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アワビのその先を探した春【島総③#01】/総合実践の記録vol4 塩物語編/離島の総合的な学習③ 

アワビの活動が一区切りを迎えた春。
次に何をするのか、まだ誰にも見えていなかった。
それでも子どもたちとの新しい総合的な学習の時間は、静かに動き始めていた。


1.終わりは、いつも静かにやってくる

2004年4月。

前年度から続いていた「アワビいっぱい大作戦」の最後のページを、ようやくホームページにアップした。

本当は3月のうちにすべて終わらせるつもりだった。
しかし、卒業式や年度末の慌ただしさに追われ、気がつけば4月まで持ち越していた。
それでも最後のページを公開したときには、一つの仕事を終えた安堵感があった。

子どもたちと積み重ねてきたアワビの活動は、これで一区切りである。

とはいえ、学校にはまだアワビが残っていた。
水槽の中をのぞき込めば、小さな命たちは相変わらずゆっくりとプレートにはりついている。
総合的な学習の時間では、とりあえず6月頃までは世話を続けようという話になった。

もっとも、それ以降になると水温が上がる。この水槽で飼育を続けるのは難しい。

終わったようで、まだ終わっていない。そんな春だった。

2.新しい総合を探して

新年度の総合的な学習の時間は、すでに始まっていた。

だが、実のところテーマはまだ決まっていない。

何を調べ、何を育て、何に挑戦するのか。
子どもたちと一緒に考えるところからのスタートだった。

4月下旬のある午後、教室で今年度の活動について話し合った。
まず考えさせたのは、「どんな自分たちになりたいか」ということだった。

やりたいことを先に決めるのではなく、目指す姿を考える。
その上で活動を組み立てていく。

こちらから答えを与えてしまえば早い。
しかし、それでは探究にならない。
子どもたちの考えをじっくり聞きながら、少しずつ方向を探っていった。

ちょうどその頃、大学院時代の指導教授から紹介されていたKWNプロジェクトのことも頭にあった。
ビデオカメラを使って映像作品を制作する取り組みである。

うまく組み合わせれば面白いことができるかもしれない。

そんなことを考えながら話し合いを進めた。

後半はアワビ水槽の水換えだった。
3人の子どもたちと力を合わせて作業する。
しかも全員女の子である。重いバケツを運びながら、「これはなかなか大変だな」と思ったことを覚えている。

3.最後の放流、そして次の種

5月になると、学校に残していたアワビも限界が近づいていた。

ちょうど干潮の日を選び、近くの海岸へ放流に向かった。

海は穏やかだった。

子どもたちは岩場にしゃがみ込み、そっとアワビを海へ戻していく。
これから先、水温はさらに上がる。
学校で育て続けることは難しい。

前年度から続いた活動は、この日をもって本当に終わった。

その頃には、私の頭の中に一つの構想が生まれ始めていた。

昨年度、アワビの中間育成でお世話になった水産研究所のY先生から、以前こんな話を聞いていたのである。

「ウミブドウの栽培ってできますよ。」

ウミブドウは海藻の一種で、粒が連なる独特の姿をしている。
口に入れるとプチプチとした食感があり、海の香りが広がる。
少しずつ人気が高まり、養殖も行われているという。

話を聞いたときから、どこか気になっていた。

もしかしたら総合的な学習の時間の単元になるかもしれない。

そう思い、私はY先生にメールを書いた。

4.誰かのために作るということ

6月になると、総合的な学習の時間は別の活動でも動き始めていた。

翌日に予定されていた保育所との交流会に向けて、子どもたちはテングサを使った寒天ゼリー作りに取り組んでいた。
以前の交歓学習でもらってきたテングサである。

自分たちが作ったものを保育所の子どもたちにプレゼントする。

それ自体は小さな活動だったが、私の中では大切な意味を持っていた。

何かを作る。

誰かのために作る。

あるいは育てる。

そうした経験が、これから始まる単元の入り口になるのではないかと思ったのである。

交流会の準備をしながらも、頭の片隅ではウミブドウのことが気になっていた。

5.暑い教室で動き出した夏

7月に入ると、水産研究所とのやり取りが本格的に始まった。

メールの返信をいただき、昼休みに思い切って電話をかけた。

当初は私一人で研究所へ行き、話を聞いてくるつもりだった。
しかし、よく考えると、それでは教師がお膳立てをしすぎてしまう。

せっかくなら子どもたち自身に話を聞かせたい。

そう考え直し、翌週に子どもたちを連れて訪問したいとお願いしたところ、快く了承していただけた。

いよいよ今年度の総合的な学習の時間の単元が動き始める。

その訪問に向けて、ワークシートや計画づくりも進めた。

午後の教室はまるでサウナだった。

気温は34度近くまで上がっていた。職員室にエアコンが入ったおかげで、余った扇風機が教室に回ってきたが、吹いてくるのは熱風である。
それでもないよりはましだった。

汗をかきながら、子どもたちと単元の名前や目標、これからの活動について話し合った。

最初はぼんやりしていた子どもたちの表情が、少しずつ変わっていく。

何を育てるのか。

何を調べるのか。

それが少しずつ形になり始めていた。

夏の熱気に包まれた教室で、新しい総合の物語がようやく動き出そうとしていた。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回に続く

前回の話 (アワビいっぱい編最終話)👇

初めて来られた方へ👇👇

本シリーズは、離島の小学校で実践した総合的な学習の記録です。
本作は2004年度、赴任3年目の取組を扱います。
島の人たちのために,ウミブドウを栽培し,お祭りで食べてもらうつもりでした・・・。
この年は,台風の襲来が多く,実践にも大きな影響がありました。

「お魚天国海辺のデジタル図鑑」から始まる離島の総合実践3部作の最終作です。

総合実践のvol2、お魚天国デジタル図鑑編(マガジン離島の総合的な学習の時間①)👇👇

総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇👇


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