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【島小#07】猫まで釣れた夏──教師と島の“夏休み手帖”/離島の小学校編

海の学習を終え、島の学校にも夏休みがやってきました。

40日間にわたる休みの間、私は島を離れて本土での研修や出張、自主研究会への参加、登校日行事など、多忙な日々を過ごすことになります。

離島での暮らしが日常になりつつある中で迎えた初めての夏休み。
その時間は、学びと出会い、そして少しの笑いに満ちていました。

前回の話👇

離島で勤務することとなった1教師の奮闘記です。
今から約20年以上前の2002年(平成14年)7・8月頃のお話です。

※注:本文中の一部地名や固有名詞等は仮名(かめい)にしています。



1.夏休み突入──静かな校舎と5人の日直当番

夏休み期間中といっても、学校が完全に静まり返るわけではありません。

5人の教職員で日直当番を交代しながら、玄関の開閉や校舎の施錠、来客対応など、最低限の管理業務は続きます。
(もっとも、島外からの来客といっても、連絡船の着く時間に合わせてやってくる程度なんですけどね。)

学期中は週1回ほどの当番が曜日ごとに決まっていますが、夏休みはそうはいきません。

研修や出張で島を離れる機会が多くなるため、なるべく滞在日をまとめて、1人が数日連続で日直を受け持つ形にしていました。

島の教員は全員が本土からの赴任者です。
40日間の夏休みを5人で分担すると、1人あたりおよそ6日間ほど。
もちろん、それ以外にも登校日もありますが。

短くはありませんが、それでも「できるだけ自宅で過ごせるように」というささやかな工夫でした。


2.出張ラッシュの中で見えてきた“日常”のかたち

夏休みが始まると同時に、私のスケジュールは慌ただしく動き出しました。

自宅から勤務先の市まで車を走らせ、水泳検定会の準備会、本番、図工の実技研修会と予定が詰まっています。

県単位の大きな出張よりも、市単位の研修が多いのは、校務分掌で複数の教科主任を兼ねているためでもあります。

図工の研修の帰り道、ちょうど途中にある前任校に立ち寄ると、「おお、久しぶり!」と声をかけてくれる先生方がいました。

「島の暮らしはどう?」と聞かれるたびに、最初は一つひとつが驚きだった出来事が、今では自然と口から出てくるようになっていました。

気づけば、島の生活がもう“日常”になっているのです。


3.和紙と砂糖とソフト会社──飛び出した教材研究

社会科部会の夏期研修では、教材研究の一環としてフィールドワークに参加しました。

最初の訪問先は、ワープロソフト「一太郎」で知られるジャストシステムの本社でした。

学校現場にも導入されている統合ソフト「一太郎スマイル」も手がける企業ですが、ソフトウェア会社の見学というのは当時珍しく、先方でも初めての受け入れだったそうです。

ミーティングルームや開発フロアに足を踏み入れると、プロジェクトごとに仕切られた高めのパーティションが並び、仕事の進行に合わせてレイアウトを自在に変えられる工夫が施されていました。

フレックスタイム制のため人影はまばらで、静かな空気が流れています。

社員食堂や売店まで案内していただき、「デジカメを持ってくればよかったなあ」と悔やんだほどでした。

このあと、砂糖づくりの工場や和紙づくりの体験施設も訪れました。

夜は久しぶりに旧知の先生方と飲みに出かけ、翌日の島での日直のことをしばし忘れて楽しい時間を過ごしました。


4.学びの熱気の中で見つけた次の一歩

週末には、大学院時代のゼミが主催する自主研究会にも足を運びました。

在学中には運営スタッフとして準備に奔走していた頃の記憶がよみがえり、少し背筋が伸びる思いです。

会場では、全国各地から集まった教師たちが、それぞれの現場での実践を熱く語っていました。

「総合的な学習の時間」での子どもたちの変化や、探究の中で見えてきた“壁”の乗り越え方など、どの発表も現場の空気を感じさせるものでした。

理論だけではない、生きた実践の数々に思わずメモを取る手が止まりません。

また、今年は他大学から情報教育の専門家も招かれ、ICTがもたらす新しい学びの可能性についても話を聞くことができました。

「島という環境でも、やりようはきっとある」――そんな確信のようなものが、静かに自分の中に芽生えていきました。

一日が終わるころ、私の胸の内には「よし、2学期からまた新しい挑戦をしてみよう」という前向きな気持ちが湧き上がっていました。


5.猫までヒット!港が笑いであふれた夕暮れ

夏休み中にも登校日がありましたが、この日は午後からの登校でした。

教員が乗る連絡船の時刻の都合に加え、夕方から「親子釣り大会」という行事が控えていたためです。

子どもたちは午後に登校して学級活動などを行ったあと、一度帰宅して港に集合します。

家族対抗で釣り大会を行うのです。
島で暮らしているからこそできる、ユニークなイベントでした。

教務主任である自分が企画・運営しました。

大会では、「たくさん釣ったで賞」「おもいで賞(最も大きな魚)」「いろいろ釣ったで賞(種類数)」の3つの賞が用意されていました。

私たち教員もチームとして参加します。

この日は竿を入れれば次々と魚が掛かり、サビキの針すべてにアジが食いついてくるほどでした。

1本の針に2匹がかかって途中で落ちることもあり、港のあちこちから「わっ!」「きゃー!」という声が響きました。

子どもたちの中にはルアーでカマスを釣り上げる子もいて、誇らしげな声が飛んできます。

中でも忘れられないのは、1年生の女の子が釣った“猫”です。

釣り上げた魚を狙ってやってきた猫が、まだ針のついた魚をくわえて離さず、そのまま引っ張られてしまったのでした。

港中が笑いに包まれた、まさにこの日一番の大騒ぎでした。

保護者の多くは漁師で、普段は船から漁を行っているため、陸から釣りをする機会はほとんどありません。

「こういう釣りも面白いなあ」と笑う保護者の姿も見られ、家族が並んで糸を垂れる光景はとても温かいものでした。

子どもと家族が一緒に過ごす時間、笑い声と波の音が重なる港の夕暮れは、この島ならではの風景です。

私たち教員も例外ではありません。

釣ったばかりの魚をクーラーボックスに詰めて、翌日のおかずとして自宅へ持ち帰りました。

この島の夏を、海と共に暮らしているのだと実感した一日でした。


海の学習が終わり、始まった初めての夏休みは、多くの学びと笑顔が詰まった日々でした。次回は、オフタイムの魚釣りなどについて書きます。

▶︎ 離島の小学校編 08 へ続く

離島の小学校編は、マガジンでまとめて読めます。👇👇随時追加中


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