めて感じた貴重な時間でもありました。
このシリーズでは、総合的な学習そのものに焦点を当てるだけでなく、その学びの環境から生まれた日常のドラマや学校行事の裏側にも触れていきます。
「離島編」と同じように、学校という場の息づかいを感じながら読んでいただければ幸いです。
2.別れの花束と、言えなかった挨拶
2020年3月、前勤務校からの異動が決まったとき、子どもたちは学校にいませんでした。
なぜなら、当時の安倍首相が新型コロナウイルス感染拡大防止のため、全国の小中学校に臨時休校を要請したからです。
唯一、卒業式だけは特別に実施され、児童とその保護者、そして教職員のみで行いました。 在校生は参加できませんでした。
その年度の終業式の日、全校としては臨時登校日が設けられました。
久しぶりに子どもたちと顔を合わせ、「これで最後になるのか」と思うと、胸に少し寂しさがこみ上げました。
全員がマスクを着用し、短時間で終業式を終えました。

続いて行われた離任式では、体育館で簡単に紹介を受けただけでした。
下校時、校門の前で花束を受け取り、手を振る子どもたちに「さようなら」と声をかけました。
異動のあいさつもできないままの旅立ちでした。
3.次の舞台は、この町に
新しい勤務先は、私の住む市から車で30分ほどの中山間地にありました。
休日に下見に出かけ、曲がりくねった道を抜けると、田と大きな川,山並みの向こうに校舎の一部が見えてきました。
のどかな風景の中に静かに建つその学校を見たとき、「ああ、ここが次の舞台になるのか」と胸の奥が少し熱くなりました。
実を言うと、そこは私の妻の出身校、つまり母校でした。
妻の実家にも何度も訪れていたので、町の様子や特産品にはある程度なじみがありました。
季節ごとに変わる景色、地域の人たちのあいさつ、特産の果物や農産物・・・そのどれもが、地域の力を感じさせてくれるものでした。

「これは何かの縁だな」と思うと同時に、総合的な学習の時間を進めるうえで、題材となりそうな地域資源がたくさんあることに心が躍りました。
山も川も、人の営みもすべてが“学びの素材”として息づいている。
そんな場所で、どんな学校づくりができるのか・・・新しい挑戦への期待がふくらみました。
4.見えない敵との開幕戦
3月末のある日、引き継ぎのために新しい学校を訪れました。
前校長から文書を受け取り、子どもたちのこと、教職員のこと、地域との関わりなど、さまざまな話を伺いました。
課題もありましたが、それ以上に豊かな環境と温かい地域の支えがあることを感じました。
しかし、4月からはコロナ禍による臨時休校の一時解除。
これまでとは異なる形での学校経営が求められます。
「まずは挑戦してみよう」・・・そう心に決め、気持ちを引き締めました。
一方で、前任校での引き継ぎや残務整理に追われ、私生活でも我が子の引っ越しと新生活の準備、父の入院といった出来事が重なっていました。
見えないコロナとの戦いは、すでに始まっていたのです。
次回へ続く👇
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