東野圭吾『白鳥とコウモリ』|実写映画化も決定した著者本人が認める最高傑作|その残酷な真実に地底の奥底まで気持ちが落ちる
『白夜行』『手紙』『容疑者Xの献身』が好きな方、集合してください。
東野圭吾は比較的ライトな雰囲気の作品やポップな作品も多いですが、こちらは上記のような重く、苦しい小説です。
東野圭吾『白鳥とコウモリ』。
学生の頃に東野圭吾の小説はかなり読んだこともあり、東野圭吾はもういいかな、と思っていたりもしたのですが、本屋のPOPにあった「今後の目標はこの作品を超えることです」という先生の意外にも可愛い字体を見て、やはり買わずにはいられませんでした。
今後の目標はこの作品を超えることです
『秘密』じゃなくて?
『容疑者Xの献身』じゃなくて?
東野圭吾の最高傑作はこれってこと?
ということで、東野圭吾の作家生活35周年記念作品、初の上下巻『白鳥とコウモリ』のあらすじはこちら。
2017年、東京竹芝で善良な弁護士、白石健介の遺体が発見された。 捜査線上に浮かんなだ倉木達郎は、一九八四年に愛知で起きた金融業者殺害事件と繋がりがある人物だった。 そんな中、突然倉木が二つの事件の犯人と自供。事件は解決したと思えたが。 「あなたのお父さんは嘘をついています」。 被害者の娘と加害者の息子は、互いの父の言動に違和感を抱く。
初の上下巻。
『白夜行』とかめちゃくちゃ分厚いので上下巻にしようと思えばいくらでもできた気もしますが、とにかく初の上下巻です。
※ここから先は内容に触れますので、未読の方がいらっしゃったら是非読んでから戻ってきてください!
ちなみに、驚くべきことに、上のあらすじにある 「あなたのお父さんは嘘をついています」のところで上巻が終わります。
いつ言うんだ?
ん?もうすぐ上巻終わりそうだけどまだかな?
「あなたのお父さんは嘘をついています」
言ったー!!!
あ、終わった。
……上巻のラストかい!!!
と、なりました。
あらすじにしっかり上巻のラストまで書いてありましたが、もちろんそんなことは全く関係なく面白いです。
倉木達郎が自白した昔の事件と今回の事件について被害者の娘と加害者の息子が疑問を抱いていくのですが、読んでいるこちらにも「この事件の裏には何かある」という気持ちが沸々と高まり、大きなブラックホールのような暗闇を覗いているような気持ちになります。
被害者の娘と加害者の息子、そして事件を担当している刑事の3人が少しずつ新しい事実を見つけていくのですが、結果たどり着く犯人に私たちは打ちのめされます。
犯人がわかったところで暗澹たる気持ちになり、楽しく読んでいた私のテンションはどーんと地に落ちました。
うわ、犯人そうか。そうなんだ。それが動機で殺しちゃうなんて悲しすぎるな。この子の将来はどうなるんだ……
そんな気持ちで読み進めていると本当の動機が明かされます。これが重い。重すぎる。
え。何言ってんの?本人が言ってんの?
なんなの、それ。
………………。
……頼む、もうやめてくれ。
と思わず心の中で泣きそうになりました。
地まで落ちていた私のテンションは、本当の動機を知ったことで地底の奥底まで落ちました。
ここまで残酷なものを見せてくる必要ある?と正直クレームも入れたくなるレベル。
そうだった。東野圭吾はいつもこちらの予想を裏切り、その上で、より悲しい真実を明らかにしてくるんだった。
心を引き千切るような残酷さ。
暗くて深い、人間の裏側。
最初のわかりやすい動機じゃだめだった?
嘘でもいいよ。あの動機だと信じていたかったよ。
そんな心の中を見せられたら、どうしたらいいかわからないよ。
昔殺された奴は、本当にどうしようもない奴だった。身内でも、そいつの死を悲しまなかった。やっていたことはクズ極まりないし、読んでいるだけでも胸クソ悪い奴だった。
世界に全く必要じゃない、むしろいなくなった方がいい奴だったのに、それでもそいつを殺してしまったところから全ては始まった。
あんなにも最悪な奴だったのに。
あんなにも最悪な奴だったのに、あいつが死んだことで、幸せに生きられたはずの人が死に、その人に関わる人たちも不幸になった。不幸は終わらず伝染し、必死に生きている中でどうしようもない残酷なものを生み出して、更に不幸になる人が増えてしまった。
あんなにも最悪な奴だったのに。
あいつが死んだことはもはや平和に繋がりそうなほどだったのに、それが予期しないところからとんでもない不幸に繋がってしまった。
人を殺すということ。
相手がどんな奴だとしても、人を殺すということ。そこから生まれるかもしれない不幸と、連鎖して膨れ上がっていく罪。

最低な男を殺した男とそれを隠した男。
背負いきれないほどの、償いきれないほどの罪。
そして罰。
そしてそれでも、どこかにあると願いたい希望について考えてしまうラストでした。
おしまい。
東野圭吾の小説ってめちゃくちゃ読みやすいと思うんですけど、こういうライト系の話じゃなくても重たくて暗いシーンが続いても、重くなりすぎないところが特徴ですよね。
『白鳥とコウモリ』の続編的な作品『架空犯』も刊行されています。こちらも気になる…(私は文庫化待ち)
どうでもいいんですけど、この記事書いたの去年の11月なので、何故か3ヶ月近くもあっためました。←意味はないです。
【追記】
『白鳥とコウモリ』実写映画化らしいですね!
松村北斗×今田美桜主演、
監督は『あゝ、荒野』『正欲』の岸善幸、
脚本は『ある男』『愚か者の身分』の向井康介、
という本気の布陣。楽しみ。
