台風が運んできた宝物【島総③#03】/総合実践の記録vol4 塩物語編/離島の総合的な学習③
2004年の夏休みは、台風の連続でした。
島には何度も暴風雨が襲いかかり、停電するほどの大きな被害も出ました。
そのたびに海は荒れ、港の景色も少しずつ変わっていきました。
しかし、この台風が今回の総合的な学習の時間の実践の大きな転換点になるのです。
1.期待を胸に海へ向かう
2学期が始まりました。
夏休み前に海へ沈めたウミブドウは、その後どうなっているのか。
夏休み中も気になり、日直の日や連絡船で漁協組合長さんと顔を合わせるたびに、その話題になっていました。
網の目詰まりは少し気になっていましたが、水産研究所では「条件が合えば爆発的に増えますよ」と聞いていました。
9月にはたくさんのウミブドウを収穫し、秋のお祭りで島のみなさんにも食べてもらいたい。
そんな期待を子どもたちと何度も話していました。
2学期の総合的な学習の時間が始まると、運動会の練習と並行しながら、いよいよウミブドウの様子を見に行くことになりました。
「どれくらい増えているかな。」
そんな期待を胸に、子どもたちと港へ向かいました。
2.消えてしまったウミブドウ
海から網を引き上げた瞬間、誰もが言葉を失いました。
あれほど鮮やかな緑色だったウミブドウは、ほとんど姿を消していました。網いっぱいに残っていたのは、泥のような汚れと、びっしり付着した汚れだけです。

子どもたちは何度ものぞき込みながら、小さくつぶやきました。
「えー、ウミブドウなくなってるな・・・。」
「秋のお祭りで島のみんなに食べてもらおうと思っていたのに・・・。」
誰も責任を押しつけることはありませんでした。
ただ、目の前の現実を受け止めきれず、しばらく網を見つめるだけでした。
私も同じでした。
夏休み前、水産研究所で初めて口にしたプチプチとした食感。
「おいしい!」
と子どもたちと声をそろえたこと。
漁協組合長さんと一緒に海へ沈めた日のこと。
そんな場面が次々と思い浮かび、
「自然相手とはいえ、こんなこともあるのか」
と悔しさだけが残りました。
3.港で見つけた白い結晶
とはいえ、いつまでも立ち止まっているわけにはいきません。
「ウミブドウの代わりに何かできないだろうか。」
そんなことを子どもたちと話しながら過ごしていましたが、すぐに答えが見つかるはずもありませんでした。
そんなある日、港へ片付けに出かけました。
ウミブドウを育てていたかごを引き上げ、ロープを外そうとしていたときです。
「先生、これ何?」
子どもが指さした先には、手すりに白いものがこびりついていました。
近づいて見てみると、砂でも泥でもありません。
「塩かもしれんなあ。」
「海の水が乾いたのかも・・・。」
今年の夏、何度も島を襲った台風。
そのたびに海水が港へ吹き上げられ、手すりに付着したまま、夏の日差しで水分だけが蒸発したのでしょう。
そこには白い結晶が残っていました。

すると、子どもの一人が思い出したように言いました。
「老人会のおばあちゃんが、昔、塩を作ったことがあるって言ってた。」
その一言を聞いた瞬間でした。
頭の中で、ばらばらだったものが一気につながりました。
ウミブドウは育たなかった。
でも、海はある。
島には塩を作っていた人がいる。
教えてもらえば、新しい総合が始められるかもしれない。
そう考えた途端、自然に言葉が口をついて出ました。
「海の水から塩を作ろう!」
子どもたちは突然の提案に、きょとんとした表情をしています。
けれど私の中では、「これだ!」という確かな手応えがありました。
失敗で終わると思っていた総合的な学習が、新しい物語へ向かって動き始めた瞬間でした。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
次回に続く
前回の話 👇
初めて来られた方へ👇👇
本シリーズは、離島の小学校で実践した総合的な学習の記録です。
本作は2004年度、赴任3年目の取組を扱います。
島の人たちのために,ウミブドウを栽培し,お祭りで食べてもらうつもりでした・・・。
この年は,台風の襲来が多く,実践にも大きな影響がありました。
ついに「塩物語」が始動します。
「お魚天国海辺のデジタル図鑑」から始まる離島の総合実践3部作の最終作です。
総合実践のvol2、お魚天国デジタル図鑑編(マガジン離島の総合的な学習の時間①)👇👇
総合実践のvol3、アワビいっぱい編(マガジン離島の総合的な学習の時間②)👇👇👇
いいなと思ったら応援しよう!
応援いただいたお気持ちは、子どもたちの学びを物語として発信し続ける力となり、教育の現場で役立つヒントへとつなげていきます。