見出し画像

プチプチが運んできた夢【島総③#02】/総合実践の記録vol4 塩物語編/離島の総合的な学習③ 

2004年7月。
春に探し始めた「その先」は、海の向こうにありました。
子どもたちの新しい挑戦が、いよいよ動き始めます。


1.暑い教室から始まった挑戦

7月に入ると、教室は連日のように30度を超えていました。

職員室にはエアコンが入りましたが、その分だけ教室との温度差を強く感じます。
午後の総合的な学習の時間になると、昼過ぎの教室はまるでサウナのようでした。
ぼんやりする頭で翌日の準備を進めながら、「もう少し子どもたちにじっくり考えさせたい」という思いと、「夏休み前に形にしなければ」という焦りの間で揺れていました。

今回の単元は、思っていた以上に展開が早く進んでいました。
準備が十分に追いつかないまま、それでも一歩ずつ前へ進めていかなければなりません。

その頃には、漁協の組合長さんにも授業への協力をお願いしていました。
学校だけではできない学びを地域と一緒につくる。
そんな今年度の総合が、少しずつ動き始めていました。

2.ウミブドウとの出会い

7月14日。
今年度の総合的な学習の時間が、いよいよ本格的に動き出しました。

子どもたちと朝一番の船で本土へ渡り、水産研究所を訪れます。
目的は、これから育てることになるウミブドウの原藻をいただくことでした。

研究所では施設を案内していただき、さまざまなお話をうかがいました。
そして、実際に目の前にしたのが「クビレヅタ」とも呼ばれるウミブドウです。
沖縄ではお土産としても知られていますが、夏場の水温であれば、この地域でも栽培が可能だと教えていただきました。

もちろん、子どもたちと一緒に試食もさせていただきました。

海の塩味が口いっぱいに広がり、そのあとにプチプチとはじける独特の食感が続きます。

「おいしい!」

思わず子どもたちと声をそろえていました。

この味を知ったことで、単なる「育ててみよう」ではなく、「このおいしさを自分たちの島でも育ててみたい」という思いが、子どもたちの中にも芽生えたように感じました。

大切な原藻を受け取り、午後の船で島へ戻ります。
ちょうどその船には、別件で来島する関西の放送局のディレクターさんも乗船されていました。

3.島の海へ託した希望

島へ戻ると、その日のうちに仕事を終えた漁協組合長さんと一緒に、ウミブドウを海へ沈めに行きました。

研究所では、「条件が合えば爆発的に増えますよ」と教えていただいていました。
ただし、茎が切れないよう波の穏やかな湾内が適しているとのことです。

組合長さんも興味深く様子を見守ってくださいました。
そして、「もしうまく育つようなら、漁協でも取り組んでみようか」と話してくださいました。

その言葉を聞いたとき、この活動は学校だけの学習では終わらないかもしれないと思いました。
子どもたちの挑戦が、地域の未来へつながる可能性を持っていたからです。

まずは夏休みの間に成長を観察し、9月にはたくさんのウミブドウを収穫する。

そんな期待を胸に、静かな海へ小さな希望を託しました。

4.夏休みも続く観察

夏休み直前には、干潮の時間を利用して校外へ出かけました。

子どもたちと一緒に、珪藻を食べる貝を採集します。
これをウミブドウの入ったかごへ入れる予定でした。
育てるだけではなく、生育環境まで考える活動が少しずつ始まっていたのです。

夏休みに入ってからも、気になるのは海の中のウミブドウでした。

連絡船で組合長さんと顔を合わせると、「あの場所は大丈夫だろうか」と自然に話題になります。
研究所では問題ないと言われていましたが、次の登校日に子どもたちと一緒に確認してみようという話になりました。

8月の日直の日、夕方になって海へ様子を見に行きました。

一つの網では順調に増えていました。
しかし、ほかの網は目が珪藻で詰まり始めていました。
やはり定期的な掃除が必要なのかもしれません。

期待どおりには進まないこともある。

それでも、毎日少しずつ海の様子を見に行きながら、子どもたちと育てる夏は静かに続いていきました。


ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回に続く👇

前回の話 👇

初めて来られた方へ👇👇

本シリーズは、離島の小学校で実践した総合的な学習の記録です。
本作は2004年度、赴任3年目の取組を扱います。

島の人たちのために,ウミブドウを栽培し,お祭りで食べてもらうつもりでした・・・。
この年は,台風の襲来が多く,実践にも大きな影響がありました。
「お魚天国海辺のデジタル図鑑」から始まる離島の総合的な学習の時間実践3部作の最終作です。

総合実践のvol2、お魚天国デジタル図鑑編(マガジン離島の総合的な学習の時間①)👇👇

総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇👇


いいなと思ったら応援しよう!

熱中探究教室 応援いただいたお気持ちは、子どもたちの学びを物語として発信し続ける力となり、教育の現場で役立つヒントへとつなげていきます。