見出し画像

【騎士様はウザくて面倒だけど、私の大切な人】第4章 「騎士の告白、涙の武勇伝」

第4章テーマは、自己開示効果
自己開示効果は【自分の内面やプライベートな情報を相手に話すことで、相手からの信頼や好意を得やすくなる心理現象】です

しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります

それでは、第4章 「騎士の告白、涙の武勇伝」をお楽しみ下さい

前回のあらすじ

――卒業して、一か月。桜の花びらが歩道の端に積もる頃、私は文具店でアルバイトを始めた
悠馬はというと……防犯会社に就職したらしい。制服姿は、妙に似合っていた

「琴音!文具店の前、異常なし!」
「……いや、見張らなくていいから」
「ダメだ!ここは重要拠点だ!もし不審者が来たら、俺が即座に確保する!」

店内から見ると、悠馬は入口前の電柱に背をつけ、周囲をきょろきょろと見渡している
バイト仲間が笑いをこらえる声が聞こえてくる

休憩中、外に出ると、悠馬が駆け寄ってきた
「琴音、俺、今日こそ話しておきたいことがある!」
「……また何か変な話?」
「いや!これは俺の秘密……いや、弱さの告白だ!」

そう言うと、悠馬は勢いよく胸を叩いた

「俺、小1のとき、牛乳のストローを刺すのに3分かかったことがある!」
「……は?」
「そして、小2のときには、給食の揚げパンを2秒で落とした!あれは最大の失態だ!」
「……知らないし、どうでもいいし……」

「それだけじゃない!小3の時、校庭の隅にある水飲み場で思い切り頭を打って、3日間たんこぶが引かなかった!」
「……本当に、どうでもいいわね」
「でもこれで、俺の弱さを知っただろ!? 同じ人間だって思えただろ!?」

私は黙って、ペットボトルの水を一口飲んだ

「琴音、進路で悩んでるなら……俺が先に道を作る!俺は君の前を走る!だから、後からゆっくり来ればいい!」
「……もう、進路は決めたわよ。バイトしながら考えるって」
「そうか!でも、心配するな!文具店の警備は完璧にしておく!毎日朝から見回りするから!」

「……そんなにされたら、逆にお客さん減るわよ」
「大丈夫だ!安全第一だから!」

――この頃の私は、会話の間に息を挟むようになっていた
返事はするけど、気持ちが届いているわけじゃない
でも、それでも彼は「届いている」と信じていた

「なあ、琴音……今日は帰りに文具屋の新しいポスター貼るの、手伝ってもいいか?」
「……別に、一人でできるわ」
「いや!手伝うというより、見守るんだ!」

私は返事をせず、そっと視線を外した
だけど、彼の足音が、少しだけ追いかけてきた気がした

――あの日、店の外で悠馬がまた大きな声を上げた

「琴音ー!今日も異常なし!文具店、完璧だ!」
「……そんなに叫ばなくても、見えてるわよ」
「声を出すのは大事だ!存在を示すのは、守護の基本だ!」

私は深くため息をついた。視線を上げると、悠馬が持つノートには「巡回ルート」「安全確認チェックリスト」「琴音観察メモ」……と、意味不明な文字がびっしり書き込まれていた

「なにそれ……」
「おっと、これは機密情報だ!だが、特別に一部だけ見せてやろう!」
「……見たくないけど」

悠馬は誇らしげにページをめくると、「琴音がペンを選ぶ平均時間:約12分」と大きく書かれていた

「……だから何よ」
「つまり、その間に店内の警備を何周できるかを計算してるんだ!実際、今日も3周半できた!」
「……勝手にしてればいいわ」

「よし!次は弱さの追加告白だ!」
「まだあるの……」
「俺、実は納豆を混ぜるとき、数を数えると混乱して止まるんだ!」
「……知らないし、別に言わなくていいわよ」
「でも!これを話すことで、君との距離は1ミリ縮まったはずだ!」

「……むしろ後退してる気がするけど」

そんな調子で、彼は日々「武勇伝」という名のどうでもいい告白を続けていた
私が一歩引けば、一歩前に出る。視線を外せば、必ずそこに入ってくる

ある日、閉店後の文具店前。帰ろうとした私に、悠馬が真剣な顔で言った

「琴音、これからも、ずっと君の前を歩く!俺が道を作る!例えどんなに茨の道でも!」
「……前に行かれると、むしろ邪魔なのよね」
「なら横でもいい!いや、背後でも!あっちでも、こっちでも!」
「……ふふっ」

思わず笑ってしまった自分に驚く。久しぶりに、心の奥がわずかに温かくなったような気がした

「笑ったな!よし、今日は任務達成だ!」
「……もう、帰ったら?」

「帰る途中もパトロールする!文具店から君の家の道まで、全ルート異常なしを確認する!」
「……好きにしなさい」

――卒業して、皆が少しずつ大人になっていく中で
私の時間は止まったように思えていたけれど、彼はいつだって、進んで、笑って、守ろうとしてくれた

そんな彼の背中が、夕焼けに照らされて、不自然に大きく見えたのを、今でも覚えている

次章へ

↓最後に、第4章のイメージ楽曲と背景画像のトリックアート解説をお楽しみ下さい↓


いいなと思ったら応援しよう!