W杯開幕!サッカーソックスはなぜ、膝の下まであるのか?
こんにちは!
靴下工房Toréを運営しているアクルです。
これまで大手アパレルOEMの現場で、中国工場と一緒に数百万足の靴下を作ってきました。
このnoteでは、その経験をもとに、普段あまり意識されない靴下の仕組みをできるだけ分かりやすく書いています。
靴下はとても地味な存在ですが、実は身体・工業・文化が交差する、なかなか奥の深い世界です。
あの長さには、理由がある
ワールドカップを観戦していると、俯瞰なので、選手の足元がよく映ります。
ユニフォームのシャツ、ショーツ。
そして、膝のすぐ下まである長い靴下。
なぜ、あそこまで長いのでしょう。
スポーツの靴下はたくさんあります。
ランニング用は足首丈。
テニスは少し長め。
バスケットはミドル丈が多い。
現在の主要スポーツの中でも、サッカーは膝下丈がほぼ標準になっている、珍しい競技です。
理由があるはずだと思って調べてみると、靴下と防具の関係がありました。
ロングソックス文化と、シンガードの登場
サッカーは19世紀のイギリスではじまりました。
この時代からすでに、ロングソックスをはいてプレーする文化がありました。
ニッカーボッカーと呼ばれるひざ丈のパンツに、長い靴下を合わせるスタイルです。
つまり、サッカーソックスが長いのは最初から伝統としてあった、ということになります。
その後、競技が激しくなるにつれて「シンガード」と呼ばれるすね用のプロテクターが登場しました。
現代のサッカーソックスが膝下丈として定着した大きな理由は、このシンガードを固定する役割にあります。
もともと長かった靴下が、シンガードが普及すると、それを上から覆い固定する役割を担うようになりました。
機能が加わり、丈の意味が変わっていったのです。

ルールとして残っている
今日では、FIFAの競技規則でシンガードの着用が義務付けられています。
さらに、シンガードは「ストッキングで完全に覆われていなければならない」と規定されています。
伝統として始まった丈が、機能を経て、やがてルールになった。
面白いのは、選手の中にはこのルールと格闘している人もいる、ということです。
前回の記事で書いたように、試合中にソックスを切ったり折り返したりする選手がいます。
長い丈が締め付けになるからです。
近年はシンガード専用のスリーブやグリップソックスを組み合わせるなど、固定の方法も多様になっています。
元々はソックス一枚が担っていた役割を、今は複数のアイテムで分担しているわけです。
それでも、シンガードが適切に覆われていなければ競技規則上問題になる可能性があるため、ソックスの丈は今も重要な要素であり続けています。

しかし足がつりやすくなる
製造側から見ると、長い靴下は難しい
少し視点を変えて、作る側の話をします。
靴下の丈が長くなるほど、製造は難しくなります。
短い靴下は、足首のフィットだけ考えれば済む。
でも膝下まである靴下は、
足首のフィット
ふくらはぎの伸縮
膝下の固定感
この全部を同時に設計しないといけない。
部位によって脚の太さは変わります。
動きによって求められる伸縮も変わります。
素材の配合、リブの密度、ゴム糸の種類——調整するポイントが増えます。
競技用のサッカーソックスが一般的な靴下より単価が高い理由のひとつは、ここにあります。
糸の使用量が増えることに加え、部位ごとに異なる伸縮性を設計する必要があるためです。
長い靴下を「履いていて気にならない状態」に仕上げるのは、思っているよりも繊細な仕事です。

形はいつも機能から生まれる
靴下の形は、なんとなく決まっているわけではありません。
サッカーソックスが膝下まである背景には、長い歴史と、防具固定という機能がありました。
ランニングソックスが薄くて短い理由は、重量と通気性のためです。
ビジネスソックスが黒系でハイソックス寄りなのは、座ったときに肌を見せないという服飾上の慣習と、スラックスとの調和のためです。
どの形にも、背景がある。
そう思って街を歩くと、人々の足元がすこし違って見えてくるかもしれません。

最後まで読んでいただきありがとうございます。
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