五月の灯火
連休を終えた校舎は、どこか少しだけ空気が違っていた。
通学路に咲き乱れるつつじは鮮やかに色づき、木々の葉は新緑から深緑へと姿を変え始めている。
春のやわらかさを残しながらも、季節は静かに夏へ向かっていた。
教室の窓から吹き込む風は、土と草木の匂いを運んでくる。
その風に触れているだけで、胸の奥に溜まっていた何かが、少しずつほどけていく気がした。
授業中、先生の声が遠くかすんでいく。
黒板を走るチョークの音さえ、今日はどこか眠たげだった。
私は頬杖をつきながら、窓の外を揺れる若葉を眺めていた。
風が吹く。
木々が揺れる。
光が踊る。
そのたびに、風が何かを話しかけてきているような気がした。
言葉にはならない。
けれど、確かに心はそれと対話していた。
窓辺を抜けていく五月の風は、
まだ小さなまま胸の奥で揺れている“灯火”を、
そっと確かめるように吹いていた。
――灯火 司(ともしびのつかさ)
