【ゆいちゃんの自由研究】第4章 「期待されれば伸びる?」
第4章テーマは、ピグマリオン効果(Pygmalion Effect)
ピグマリオン効果は【期待をかけられることで、人はその期待に応えるように成長する】というものです
しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります
それでは、第4章 「期待されれば伸びる?」をお楽しみ下さい
前回のあらすじ
私はノートをパタンと開き、机に突き出した
ページの上には大きく書かれた一文
【期待されると人はその通りに成長する】
これこそが、今回の作戦だ
「お兄ちゃん、人ってね、期待されると頑張っちゃうんだよ!」
私が得意げに言うと、お兄ちゃんは真面目な顔で深くうなずいた
「なるほど……それなら、俺が結にいっぱい期待をかければいいんだな」
うわー、また引っかかってる! でもいい。今回は絶対に重荷になるはず! 彼女の笑顔を奪ってやるんだから!
デート当日。私はいつものようにランドセルに双眼鏡を詰め込み、尾行を開始した。二人は図書館で待ち合わせをしていて、静かな読書スペースに腰を下ろしていた
お兄ちゃんは真剣な眼差しで結さんを見つめた
「加賀谷さんなら、この本だって一日で読み切れるよ」
「えっ、一日? 厚さ五センチあるんだけど」
「できるよ、加賀谷さんなら」
結さんは苦笑しながら肩をすくめた
「プレッシャー半端ないんだけど……」
でも、口元は笑っている
私は隅の席から観察ノートに【過剰な期待は嫌になる!】と書き殴った。よし、順調
その後、二人は文具店に立ち寄った。お兄ちゃんは結さんがペンを選ぶのをじっと見て、すかさず言った
「加賀谷さんならこの万年筆で素晴らしい字を書けるよ」
「いやいや、ただのノート用だよ? そんな壮大な期待かけられても!」
結さんは吹き出して笑った
「でも、きっと字も綺麗になる」
真顔で言うお兄ちゃんに、結さんは小さくため息をついた
「……なんかもう先生みたいだね」
そう言いながらも、ペンを手に取る仕草は少し誇らしげに見えた
私は街角のポストの影から必死にメモを取った
【期待されすぎると重荷→逃げ出す】
……のはず。なのに、なんだか嬉しそうにしてる!?
次に二人が向かったのは喫茶店だった。アイスティーを前にして、お兄ちゃんは真剣そのものの声で言った
「加賀谷さんなら、次のテストで100点取れる」
「は、100点!? いや無理でしょ!」
「いや、できる。加賀谷さんなら絶対にできる」
お兄ちゃんは真剣な目をして断言した
結さんは大きく息を吐いた
「プレッシャーで胃が痛くなる~……」
そう言いながらも、頬はほんのり赤い。まんざらでもない様子だった
私はストローの先をかじりながら観察を続ける
【期待=プレッシャー=嫌悪感】
ノートに書き込む私の手が震えた。違う。これは笑顔だ。嫌そうじゃない。むしろ楽しんでる!?
夕方、二人は並んで歩いていた。空は薄紫色に染まり、街灯がぽつりぽつりと灯り始めていた
「加賀谷さんなら、もっと綺麗になれる」
唐突にお兄ちゃんが言った
「……え、今でも十分でしょ?」
「いや、まだまだ。加賀谷さんはもっと輝ける」
結さんは思わず顔を覆った
「……プレッシャー通り越して恥ずかしいよ!」
声は震えていたけれど、その瞳は少し潤んでいるように見えた
私は背後で観察ノートを強く握りしめた
「おかしい……! これじゃ失敗じゃなくて成功してるみたいじゃない!」

街を並んで歩く二人。私は電柱の影に身を潜めながら双眼鏡を構えた
お兄ちゃんは真剣な表情で結さんを見つめる
「加賀谷さんなら、この街一番の人気者になれる」
「え、いきなりスケール大きくない!?」
「本気だよ」
結さんは思わず吹き出した
「……もう笑うしかないんだけど。でも、ありがと」
そう言いながら頬を赤らめていた
私はノートに赤いペンで【過剰な期待=絶対に負担】と書き殴った
そうなるはずだ。なるはずなんだけど……
その後、二人はゲームセンターに立ち寄った。お兄ちゃんは真剣そのものの声で言い放つ
「加賀谷さんなら、このクレーンゲームで一発で景品を取れる!」
「はぁ!? そんなの運だって!」
「いや、結なら絶対できる」
お兄ちゃんは腕を組み、まるで試験官のように見守っている
加賀谷さんさんはハンドルを握りながら、ぷるぷる震えていた
「プレッシャー半端ないって……!」
でも――クレーンは奇跡的に景品をキャッチ。ぬいぐるみがガシャンと落ちてきた瞬間、結さんの目がキラリと輝いた
「やった……! 一発で取れた!」
「ほらな! 加賀谷さんならできると思ってた!」
お兄ちゃんの満面の笑み。結さんは笑いながらぬいぐるみを抱きしめていた
私は観察ノートを思わず閉じた
「えぇぇぇぇ!? 奇跡まで味方してる!?」
帰り道、川沿いを歩く二人の距離は自然と近くなっていた
「結なら、将来どんな夢も叶えられる」
「もぉ……また壮大な期待かけて……」
「俺は本気だ。結は、なんだってできる」
お兄ちゃんは真剣そのものの眼差しで言い切った
結さんはしばし黙り込んだ。夜風に髪を揺らしながら、小さな声で呟いた
「……そんな風に言われると、ちょっと頑張ろうかなって思っちゃうんだよね」
その笑みは、少し照れくさくて、でもどこか誇らしげだった
私は川岸の植え込みから飛び出しそうになるのを必死にこらえた
「違う! これは重荷で逃げ出すはずだったのに!」
家の前に着いた二人。別れ際、お兄ちゃんは最後まで期待をかけ続けた。
「加賀谷さんなら、明日もきっと最高の一日を過ごせる」
「……もう、それなら頑張ってみようかな」
結さんは笑顔で手を振った。その姿はどこか誇らしく輝いて見えた
お兄ちゃんは家に入るなり、ノートを取り出して興奮気味に言った
「やっぱり効果あった! 全部、唯のおかげだ!」
その顔は満面の笑み。私は床に崩れ落ちた
「ちがーう!! 期待は重荷になって逃げるはずだったのにぃ!」
私の絶叫は、夜の静かな住宅街に吸い込まれていった
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↓最後に、第4章のイメージ楽曲をお楽しみ下さい↓
