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「筋力低下あり」だけでは介入が決まらない

担当した症例をまとめたレポートに
「下肢筋力低下」と書いたとします。
徒手筋力検査法(MMT)で測定し、
結果は4と判断。
だから低下していると考えたことは間違っていないし、
事実です。

でも、その一行から、次の介入は出てきません。

出てくるのはたぶん「筋力増強訓練」で、
そこで止まって終わります。

スクワット、レッグエクステンション、
誰しもが考えるようなメニューで、
なぜそれを実施するのかと聞かれると、
答えに詰まる。

私も学生のレポートで、この一行を何度も見ています。

書いた本人を責める気はありません。
だって、教科書どおりに測って、
教科書どおりに書いただけなのだから。

問題は、その一行が止まっているのではなく、
一行の「中身」がまだ開かれていないことです。

「筋力低下」は、結論のように見えて、
実は入口にすぎません。

同じMMT4でも、中身はぜんぜん違います。

たとえば、立ち上がりで膝が崩れる人の「筋力低下」と、
歩いていて後半に疲れて失速する人の「筋力低下」は、
同じ数字でも意味が違います。
(MMTの話からこの言い方は極端すぎてます、すみません)

前者は一回の大きな力が足りないのかもしれないし、
後者は力そのものより、出し続ける持久力の問題かもしれない。
あるいは、力は出せるのに、
いつ・どの向きに使えばいいかという、
タイミングの問題かもしれない。

数字は「足りない」としか教えてくれません。
でも生活が困っているのは、
たいてい「足りない」ことそのものではなく、
「ある場面で、必要な使い方ができない」ことのほうです。

ここで止まってしまうのは、
評価を実施した学生や若手の能力が低いからではありません。

「筋力低下」という言葉が、あまりに便利で、
それ以上分解しなくても文章が成立してしまうからです。
言葉が完成して見えると、思考はそこで満足して止まります。

だから、次にやることは検査を増やすことではなく、
同じ所見を、もう一段ほどくことです。

今日の「問い」。
あなたの患者さんの「筋力低下」を思い浮かべて、
こう問い直してみてほしい。
その人は、どの動作の、どの場面で、
力が足りなくて困っているのか。

一回の大きな力なのか、
出し続ける力なのか、
使うタイミングなのか。

「筋力低下」の四文字を、
その人の生活の一場面に翻訳できたとき、
介入は自然と形を変えます。
スクワットのままでもいい。
でも、それを「なぜ選んだか」を言えるようになることの方が大切。


この記事は、現場で使ってしまう
「便利だけど、何も言っていない言葉」を、
1つずつほどいていくシリーズの1本です。

「筋力低下」「バランス低下」「ふらつき」
——同じように、評価で止まりやすい言葉をほどいて、
評価から介入までを1本の手順にしたのが、
前のシリーズ「評価はできる。でも治療に迷う。」です。
最後は、どんな患者さんにも当てられる
思考テンプレート(書き込みワークシート付き)に
まとめています。
📚マガジン「評価はできる。でも治療に迷う。」

そして、もしあなたが「教える側」に立つことがあるなら
——学生が黙り込んだとき、どう問いかけるか。
実際のセリフを5場面ぶんまとめた記事もあります。
🗣「完璧な先生をやめると学生は話し始める」
(問いかけスクリプト集つき)

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トト|理学療法士 × 教員 今後の執筆活動に役立てたいと思います。