考えすぎて体が止まる日に。ひとつだけ残すゴルフ
『詰まった日は、順番を減らす』
うまくいかない日に必要なのは、確認を増やすことではなく、ひとつ減らすことなのかもしれません。
朝の練習場、固まる体
朝一番の練習場は、まだ人もまばらで静かです。
ひんやりした空気の中、マットの上にボールを一つ置く。
いざ構えようとした瞬間、頭の中にいくつもの確認事項が浮かんできます。
グリップは合っているか。
肩の向きは正しいか。
目線はどこに置けばいいか。
一つずつ確かめようとするほど、肩や腕がこわばっていく。
素振りでは自然に振れていたのに、ボールを前にすると急に動きがぎこちなくなる。
そんな「頭が詰まる朝」、ありませんか。
真面目な人ほど、考えることが増えていく
アドレスに入ってから、あれもこれも意識して体が固まってしまう。
これは、ゴルフに真面目に取り組んでいる人ほど陥りやすいことだと思います。
少しでも良くなりたいからこそ、確認する項目が増えていくのです。
とくにゴルフを始めた頃は、覚えることが多くて当然です。
グリップ、姿勢、肩の向き、ボールの位置。
全部を間違えないようにしようとすると、頭では分かっているのに、体が言うことを聞いてくれなくなる。
その苦しさは、私にもよく分かります。
教える側の私も、詰まることがある
正直に言うと、私自身もレッスン中に詰まることがあります。
生徒さんにうまく伝わっていないと感じると、
「この言い方なら分かるかな」
「次はこの動きを試してみよう」と説明を足してしまう。
けれど、伝えようとするほど話が枝分かれし、生徒さんの頭の中にも確認事項が増えていく。
気づけば、私自身も何を一番伝えたかったのか分からなくなっていることがあります。
ゴルフは、無意識にしている動きがとても多いものです。
それを言葉にするのは大切ですが、言葉を増やせば必ず伝わるわけではありません。
むしろ、考えさせすぎて動きを止めてしまうこともあります。
そんな日は、教える私も一度立ち止まり、「今日は何を一つだけ残すか」を考え直します。
Eさんのスイングが戻った瞬間
生徒さんのEさんは、とても真面目な方でした。
レッスンで聞いたことを一つも漏らさず実践しようとして、アドレスに入るたびに確認を繰り返していました。
ところが、意識することが増えるほど、スイングは少しずつぎこちなくなっていきました。
そこで私は、こう伝えました。
「今日はグリップだけにしましょう。ほかは一度、忘れて大丈夫です」
Eさんは少し不安そうでしたが、思い切って意識を一つに絞りました。
すると、さっきまで止まっていた体が、驚くほど自然に動き始めたのです。打球音も軽くなり、ボールはまっすぐ飛んでいきました。
「何も考えないほうがいいんですね」
Eさんは笑いました。
ただ、何も考えなくていいわけではありません。
一度に考えることを減らし、繰り返して身についたものは、少しずつ体に任せていく。その順番が大切なのだと思います。
今日の言葉の意味
『詰まった日は、順番を減らす』という言葉には、そんな瞬間が重なっています。
うまくいかないとき、私たちはつい意識する項目を増やして解決しようとします。
でも本当に必要なのは逆で、詰まった日ほど手順を減らすこと。
シンプルに構えるだけで、体は本来の動きを思い出してくれます。
今日から試せること
練習場で頭がいっぱいになったら、今日の確認を一つだけ決めてみてください。
「グリップだけ」
「フィニッシュまで振るだけ」
残りは、いったん忘れて構えます。
それでもうまくいかなければ、また基本に戻れば大丈夫です。
行ったり戻ったりしながら、少しずつ考えなくてもできることが増えていきます。
「何も変わっていない」と感じる日は、一か月前の自分を思い出してみてください。
以前は毎回確認していたことを、今は自然にできているかもしれません。
それは、真面目に続けてきた時間が、ちゃんと体に残っている証拠です。
減らした先にある、軽い一打
肩の力を抜いてクラブを構え直すと、朝の冷たい空気がすっと胸に入ってきます。
詰まる日があってもいい。
そんな日は、無理に答えを増やさず、ひとつだけ残してみる。
考えなくてもできることが増えるほど、スイングは少しずつ軽くなっていきます。
ボールが澄んだ音を残して、朝の空へ飛んでいく。
その一打を見送りながら、「少し楽に振れたな」と思えたら、それで十分です。
今日、あなたが一つだけ手放すとしたら、どんな確認でしょうか。

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