見出し画像

【恋は仕込みのあとで】第4章 「わざと冷たく、わざと優しく」

第4章テーマは、吊り橋効果
【最初は冷たい人が優しくすると、ギャップでより強い好感を得られる】というものです

しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります

それでは、第4章 「ドキドキ作戦、強引すぎた」をお楽しみ下さい

前回のあらすじ

美琴との距離は、確かに縮まった
放課後に並んで歩くことも、自然になった
何気ない話題で笑い合うことも増えた

だけど。
このままじゃ、ダメな気がしていた

「ただの、いい友達」で終わってしまう――そんな不安
俺は、もっと、特別な存在になりたかった

そんなとき、またも心理学の本で見つけたのが、【ゲインロス効果】だった

「最初は冷たい態度を取り、あとから優しくすると、相手は強い好感を抱く」

つまり
ギャップを作れば、普通以上にドキッとさせられるってことだ

俺は考えた。
いつも優しく接していたけど、今日は、あえて違う態度を取ろう
わざと、そっけなく
わざと、冷たく

それで、彼女を……もっと俺に意識させるんだ

──放課後
いつものように美琴が声をかけてきた

「今日も、一緒に帰る?」

その一言に、胸が熱くなった
けど、俺は心を鬼にして、顔をそらした

「……悪い。今日、ちょっと用事あるから」

ぶっきらぼうに言って、歩き出す
振り返らない
振り返ったら、たぶん顔に出る

後ろで、美琴が小さく「そっか……」と呟くのが聞こえた

心が、ギュッと痛んだ
こんなの、俺らしくない
でも、これも全部、彼女のためだ
ゲインロス効果を起こすための作戦だ

……たぶん

そう自分に言い聞かせながら、俺は歩き続けた
まるで、逃げるみたいに

翌日

俺は、朝からそわそわしていた
昨日の冷たい態度が、美琴にどんなふうに響いたのか――
考えれば考えるほど、不安でたまらなかった

(大丈夫だよな……? あれ、ただの嫌な奴になってないよな?)

自己嫌悪を押し殺しながら、登校する

教室に入ると、美琴は自分の席に座って、静かに本を読んでいた
俺に気づいても、視線を上げない

心臓が、嫌な音を立てる
これ……マジでまずいやつかも……

ダメだ
このままじゃ、ゲインロスどころか、完全に関係が壊れる
今すぐ、ギャップを作らなきゃ

俺は、意を決して美琴に近づいた
そして、できるだけ優しい声で呼びかける

「美琴、おはよう」

彼女は、少しだけ驚いた顔をした

「……おはよう」

ぎこちないけれど、返事は返ってきた

よし、ここからだ
俺はさらに、追い打ちをかける

「昨日、急に突き放してごめん。……本当は、用事なんてなかったんだ」

美琴が目を見開いた

「え……?」

「なんか……緊張してたんだ
 美琴と一緒にいると、嬉しいくせに、うまく話せなくなる
 ……変だよな、俺」

俺は頭をかきながら、笑った
精一杯、素直なフリをした

冷静に考えれば
昨日わざと冷たくして、今日いきなり優しくなるなんて、不自然にもほどがある
むしろ、情緒不安定を疑われても仕方ないレベルだ

だけど――美琴は、ふっと微笑んだ

「……変じゃないよ」

その声は、ほんの少しだけ震えていた
けれど、優しかった
いつもの、美琴らしい、あたたかさだった

胸が、じんわりと熱くなる
わざと冷たくして、わざと優しくするなんて――
どう考えても子供じみた作戦だったけれど

今、この瞬間だけは
間違いじゃなかったって、思えた

次章へ


いいなと思ったら応援しよう!