【君が星に願うなら、僕は君に願う】第4章 「見ないでと言われたら、見たくなる夜」
第4章テーマは、カリギュラ効果(Caligula effect)
カリギュラ効果は【「禁止されると、かえって興味が強くなる」という逆説的な心理現象】です
しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります
それでは、第4章 「見ないでと言われたら、見たくなる夜」をお楽しみ下さい
前回のあらすじ
「……もう、君のことは見ない」
一誠は、ほのかの前で固く拳を握りながら宣言した
ほのかはいつものように空を見上げていたが、その瞳にかすかな揺れがあった
「そう」
それだけを呟くと、再び星を追い始める
「これが正しい…はずだ」
一誠は震える手でノートを閉じ、何度も深呼吸を繰り返す
「見るな、見るな…予定通りだ」
だが、その視線はほのかの小さな背中に釘付けになっていた
「見ちゃだめだ…だめだ…」
言葉とは裏腹に、足はじわじわと彼女の方へにじり寄る
ほのかはランドセル型の星バッグを揺らしながら、笹の下で短冊を撫でている
「今日は風が優しい」
ぽつりとつぶやくその声に、一誠の耳は過剰に反応する
「だめだ、聞くな、見るな…」
自分に言い聞かせるように顔を背けるが、結局指の隙間からチラリと確認してしまう
「いや、もう限界だ…!」
一誠はポケットから、あろうことか小型の双眼鏡を取り出した
「これなら、見ていない…正面じゃないからセーフ…!」
完全にアウトな理屈に自信満々な顔
遠くのベンチに腰かけ、震える手で双眼鏡を構える
「小さな手…星をなぞる指…全部見える…いや、これは予定外だ…!」
息をするたび、胸の奥が熱くなる
「……星は、見ても私は見なくていいのに」
ほのかがふと空気に混じるように呟く
「そうだ! 君は星を見ていればいい、僕は…双眼鏡を通して見ているだけ…!」
声にならないほど小さく言い訳する一誠
「どうして…そんなに頑張って見ないふりをするの?」
ほのかの問いかけに、一誠の双眼鏡がカタリと揺れる
「君のことを…見ないことで強くなれると思った…でも、でも…!」
顔を真っ赤にして、目が泳ぐ
ほのかはそんな一誠を一瞬見つめると、また空に視線を戻した
「風が変わったね」
「風…予定外の風…」
一誠は崩れた呼吸を必死に整え、再び双眼鏡を握りしめる
視界の先で、ほのかの髪がゆっくりと揺れる
その一瞬一瞬に、胸が締め付けられるように痛む
「……なぜ、こんなに…君を……!」
内心の混乱は増すばかり
彼の「理想的アプローチ」は音を立てて崩れ始めていた――
「見てはいけない…はずだ…」
一誠は震える手で双眼鏡を下ろす。だが、視線は勝手にほのかを追っていた
「大丈夫、これは計画だ…いや、観察だ…!」
ブツブツと唱えながら、双眼鏡を鞄にしまう。だが、ポケットから代わりに小型の望遠レンズ付きカメラを取り出してしまう
「これは…証拠資料の収集だ。見てるわけじゃない…見守ってるだけ…」
言い訳になっていない言い訳を口にし、レンズ越しにそっとほのかを追う
「髪…白いワンピース…小さな手…」
息が詰まりそうになるほど真剣な顔つき。しかし、その姿は完全にアウトな不審者だ
ほのかは風に吹かれながら短冊を見つめ、「今日は空が遠いね」とぽつり
「遠い空…遠い…でも、君は…近い…」
頭の中は完全に大混乱
「これじゃ、全然予定通りじゃない…!」
涙目になりながら、カメラのシャッターを押しそうになっては止めるを繰り返す
「見ない…見ない…!」
叫びながらも、レンズを必死に握りしめる姿は、もはやコントのようだ
「どうして…見ないふりができるの?」
ほのかが突然こちらを振り返る
「っ…!」
レンズを落とし、慌てて草むらに飛び込む一誠
全身泥だらけになり、髪には葉っぱが絡まる
「見てない…見てないんだ…!」
地面に伏せる彼の背中が小刻みに震える
「星は見ていいのに、私は見ちゃだめなの?」
ほのかの問いは、無邪気すぎて鋭い
「……僕は…僕は…!」
ようやく顔を上げた一誠の頬には、泥と涙が混じっていた
「君を見てはいけないと思ったんだ…惚れてしまうから…! もう、とっくに、惚れてしまっているんだ…!」
草むらから飛び出し、ついに叫ぶ
ほのかは一瞬だけ目を見開き、すぐにまた無表情に戻った
「やっぱり、星が言ってた通り」
「星が…何を…?」
一誠は震えながら問いかける
「あなたは、見ないと言いながら、一番よく見てた人だって」
ほのかの声は風よりも静かに響く
一誠は力なく笑い、ノートを胸に抱きしめた
「……予定、崩壊だな」
「でも、それでいいんじゃない?」
ほのかが少しだけ唇を動かした、それは彼が初めて見る微笑みだった
夜空には星が瞬き、風に揺れる笹の葉音が、彼の迷いをそっと包み込んだ
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↓最後に、第4章のイメージ楽曲とトリックアートの解説をお楽しみ下さい↓
