【騎士様はウザくて面倒だけど、私の大切な人】第5章 「最後の防御、そして誓い」
第5章テーマは、返報性の原理
返報性の原理は【「何かをしてもらったら、お返しをしなくちゃ」と感じる心理的な仕組み】です
しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります
それでは、第5章 「最後の防御、そして誓い」をお楽しみ下さい
前回のあらすじ
――春の風は、どこか無遠慮に背中を押す
卒業してからしばらく経ち、街も私も、少しずつ色を失っていった
「琴音、今日こそ言わせてくれ!」
「……また、何か宣言でもするの?」
「いや、今日は宣言じゃない!告白だ!」
悠馬は、胸を張りすぎているせいで、少し後ろにのけぞって見えた
「……聞くだけは、聞くわ」
「俺は!君を守るためなら何度でも挑む!何度でも倒れて、何度でも立ち上がる!それが、俺のすべてだ!」
「……そう」
言葉を返しながらも、私の声は小さく、風に溶けそうだった
悠馬はそんな私を見つめると、目を輝かせた
「これからも防御は怠らない!防御訓練も続ける!むしろ、今まで以上に強化する!」
「……告白した後くらい、少し落ち着けばいいのに」
「落ち着くわけにはいかん!むしろ今が最大の警戒ポイントだ!」
「……そう」
小さく笑いがこみあげる。呆れるより先に、なぜか胸の奥が少しだけ温かくなった
「琴音、危険はどこにでも潜んでる!君の心の影にも、知らない不安があるはずだ!だから、俺が防ぐ!」
「……私の心の影まで守るの?」
「当たり前だ!俺は全てを守る!心も、体も、日用品も!」
「……日用品?」
「文房具屋で君が選んだシャーペンも、インクも、全部防御範囲内だ!」
私が小さく咳払いをすると、悠馬は背筋を伸ばして構える
「今、何か合図したか!? 敵襲か!?」
「……ただ咳しただけよ」
「よし!呼吸訓練も追加だな!一緒に呼吸法を練習しよう!」
「……もう、好きにしなさい」
心のどこかで、「またか」と思う自分と、なぜか少し安堵する自分が混じっていた
これまでずっと、守ると叫び、走り、構えてきた彼
そして今、告白したあともなお、変わらず「防御」を叫んでいる
――ああ、変わらない人だ
私の胸の奥に、かすかに「何かを返したい」という思いがよぎる
でも、それを言葉にするには、まだ少しだけ、時間が必要だった
――告白の後も、悠馬の「守り」は変わらなかった
むしろ、より強固になった気がする
「琴音、今から防御訓練だ!走るぞ!」
「……え、なんで走るの」
「心と体の防御は連動している!防御強化にはランニングが最適だ!」
「……告白したあとにすることじゃないわよ」
「むしろ今が一番大事だ!気を抜けば一瞬で隙が生まれる!」
私がつぶやくたびに、悠馬は全力で頷き、目を輝かせる
「走るときは、背後は俺が守る!もし足がもつれたら、俺が支える!」
「……そんなに支えられたら、むしろ転ぶわ」
「それでもいい!倒れたら俺が下敷きになる!」
小さく笑った。ああ、本当に変わらない
私は歩みを止め、少しだけ顔を上げる
「……悠馬」
「な、なんだ!? 不安があれば、すぐ報告を!」
「……私も……守られるばかりじゃなくて、守りたいって……ちょっとだけ、思ったの」
「な、なんだと……!?」
「……あなたが前にばかり立つから、後ろから見てると、なんだか……少し寂しいのよ」
悠馬は数秒、呆然とした
それから、突然拳を握りしめて叫んだ
「く、くっ……その言葉だけで、もう100年は戦える!」
「……大げさね」
「よし!今から俺の全防御ノートを渡す!君もこれで守りの知識を共有だ!」
「……いらないわよ、それ」
悠馬は嬉しそうに、ボロボロのノートを抱きかかえて笑う
その姿を見て、心の奥で、ポタリと氷が溶けるような音がした気がした
「これからも、何度でも挑む!そして何度でも防ぐ!防御訓練は一生続く!」
「……ずっとなのね」
「そうだ!永遠にだ!」
私の頬が、ほんの少しだけ緩んだ
ああ、こんなにも面倒で、まっすぐで、バカみたいに一生懸命な人は他にいない
「……じゃあ、私も……少しは鍛えようかしら」
「なに!? 防御訓練に参加する気か!?」
「……一緒に走るくらいなら……」
その瞬間、悠馬は全力で走り出した
「行くぞ!これからは二人分の防御訓練だ!」
「……待って、いきなり全力は無理よ!」
――走る背中を見て、私は思った
この人はきっと、ずっと私を守ろうとするだろう
だけど、今度は私も、少しだけその背中を押してあげたい
それが、私なりの「返事」
それが、私なりの「守る」ということ
以上で、【騎士様はウザくて面倒だけど、私の大切な人】の物語はおしまいです
この物語に登場する恋愛心理学の正しい使い方を知りたい方
以下リンクにて確認できます
↓最後に、第5章のイメージ楽曲と背景画像のトリックアート解説をお楽しみ下さい↓
