映画『スーパーマン』 IGGY POPの心意気を宿したスーパーヒーローが爆誕!
現在公開中の『スーパーマン』がどうやらすんげぇPUNKらしいぞ…という噂を聞いて気になったんで観に行ってみた。

これまでのジェームズ・ガンの作風から、いろんなPUNK ROCKがかかるのかな?って想像してたんだけど、案外そこまでじゃなかった。
その代わり
「全ての人に優しくするって、そんなの幼稚な考えなんじゃないの?」
という非常に重要な問いかけに対してスーパーマンが
「それがPUNK ROCKなんだ」
ってアンサーするセリフがある。
さらに最後の最後に流れる曲が、"GODFATHER OF PUNK ROCK"の異名を持つIGGY POPなのであった!!!
厳密にはスウェーデンのテディベアーズというバンドが2000年にリリースした『PUNKROCKER』という曲で、2006年にイギーポップとコラボしたイギーのボーカルバージョンが使われている。この曲がもういっちばんいいところで流れ出す。この選曲、このセンス。ジェームズ・ガンはほんとにくたらしいな(褒めてます)。
ということでPUNK ROCKがガンガンかかるという意味じゃなくて、映画全体を貫く心意気がPUNKな映画だったのです。
元祖ヒーローの現代的な語り直し
スーパーマンは1938年に生み出された、世界中に知らない人などいないヒーローものの元祖というべきキャラクターである。
悪い奴らを超人的な能力を駆使してやっつけてくれる正義の味方。1930年代といえば世界大恐慌やナチズムの台頭があった暗い時代である。その蔓延る悪に恐々としていた当時の人々にとって、「こうだったらいいのに…」と希望を託すことができた太陽のような存在。それがスーパーマンであったと。
なんだけど、そこから87年後の現在。もう悪い奴らをやっつける正義の味方。あるいは勧善懲悪というものがリアリティを失ってる時代じゃない?
ようするに誰かにとっての正義とは、その正義を振りかざされる別の誰かから見たら「それって悪じゃね…?」となってしまう。
例えば桃太郎というお話しは、お爺さんお婆さんからしたら桃太郎は正義のヒーローだけど、鬼(やその家族とか)からみたら桃太郎ってとんでもない極悪非道なヴィランだよな…、って突っ込まれちゃう。特定の誰かにとっての正義。そこには常に被害性と加害性が同居しているのだ。
だから単純な勧善懲悪モノってちょっと苦手で、本作見る前は「ちゃんとノレるかな…?」ってちょっと心配だったわけ。
でもそんなのジェームズ・ガン始めとする製作陣はちゃーんとわかってて、余計な心配なんて一切ご無用でした。
もともと宇宙からやってきたスーパーマンはいわば移民である。そのスーパーマンが最後に言う
「ぼくだって人間なんだ」
という言葉によって、国籍とか人種とか信仰とか性別とか年齢のような分類を無効化する。そんな分類以前に誰もがひとりの人間なんだと。そしてひとりで闘うんじゃなく、思いを共にする仲間と連帯する。
特定の誰かにとっての善ではなく、誰にだろうと分け隔てなく善を成す。それがスーパーマンなのだと、古典的なキャラクターを現代的なヒーロー像へと語り直してくれていた。そしてそれが昨今の現実にも重なってめちゃくちゃ痛快だった。
PUNK ROCKの元祖がリンクする
そこで冒頭触れたIGGY POPが効いてくるんだよね。
IGGY POPは1968年にザ・スゥージズというバンドを結成。ストゥージズの過激なサウンドとイギーのステージングは後のパンクバンドに大きな影響を与えつつ、現在もバリバリの現役でステージに立ち続けているパンクロッカーの元祖のような人でして。
もともとPUNK ROCKって、1970年代の不景気真っ只中なイギリスで仕事にありつけない労働階級の若者たちの怒りを、荒削りなロックンロールのサウンドに乗せてぶちまけることで社会的なムーブメントにまでなった反体制の音楽なのね。
その後2000年代のアメリカ・ブッシュ政権に対しても、先陣切って批判したのがGREEN DAYや NOFXなどパンクバンドだったりもした。


そして本作でジェームズ・ガンは作品全体でパンクバンドばりに痛烈にトランプ政権(と同盟国のイスラエル、あと同盟国ではないけどロシアにもかな?)への抵抗を示す。
あの国が隣国に侵攻しようとするシーンで、ジャスティス・ギャングたちの反撃が視覚的にも笑っちゃうぐらいに超痛快なカウンターになってた(文字通り中指立ててた)w
全ての人に優しくあろうとすることを
「それがパンクロックなんだ」
とスーパーマンは言ってたけど、4月に来日したイギーポップのライブを見に行ったら、全てのオーディエンスに対してやっぱりひたすら優しかったもん。77歳の年齢なんか関係なく200%のエネルギー出し切って、歌い暴れる姿を見せてくれてたよ。これが優しさじゃなくてなんなのよ。
あえてイギー・ポップ単独の曲ではなく、異国のバンドとコラボレーションした比較的新しめの曲を持ってくる捻ったチョイスも、古典的ヒーロー・スーパーマンを現代的に刷新する作品のラストを飾る音楽として完璧としか言いようがない。
スーパーヒーローの元祖とPUNK ROCKの元祖が2025年の現代に"分け隔てのない優しさ"という普遍的なポイントでリンクする。
IGGY POPの心意気を宿したスーパーヒーローの爆誕。
マジで最高じゃないの!
ということで、最後にチラッと出てきたスーパーマンの従姉妹であるスーパーガールが主人公の新作(再びジェームズ・ガンも制作に名を連ねている)が、2026年に公開予定なので、こっちも楽しみ(スーパーガールのほうは女性パンクロッカーのパイオニア、パティ・スミスの音楽を使ってくると予想)!
