本日をもって、15年間続けた「ITスタートアップ」を卒業します。―アソビューのこれからと覚悟について
■ 第1章:はじめに —— 本日をもって、ITスタートアップを卒業します
2026年7月1日。サッカー日本代表が、W杯でブラジル相手に歴史的熱戦を繰り広げたその翌日。私たちアソビュー株式会社は第16期目のスタートラインに立ちました。
創業から15年という月日が流れ、組織崩壊、資金ショート、コロナ禍という未曾有の大災害による存続の危機など、スタートアップにありがちなハードシングスは一通り経験しつつ、なんとかここまで走り続けてこられました。
それはひとえに、全国のパートナー(契約事業者)の皆様、アソビューのサービスを活用してくださるゲストの皆様、難局でも諦めずに伴走してくれた仲間たち(従業員)とそのご家族、応援してくださる株主の皆様、その他お取引先企業様のおかげです。 心の底から感謝を申し上げます。
さて、新年度を迎えるというこの心機一転にふさわしいタイミングで、会社としての非常に重大な、もしかしたら世間から見ると驚かれるかもしれない「大きな戦略転換」をここでお話ししたいと思います。
結論からお伝えします。 私たちは、これまで誇り高くまとってきた「ITスタートアップ」という冠を、自らの戦略的な意志を持って「卒業」することにしました。

ちなみに、そもそも「スタートアップ」の定義はなんぞや?という議論が各所でありますが、最終的には「気持ちの問題だ」という諸先輩方の助言もあり、私たちはずっとスタートアップのままでいます 笑。
それに伴い、これまで私たちを紹介するための対外的な看板としてホームページでも使用していた「遊びのDXカンパニー」という呼称、およびITを大前提とし、テーマとして多用してきた「DX」「Tech」「SaaS」といったキーワードを名乗ることも、本日をもってきっぱりとやめます。 (正確には、順次看板を下ろしていきます)
「えっ、アソビューってIT企業じゃないの?」
「テック企業じゃなくなったら何になるの?」
と思われるかもしれません。
そもそも、産業カテゴリーとしての「IT(情報技術)」が公的機関や社会一般に広く認められ、新興産業の代表格として定着し始めたのは、インターネットが爆発的に普及した1990年代以降のことです。
それから約30年間、日本中、いや世界中において「IT」という二文字は、常に時代の最先端、キラキラと輝く憧れ(と妬み)の象徴、そして若き起業家たちがこぞって目指す聖域であり続けたと思います。
もちろん私もその一人です。 映画『ソーシャル・ネットワーク』や、ソフトバンクの孫さん、GMO熊谷さん、KLabの真田さん、サイバーエージェントの藤田さん、DeNAの南場さんらの著書を創業前後に拝読し、その輝きに魅了され、「テクノロジーで世界を変えるのだ」と息巻き、胸躍らせていた一人でした。

しかし、時代は進みました。 かつて最先端だった「IT」は、今や電気、水道、ガスや空気と同じように、社会のあらゆる場所に溶け込んだ「大前提のインフラ」となりました。
もはやITであること自体には、何の神秘性も、そして決定的な競争優位性も存在しないフェーズに突入しています。
これは別に今に始まったことではありませんが、AIの台頭により、この事実がより鮮明に白昼のもとにさらされることになった、と言ったほうが正しいと思います。
だからこそ、私たちはその過去の憧れや、居心地の良い「IT企業の一員」という立ち位置から脱却することにしました。
思い返せば、IT企業という産業カテゴリーにいたからこそ出会えた仲間が本当にたくさんいます。 裸一貫で起業して、いつしか「IT経営者仲間」ができて嬉しかった。 参加させていただいたITカンファレンスもたくさんあります。 そこには、数多くの学びや出会い、成長がありました。
「若手IT起業家」なんてメディアに書かれちゃって、嬉しかったことも、逆にムカついた機会もありました(苦笑)。 (気づけば私も43歳になりました)
しかし、これからは違います。 私たちはもっと泥臭く、もっと生々しく、現場に寄り添う存在へと進化していきます。
これからは「遊び・体験産業」において、どこよりも深いAI活用実績・リテラシーと、フィジカルでのサービス提供を強みに、「遊びのExecution(実行)カンパニー」と銘打って、非連続的に成長していきたいと思います。

■ 第2章:未来予測 —— なぜ、IT産業を卒業する必要があるのか?
なぜこのタイミングで「IT・Tech・DX・SaaS」という看板を下ろすのでしょうか。 その理由は、私たちが直面している「AI革命」という破壊的な地殻変動にあります。
今、この大きな産業革命は、過去のインターネットやスマートフォン革命を遥かに凌駕する速度とインパクトで加速しています。 この冷徹な変化の現実を前に、私は一つの確信を持っています。
「AI時代において、単にITツールやシステムを開発し、提供するだけの会社は5年以内に死ぬ(しらんけど)」ということです。
これまで、多くのIT企業やSaaSベンダーは、独自のプロダクトを持ち、それをユーザーやクライアントに活用してもらうことで、「経済活動の効率化」という価値を提供し、それを競争優位性として成長してきました。
ご多分に漏れず、私たちもそうです。
しかし、すべての個人にAIによる開発環境が実装されていく近い将来において、コードを書くことやシステムを構築すること、標準的なITツールを作成することの難易度とコストは、限りなくゼロへと近づいていきます。
つまり、システムの提供価値は消滅し、誰でも、どんな企業でも、一瞬で同等以上のデジタルツールを保有できるようになります。 というか、もうなっています。
ITやDXといったテーマを掲げ、それを自社の唯一無二の強みとして誇っている企業は、AIの民主化によってその存在意義を根底から揺さぶられることになります。
かつては高付加価値があり、高価であったITシステムがコモディティ化し、空気や水と同じように「あって当たり前」のものになる。
その時、単に「私たちが作ったITツールをどうぞ」とサービス提供しているだけの会社に、いったいどんな価値が残るというのでしょうか。
これは、2年前からAI推進室を創設し、全社員でGemini活用を必須化。
昨年末にはClaude Codeをこれまた全社員対象で活用推進。
3か月のブートキャンプに50名以上が参加して実践ノウハウを蓄積。
直近2か月ではAIで業務用ツールを80本近くリリースし活用。
今も月50本のペースで増加中。
——と、密かに、かつ組織的にAI活用に投資し続けてきた私たちの確信です。
私たちは、その予測される未来を座して待つのではなく、自ら先手を打ってビジネスモデルの自己破壊と再構築を行うことを決意したのです。

■ 第3章:牙を剥く現実 —— 「遊び・体験産業」の現場が直面している危機
私たちが戦略を転換するもう一つの、そして最も情緒的かつ切実な理由は、「遊び・体験産業」の現場が今、未曾有の危機に瀕しているという現実にあります。
新型コロナウイルスの荒波を乗り越え、人流が戻ってきたレジャー・体験・エンタメ・スポーツ興行の現場。 さらにインバウンドという大きな追い風も受けています。
しかし、そこを待ち受けていたのは、かつてない規模での「原価高騰」「人件費の急上昇」、および圧倒的な「人手不足」という三重苦でした。
エネルギー費や資材費の価格高騰はパートナーの施設維持費をダイレクトに圧迫し、最低賃金の引き上げや採用難は人件費を押し上げています。
地域で何代にも渡って人々の憩いの場となってきたレジャー施設に足を運ぶと、そこにあるのは、経営者たちが抱えるあまりにも難儀な経営課題です。
「システムを導入したけれど、日々の現場対応に追われてデータを分析する時間なんてない」
「お客様は戻ってきたけれど、スタッフが足りないから予約を断らざるを得ない」
これが、今の遊び・体験産業のリアルな状況です。
ITツールはもちろん便利です。 しかし、それは現場の代わりにゲストをお迎えしてはくれません。 今のところは、笑顔で接客もしてくれない。 スタッフが足りずに崩壊しかけている現場のオペレーションを、代わりに回してはくれないのです。
このまま原価高と人手不足による利益圧迫が続けば、あと10年もすると、この国から大切な遊び場が次々と灯を消し、なくなってしまうかもしれない。
ゲストの歓声が響く場所や、人々が心を解放できる大切な空間が失われてしまう。 私たちは、そんな未来を絶対に看過することはできません。
「遊びのDXカンパニー」として、外側からITツールを提供するだけのアプローチでは、この崩壊のスピードに間に合わない。
その強い危機感と焦燥感に、今回の決断の背中を力強く押されることになりました。
■ 第4章:新たな旗印 —— 私たちは「遊び・体験産業のExecution カンパニー」へ
そんな急激な市場環境の変化にいち早く対応すべく、私たちは第16期を「遊びのDXカンパニー」から「遊びのExecution(実行)カンパニー」へのトランスフォーメーション元年とします。
ITツールを一つの手段として、現場で実際に手を動かし、ハンズオンで成果を上げる会社になっていくという成長戦略を掲げていきます。 (そして、そもそもフィジカルな体験サービスを自分たちで大きく展開していく会社としても勝負していきます)
私たちの目線はもはや、IT企業でも、DX企業でも、SaaS企業でもありません。 実際の現場で、AIを駆使しながらオペレーションをフィジカルで担い、成果を上げていく「遊びのExecutionカンパニー」に生まれ変わっていきます。

「遊び・体験産業」という、人間の感情やフィジカルな動きが価値の源泉となる領域において、パソコン画面の中だけの効率化では片手落ちです。
現場のオペレーションが回り、ゲストが感動し、リピーターが生まれ、結果としてパートナーの皆様のキャッシュフローが改善されて初めて、私たちの存在意義が証明されます。
洗練されたオフィスで、ベイエリアの雰囲気をちょっとだけまとい、スマートにキーボードを叩くカッコよさではなく、実際の現場で、泥にまみれながらもAIを活用して圧倒的な業務スピードと最高のおもてなしを両立させる。
そんな、強さと泥臭さと愛らしさを兼ね備えた実務のプロフェッショナル集団へと、私たちは進化していきます。

■ 第5章:ミッションがセンターピン —— 「生きるに、遊びを。」という執念
この大転換を推し進めるにあたり、私たちが創業以来、一貫して掲げてきたミッションを今一度、深く胸に刻み直したいと思います。
「生きるに、遊びを。」
私たちは、遊びというものを、生活に余裕がある時にだけ嗜む「贅沢品」だとは微塵も思っていません。
遊びとは、人間が人間らしく、五感を震わせ、明日を生きるための生命力を湧き出させるための「根源的なエネルギー」そのものであると信じています。
効率性と生産性を極限まで求められる現代社会において、人は往々にして心が摩耗し、生きる意味を見失いそうになります。
そんな時、大自然の中で体を動かしたり、エンターテインメントに没頭したり、スポーツ観戦で夢を見たりすることで、私たちの心は不思議なほど回復し、また明日から頑張ろうという活力が湧いてきます。

これらすべての体験こそが、人間に人間らしい息吹を吹き込むのです。 私たちは、この素晴らしい営みをこの社会の当たり前にすることで、幸せな社会を作っていきたいと考えています。
ミッションを口先だけのスローガンで終わらせないための、私たちの執念が、今回の「Executionカンパニーへの脱却」という覚悟の選択を支えています。
■ 第6章:2030年の景色 —— ビジョン「遊びで、1億人の幸せをつくる」
私たちがその崇高なミッションに向かって正しく進めているのか、それを定量的に測るための中間目標として、私たちはビジョンを掲げています。
「遊びで、1億人の幸せをつくる」
2030年までに年間累計1億人に、遊びを通じて幸せをお届けしていこう、と目標設定しています。 これは2030年までに、アソビューが遊び・体験産業のインフラ企業になるぞ、という宣言でもあります。
年間1億人のゲストが、私たちの関わる現場で笑顔になり、リフレッシュし、生きるエネルギーを持ち帰る。
その景色の実現に向けて、パートナーの経営を実際の現場からハンズオンを超えて共に歩み、この国から大切な体験の場をなくさないために、私たちは加速度的な成長を続けていきます。
画面の向こうからITツールを提供するだけの関係ではなく、現場にコミットし、売上増とコスト削減という目に見える成果をともに生み出す。 それこそが、インフラ企業になるべくした私たちの覚悟です。
■ 第7章:おわりに —— 未来の仲間たち、そしてパートナーの皆様へ
16期という新しい航海に出るにあたり、まずは、これからアソビューの扉を叩いてくれるかもしれない「未来の仲間たち」へメッセージを送ります。
これからの私たちの仕事は、これまで以上に泥臭く、生々しく、そして最高にエキサイティングなものになります。
クーラーの効いたオフィスで洗練されたロジックを組むだけの、スマートなビジネスパーソンでいたい人には、これからのアソビューは少しタフすぎる場所に映るかもしれません。
しかし、リアルな現場でゲストの笑顔が弾ける瞬間を特等席で眺め、自分たちが実行したAIオペレーションによって現場のスタッフが「本当に楽になった、ありがとう!」と一緒に喜び合う。
そんな本質的な感動を味わいたい人にとっては、これ以上なく血湧き肉躍るステージになるはずです。 私たちは、そんな熱い志を持った新しい仲間を待っています。👉️募集一覧はこちら👈️
そして、日本全国のパートナーの皆様へ。
私たちは、皆様の経営の痛みを、画面の向こう側から眺めるだけの「ITベンダー」であることを本日辞めました。
これからは、皆様の施設に、経営に、当事者として深くコミットし、運命を共にする「Executionカンパニー」として皆様と席と席を並べて、肩を組む側に回ります。
原価が高くても、人が足りなくても、諦める必要はありません。 最先端のAI頭脳と、どこまでも熱い人間の情熱を持った私たちが、皆様を支えて共に戦います。
この国から、大切な場を絶対に無くさないために。
皆様の経営の持続可能性を、私たちが証明してみせます。
「遊びのDXカンパニー」から「遊びのExecution カンパニー」へのアップデート。それは、アソビューの第二の創業であり、RE:BORNの始まりです。
誰も歩んだことのないこの新しい道を、私たちは圧倒的なスピードとパワー、および周囲から愛される可愛らしさを忘れずに進んでいきます。
新しく生まれ変わる16期目のアソビュー株式会社に、ぜひともご期待ください。 そして、これからも共に、最高の未来を創っていきましょう!

