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書店は「斜陽産業」か?経産省レポートと、お金の話

~ ストーリー ~
突如「本屋を始めたい」と言い出し、妻に無断でnoteを立ち上げた夫。案外、妻がやる気で、将来本屋をやるための経験として、今月から書店員として働き始めた。夫(僕)は書店業界に関する本を読んだり、資金調達や支援施策を調査。色々見ていると、書店業界の古い体制や産業全体の落ち込み、資金調達の煩雑さに心が折れそうになっていたところ…

こんにちは、本屋を始めたい夫婦の夫です。

どんどんシビアになるお金の話

「本屋をやる」となれば、どんなにミニマムでも1000万円くらいの資金が必要。カフェやギャラリーも併設しようと思うと、ミニマムで1500万、現実的なところ2000万、理想を叶えようと思うと3000万円以上はしそう。資材も高騰しているし、当然自分たちの生活費は本屋が軌道に乗るまでも変わらずかかるわけだし、今見えていないお金も数十、数百万円単位でかかってくると思う。

物件取得費用とは別に1500〜2000万円くらいの開業資金が必要になる、理想の本屋↓

なので、資金調達について色々調べているんですが、お金の話はとにかく難しい。

今、本屋開業の勉強会に参加していて、ちょうどお金の話を聞いてきたけど、ネットで調べているだけじゃわからないことが多い。 例えば、日本政策金融公庫がやってる「新規開業・スタートアップ支援資金」は、かなりの低金利で設備資金なら返済期間最長20年で最大7200万円、無担保・無保証人で借りられる。

これを見た時、「これ使えばええやん!」と思っていたけど、実際のところ、民間銀行と併用しないといけなかったり(でも、民間銀行は実績のない人に貸してくれない)、追加で色々調べてみると、融資実績も数百万、多くて1000万円くらいらしい。自己資金もほとんど必要ないと書かれているけど、実際のところ融資してくれるのは自己資金の2倍くらい。

参考にしたYoutube(to 妻へ 時間がある時に見といてね)


これらを見ていると、金額はともかく借りること自体はそこまでハードルが高くないように思える。でも、この間の勉強会で聞いてきた話だと、

  • 公庫は民間の事業の障害になってはいけないため、まず民間での融資をつけてからしか融資ができない

  • 融資額も民間から受けた融資に対して、足りない部分を補填するような位置付け

  • しかし民間の銀行は株式会社として新規口座開設も難しい(会社を立ち上げるから口座が必要、といっても口座を作るために決算書を求められたりする)

と、なかなかハードルが高いらしい。

うまいこと行けば、自己資金をほとんど用意せずにいけると思っていたんだけど、そんなに甘くないか。自己資金が用意できないわけじゃないけど、大半がNISAの株式資産だからできるだけ手をつけたくない。

まあ、この辺は公庫や金融機関に直接話を聞いてみないとわからない。ケースバイケースだろうし、株式資産や自宅を担保に入れるなら、だいぶ話が変わってくるかもしれない。

経産省「書店振興プロジェクトチーム」の本気度

今日話題にしたいのは経済産業省が立ち上げた「書店振興プロジェクトチーム」について。経済産業省は書店を国力の源として、書店が減り続けている現状に手を打とうとしている。

この記事でも触れた内容。国や政府がやっていることが、僕がやりたい小規模な本屋にどんな影響を及ぼすのかわからないけど、業界全体の現状、課題感、方向性を把握する上ではいい資料だと思う。

今回はそのほかにも関連資料をいくつか漁っているうちに、僕が本屋を開業する時に使える具体的な制度(冒頭で話題にしたお金まわり)も見つけたので、その辺をまとめておこうと思います。

参照した資料の概要と発見を見ていくと、

1.全国書店ヒアリングでの声

全国約30店舗の書店経営者を対象に行ったヒアリング結果をまとめた資料。利益率の低さ、物流費・キャッシュレス手数料の負担といった課題のほか、補助金の活用状況や経営上の創意工夫など、現場のリアルな声が得られる。

何十年と個人で経営されているような、いわゆる「まちの本屋」から、ジュンク堂のような大型チェーン、カフェメインのものやシェア本棚メインのものなど、多種多様。

規模や雰囲気が、僕がやりたいものに近いところや、ビジネスモデルを部分的に参考にできるものをいくつか見つけたのでメモ。

  • こども冨貴堂(北海道)…子どもの本専門店。ギャラリーでは絵本作家ほか、地元クリエイターが活躍しており、展示予約は一年待ち。「こどもの本1万円選書」など選書サービスも展開。

  • HONBAKO(大阪)…シェア本棚特化。箱主を通じたイベントとして「1日店長」「箱主総会」などを実施。本は一冊50円を子ども食堂などに寄付することで社会貢献の仕組みを構築。

  • ふうせんかずら(奈良)…無人店舗。入店時に会員IDが必要な会員制であるため、万引きはゼロ。カフェやシェアキッチンによって、本屋でできる体験、行動の幅を広げている。

  • READAN DEAT(広島)…マンションの二階で店主が好きなアートブックや写真集などを扱っている。アートの企画展示や販売などのイベントが主な収益源。小規模ながらもSNSフォロワー数1万人を超えており、観光客や作家のファンが訪問している

  • 本屋ルヌガンガ(香川)…厳選した書籍だけを置く提案型書店。来店数は1日30~50人で客単価は全国平均の約2倍。SNSでの情報発信により三割が観光客。

「本屋」と一言でいっても、いろんな形態がある。本屋ルヌガンガは夫婦で経営されていて、30坪ほどの店内に7000冊ほど。僕たちがイメージする本屋に近い。最初は独立系書店, セレクト書店としてかなり尖った選書をしていたそうだけど、他のインタビュー記事などを見ると、お客さんの反応を見ながらスタンダードな選書を意識したことで客層が広がってきたそうだ。この辺のバランス感は参考になるかもしれない。

2.書店経営者向け支援施策活用ガイド

書店経営者向けの支援施策をまとめたガイドブック。相談窓口や書店が使える様々な補助金などの制度について、実際の書店の活用事例(カフェ併設の際に補助金を活用した事例など)を解説している。

補助金の情報は調べれば出てくるんだけど、イマイチ、「自分たちが使うとしたらどうなのか?」がイメージしにくい。でもここでは補助金を使った本屋の事例がたくさん出ている。さっきも取り上げた本屋ルヌガンガは利益率向上のため、中古本を取り扱うために本棚を増やす際に「小規模事業者持続化補助金」を活用したそう。

3. 関係者から指摘された書店活性化のための課題

書店振興プロジェクトチームが書店関係者へのヒアリングを行い、課題をまとめた資料。ヒアリングへの声で得られた内容をもとに来店客数の減少、粗利率の低さなど「書店特有の課題」29項目と、物流費高騰など「小売全般に共通の課題」5項目に体系的に分類している。

書店は文化の発信拠点であり、多様な考え方を維持し、国力にも影響を与えうる、きわめて重要な社会の資産である。しかしながら、現状においては、活字離れ、ネット書店の拡大などから厳しい状況におかれ、一つまた一つと閉店が続いている。こうした事態を放置すれば、多くの地域が無書店地域という、あってはならない状況になってしまう。我々は、書店減少の趨勢を変えていかなければならない。
(中略)
様々な知識を伝達する重要な手段である「本」の流通が滞ることがあれば、中長期的には、文化を毀損するだけでなく、国家の存立基盤や競争力を左右する懸念があり、本は重要な役割を有している。

経済産業省書店振興プロジェクトチーム「関係者から指摘された書店活性化のための課題」

本屋の衰退が「国家の存立基盤や競争力を左右する懸念」とは力強い。
僕自身、本はめちゃくちゃ重要性が高いものだとは思っているし、本を読んできたからこそ今の自分があると思っている。そんな人が数千万人いると考えれば、たしかに本は国家の基盤の一部を担っているのかもしれない。

とはいえ、本をそこまで重視しすぎるのもどうかと思う。
僕は本を気軽に買って読んでいるけど、「本は重要」という意識が強すぎて、手に取るハードルが高まっている気もする。正直、長めのYoutube動画を見るくらいの意気込みで手にとっていいと思う。

4. 書店活性化プラン

タイトル通り、書店活性化に向けた具体的な施策プランをまとめたもの。ヒアリングを通じて得られた課題をもとに、返品抑制やRFID機器の導入支援、キャッシュレス決済の環境整備など、官民連携して取り組むべき具体的な施策を提示している。

ヒアリング内容をまとめた施策なので、特に新しい情報はないけど、読めば読むほど、書店の独自要因が強く、対策・改善が大変だなと感じる。
これほど多品種小ロットが日々大量に出てくる商材はほかにないと思う。流通コストやロングテール問題(1日200冊新刊が出ても、まちの本屋が毎日200冊も入れ替えできるわけがない)は根深い。

5. 出版産業における返品削減研究会とりまとめ

業界全体の大きな課題になっている返品率対策のための研究会資料。RFIDタグの導入拡大、製造・流通の最適化(適時適量生産)、書店の仕入れ販売能力の向上などの方向性と具体策が提示されている。

書店業界を圧迫している最大の要因は、返品。取次から送られてきて、売れずに戻っていく、つまり売上にならず送料が2倍かかる商品が3割を超えている。
いろんな本や資料を見てきて、個人的にはここさえ解決すれば業界全体がガラッとよくなると思う。そう考える人は多いようで、この資料では返品対策だけに特化している。

「必要なものが、必要な量で、必要な場所に、必要なタイミングで届く」

この当たり前のサプライチェーンを作るために、業界全体が協力しないといけない。

今、大手だけに限れば、出版社も書店も儲かっている。一方、取次は大手二社が両方赤字になっている。出版社と書店が取次に甘えてきた結果だと思う。出版社は新刊を出せばとりあえず取次に卸して売上が出るから、売れる本を作る努力を怠ってきたし、書店は取次が勝手に本を送ってくれるから選書能力を磨いてこなかった。出版社が話題書を作ってくれたら勝手にお客さんがきてくれるので、マーケティングも磨いてこなかった。

その皺寄せが取次にきているわけだけど、大手二社の取次が赤字というのは、かなりまずい状況。もし大手取次が潰れるようなことがあれば、おそらく、書店も出版社も、大量に潰れると思う。

6.『書店活性化プラン』令和7年度取組状況・令和8年度取組予定

「書店活性化プラン」で挙げた施策について、2025年度の取り組み実績と2026年度の取り組み予定をまとめた進捗報告書。補助金の採択状況、キャッシュレス手数料など施策ごとの実行状況が掲載されている。

経済産業省もチームを立ち上げていろいろレポートを出しているけど、実際何をやったのか?がわかる資料。

例えば、令和7年度は「小規模事業者持続化補助金」が採択された書店は33件、「中小企業新事業進出補助金」の中で、採択された書店が1件、「IT導入補助金」で書店7件がPOSシステム導入などを行ったとのこと。

これが多いのか少ないのかはよくわからない。採択率がほか業種より高いのか低いのかもわからない。が、一部の書店がこうした制度を活用できたのは確か。ほかにもいろんなヒアリングやメディア周知は頑張っているみたいだけど、まあ、こういうのはちょっとずつしか進まないよな、という感想。
使えるものは使っていくし、業界改革の流れにはしっかり乗っていきたいけど、結局は現場の本屋、出版社、取次が部分的に痛みを負ってでも、変わっていかないと進まないんだろうな。

僕が本屋をやるなら、コストはかかってもRFIDなど新しい機器は積極的に導入したい。

書店業界の動きを追い風に変えるには?

最後に、僕が本屋をやる時に使えそうな支援や業界の動きをまとめておくと…

  • 資金調達の支援制度:日本政策金融公庫の「新規開業資金」。年齢的に、優遇金利も受けられる。実際どの程度借りられるのかによってできることも変わってくるが、どの程度借りられるのかを把握するためにできることを明確にしないといけないという板挟みだ。とにかく、色々物件を見て、あたりをつけて、相談窓口に行ってみよう

  • 補助金関連:POSやRFIDなどのシステム導入には「IT導入補助金」が使える。広告宣伝に使える補助金もある。僕はマーケティング職なので、広告費さえもらえたら一定の結果を出すことはできると思う。店舗集客に使えるマーケティング・広告アイデアは今から考えておきたい(正直、最寄駅でビラ配りが一番コスパいい気がする)。

  • 買い切りモデルの有効活用:大手取次は返品できるけど、補償金が大きく、小規模な店舗だとなかなか狙ったものが納品されないケースもあり、利益率が低い。一方、買い切りモデルの取次なら利益率を高めることができる。どちらも一長一短。うまく組み合わせる必要がありそう。

  • 体験価値の提供:色々な事例から、本屋が「本を売る場所」から「体験とコミュニティの場」に変わってきていることがわかる。最初からカフェ&ギャラリー併設を考えていたけど、どのような事例があるのか、どうすれば自分たちのやりたいことに独自性を打ち出せるのかを考える。

  • 客単価の向上:専門性や独自性を打ち出すことで、客単価を高めることに成功している事例もある。小規模な店舗では客数より客単価が重要。客数が増えすぎると混雑して体験価値を損なう。であれば、客単価を上げる方法は色々と考えておきたい。ギャラリーは客単価を上げてくれるだろうけど、選書レベルでも客単価を上げる方法を考えておく。コミック単行本や雑誌は、客数を増やせる一方、単価を引き下げる要因にもなる。空間価値、体験価値を重視する上でも、客数より単価目線でいきたい。

業界への解像度をとにかく高める

ということで今回、経済産業省の資料を中心に、書店業界の現状や課題、自分たちが知っておくべきことを見てきました。
どれも飾り気のないPDFだけど、AIを使えばいい感じに要約、ビジュアライズしてくれる。いい時代になった。
(NotebookLMのインフォグラフィック、久しぶりに使ってみたけど、まだ漢字が文字化けしたり、日本語弱いんだ…)

総じてまとめるなら、「元気が出た」

課題はいっぱいあるし、融資とかは調べれば調べるほど複雑でよくわからないところもあるけれど、国・政府、そして既存の書店業界の人たちが、なんとかしないといけない、と考えているのが伝わってくる。
そしてそれは、僕たちのような新しい参入者にとって、追い風となるはず。

民間の金融機関は本屋みたいな斜陽産業にお金を貸してくれないだろうけど、だからこそ公庫など公的な機関から、民間より条件のいい融資が得られるかもしれない。

以前の記事でも書いたけど、書店業界はこれからが面白い。

新しいプレイヤーが次々誕生していて、国もバックアップしている。新しいビジネスモデルもどんどん増えてきている。

僕はマーケティング経験が長いので「マーケティングに強い本屋」というのも、強みになるかもしれない。
これまでの本屋は週刊誌などが自動でお客さんを集めてきたからマーケティングをしなくても成り立っていた。でも今は違う。本屋も自分でお客さんを集めるためのマーケティングをしないといけない。お客さんにどんな価値を提供するのか、取次と出版社任せじゃなく、自分たちで考えていかないといけない

本屋としてできるマーケティング活動はどんなものがあるだろう。

様々な広告施策は考えられるけど、本屋の利益率から、広告集客に頼るのは非現実的。CPAいくらならROASが見合うのか、計算するまでもない。立ち上げてしばらく、自分たちの存在を知ってもらうために補助金を使って広告を出すくらいが現実的だと思う。

noteやyoutubeを使った情報発信は力を入れていきたい。書店員だからこそ語れることはたくさんある。仕入れた本を面白く紹介することができたら、集客にもつながり本も売れる。とはいえ既存の書評系Youtuberとどう差別化するのかは考えないといけない。

あとは本屋そのものに、なんども訪れたくなる仕掛けを用意したい。本屋として月刊誌やフリーペーパーを出すことで、来た人が手ぶらで帰らない仕組みは作れるだろうか。イベントやフェアはどの程度の頻度で、どういう内容をやるべきだろう。ギャラリー併設を活かして、画家・作家を呼ぶことができるだろうか。雑貨やカフェのフードの入れ替えも定期的にやることで「また行きたい」と思ってもらえるようなニュースをコンスタントに発信できるかもしれない。

資金調達でクラウドファンディングをやるのはどうだろう。僕は以前、映画制作やイベント系のクラウドファンディングに関わったことがあるけど、クラファンはうまくやれば、資金調達と同時にマーケティングもできる。とはいえ、コンセプトのないクラファンはダサい。やるならクラファンでなければならない理由、応援した人に大きなメリットがあるようにしたい。本屋で、そのようなクラファンが実現できるだろうか。

などなど、色々アイデアが広がってきたところで、今日はここまで。

noteの記事を一つ描くたび、本屋の解像度が上がってくる。カフェのカウンターに立つ自分、本棚の入れ替えをする自分、客注発送を行う妻の姿が見えてくる。どんどん進んでいこう。


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