指導者の「なぜ?」に答えられないとき
「なんで、この介入にしたの?」
指導者にそう聞かれた瞬間、頭が真っ白になる。
さっきまで普通にやっていたのに、
急に、自分が何も分かっていない気がしてくる。
何か言わなきゃと思うほど、言葉が出ない。
沈黙が長くなる。
実習生のころ、新人のころ、
この瞬間が、いちばんこたえた。
技術が下手だと言われるより、
「なぜ?」に答えられない自分のほうが、
ずっと情けない感じがした。
まず、知っておいてほしいことがある。
この「なぜ?」で固まるのは、
あなたが考えていないからではない。
むしろ逆のことが多い。
頭の中では、いろいろ思考が巡っている。
筋力が弱そうだとか、
立ち上がりが不安定だとか。
感じてはいるのに、
それが「なぜこの介入か」という一本の説明の形に、
まだ到達していない。
材料はある。でも、つながっていない。
だから、問われた瞬間に、
どこから話せばいいか分からなくなる。
沈黙は、考えていない沈黙ではなく、
思考の点を頑張ってつなげようとしている途中の沈黙。
そして、もう一つ。
指導者の「なぜ?」は、
たいてい、責めているのではない。
もちろん言い方のきつい人もいる。
でも多くの場合、
「なぜ?」は罠ではなくて、ただの確認だ。
あなたの頭の中にある、まだ言葉になっていない部分を、
外に出させようとしている。
「なぜ?」は、間違い探しではなく、
あなたの思考を引っぱり出すための、
とっかかり。
そう思えると、少しだけ、答えやすくなる。
では、どう答えればいいのか。
完璧な正解を一発で出そうとすると、また固まる。
だから、順番を変える。
「なぜ?」に、いきなり結論で答えようとしない。
見たことから話す。
「立ち上がりのときに、膝が内に入って崩れていたので」
まず、観察を言う。
次に、そこから考えたことを言う。
「支えがうまく使えていないのかなと思って」
最後に、だから何をしたかを言う。
「なので、まず足の位置を変えてみました」
見た→考えた→だからこうした。この順番でいい。
気づいただろうか。
これは、この練習帳でずっとやってきたことそのものだ。
所見を選ぶ。
動作とつなぐ。
原因を疑う。
やったことを確かめる。
それを、声に出して、順番に並べるだけ。
「なぜ?」に答えるとは、
特別なことではなくて、
自分の思考の道筋を、
そのまま口に出すこと。
だから、答えられなかった日があっても、
落ち込まなくていい。
それは頭が悪いのではなく、
道筋がまだ声になっていなかったというだけ。
声にする練習は、これからいくらでもできる。
今日の「問い」。
最近「なぜ?」に詰まった場面を、一つ思い出してほしい。
あのとき答えられなかったことを、
今、三つの順番で並べ直してみる。
何を見て、何を考えて、だから何をしたのか。
今なら、書けるかもしれない。
その場で言えなくても、あとで並べ直せるなら、
あなたはちゃんと考えている。
「なぜ?」は、答えられないと終わる質問ではなく、
何度でも並べ直していい問いだ。
この記事は、現場で使ってしまう
「便利だけど、何も言っていない言葉」を、
1つずつほどいていくシリーズの1本です。
「筋力低下」「バランス低下」「ふらつき」
——同じように、評価で止まりやすい言葉をほどいて、
評価から介入までを1本の手順にしたのが、
前のシリーズ「評価はできる。でも治療に迷う。」です。
最後は、どんな患者さんにも当てられる
思考テンプレート(書き込みワークシート付き)に
まとめています。
📚マガジン「評価はできる。でも治療に迷う。」
そして、もしあなたが「教える側」に立つことがあるなら
——学生が黙り込んだとき、どう問いかけるか。
実際のセリフを5場面ぶんまとめた記事もあります。
🗣「完璧な先生をやめると学生は話し始める」
(問いかけスクリプト集つき)
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