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【恋は仕込みのあとで】第3章 「ドキドキ作戦、強引すぎた」

第3章テーマは、吊り橋効果
【緊張やドキドキを恋愛感情と錯覚しやすくなる現象】というものです

しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります

それでは、第3章 「ドキドキ作戦、強引すぎた」をお楽しみ下さい

前回のあらすじ

春も深まり、放課後の空気に、ほんのり夏の匂いが混じり始めた

美琴との距離は、着実に縮まっていた
購買部で並んだり、秘密を共有したり――
あの頃の「すれ違い作戦」と比べたら、信じられない進歩だ

でも
ここから、もっと深く踏み込みたい
ただのクラスメイトや、友達未満じゃなく
特別な存在になりたい

俺は、またもや心理学の本を開いた
そこに書いてあったのは――【吊り橋効果】

「人は、ドキドキしているときに出会った相手に、恋愛感情を抱きやすい」

なるほど
つまり、ドキドキする体験を、美琴と一緒にすればいいんだな?

計画はすぐに立てた
タイミングよく、町内の商店街で小さな肝試しイベントがあるらしい
夜の廃校を使った、お化け屋敷風のアトラクション

怖がる美琴の隣で、俺がさりげなくリードする――
想像するだけでニヤけそうだ

しかし問題は、どうやって彼女を誘うかだった
普通に考えたら、女の子を肝試しに誘うなんて無理がある
しかも、美琴は大人しいタイプだ
怖がるに決まってる

……だが、ここで引いてはいけない
チャンスを作るためなら、多少の強引さは許されるはずだ

翌日の放課後
俺は、放課後の廊下で美琴を見つけると、迷わず声をかけた

「なあ、今度、面白そうなイベントあるんだ。行ってみない?」

美琴は、少しだけ首を傾げた
警戒している様子は、ない……多分

「どんなイベント?」

「えっと、あの、肝試し的な……廃校でやるやつなんだけど……」

言いながら、自分で無理があるとわかる
だが、後には引けない
ここで引いたら、また普通の関係に戻ってしまう

俺は必死で笑って続けた

「絶対、怖くないって!……たぶん!」

冷静に考えれば、説得力ゼロ
むしろ怖がらせにいっている
でも、それでも、今は押すしかない

美琴は、少しだけ考え込んで、そして――
小さく、頷いた

「……わかった。行ってみる」

その一言に、心臓が跳ねた
やった
これで、ドキドキ作戦、発動だ

夜の廃校は、想像以上に不気味だった
ガタガタと揺れる窓枠、ひび割れた床、かすれた校歌の掲示板

「……やっぱり、ちょっと、怖いかも」

美琴が、俺の袖をきゅっと掴んだ
その手の小ささと温もりに、心臓が跳ねる
いや、違う。これは吊り橋効果を狙っているだけだ
冷静になれ、俺。冷静に……

俺たちは、他の参加者に紛れて、暗い廊下を進んだ
そこかしこに、素人臭いオバケ役が待ち構えている
……だけど、正直、怖い
演出はちゃちでも、雰囲気が圧倒的だ

「キャッ!」

美琴が悲鳴を上げた
手作り感満載の白い布オバケが、曲がり角から飛び出してきた
俺は反射的に美琴の肩を抱いた

「大丈夫、大丈夫! ただの布だから!」

必死に取り繕う俺
だが、抱いた肩越しに伝わる彼女の震えが、なんとも切ない

そして
美琴は、俺にしがみついたまま、顔を上げた

「……ありがと」

小さな声だった
でも、その瞬間、俺たちの距離は、確実に一歩縮まった気がした

その後も、俺たちは廃校を進みながら、何度も小さな悲鳴を上げ、笑い合った
気づけば、美琴はずっと俺の袖を掴んだままだった

イベントが終わり、外に出たとき
夜風が、火照った頬を撫でた

「……楽しかった、かも」

美琴が、照れくさそうに呟く
その言葉に、胸の奥がじわっと温かくなった

作戦成功だ
たとえ、冷静に考えたら――
「わざと怖がらせて恋愛感情を錯覚させる」という
とんでもない姑息な作戦だったとしても

美琴と、少しだけ特別な関係に近づけたことに、間違いはない

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