【君が星に願うなら、僕は君に願う】第5章 「開いた心は、未完成の星図」
第5章テーマは、セルフディスクロージャー(Self-disclosure)
セルフディスクロージャーは【自分の個人的な情報や感情を相手に打ち明けることで、親密さを深める心理効果】です
しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります
それでは、第5章 「開いた心は、未完成の星図」をお楽しみ下さい
前回のあらすじ
「……もう隠せないみたいだ」
一誠はベンチに座り、泥で汚れたノートを胸に抱きしめた
風が笹の葉を揺らし、短冊が静かに舞う
ほのかは、いつものように夜空を見上げたままだ
「聞いてくれるか、いや…聞いてほしい」
一誠は震える声で切り出すと、ポケットから小さなメモを取り出した
「これは、僕の…いや、僕だけの“予定外”だ」
ほのかは首を少しだけ傾け、その視線が一誠に降り注ぐ
「僕は…正直に言うと、ずっと全てを予定通りに進めることが正義だと思ってた」
彼は何度も深呼吸し、言葉を選ぶように口を動かす
「でも、君に出会って…感情の揺れを感じるようになったんだ。秒単位で予定を組んでいたはずなのに、君の声一つで全てがズレる」
ほのかは静かに瞬きをし、星のような光を瞳に映した
「君が笹を撫でる音、星を指差す仕草…全部が僕を狂わせる。僕は…僕は…」
拳を握り、泥だらけの手で顔を覆った
「もう、予定も正義も、君の前じゃ意味がない」
一誠の声はかすれ、今にも崩れそうだった
ほのかはふっと息を吸い込み、「そうなることは、知っていた」とだけ言った
「知っていた…?」
顔を上げた一誠の頬には、涙と泥が混ざっていた
「星は、全部見てるから」
ほのかは短冊を手に取り、じっと見つめる
「…君は、何者なんだ」
ほのかは空を見たまま、そっと口を開いた
「私は、あのベガから来たの」
静かすぎるその告白に、一誠の心拍が一気に跳ね上がる
「ベガ…?」
「そう、織姫星。…だから私は未来のことが見えるの」
「未来…未来って、そんな…!」
一誠は混乱し、ノートを握りつぶしそうな勢いで胸に抱え込んだ
「予定を信じる君と、未来を信じる私…どっちが正しいのか、星も答えてくれないよ」
ほのかの声は無表情の中に、かすかな震えがあった
「でも、それでいい」
一誠はゆっくりと立ち上がり、胸を張った
「予定外の感情に、僕は…僕自身を賭ける」
その言葉に、ほのかの目がわずかに潤んだように見えた
「予定外…予定外…」
一誠はつぶやきながら、崩れかけたノートを抱きしめ、ふらふらと前に出る
「僕は…ずっと、正しさで人を守ると信じていた。でも…君の前じゃ、その“正しさ”が全部壊れるんだ!」
震える手で自分の制服の襟を引っ張り、ボタンを一つ外す
「まさか…制服を…?」
ほのかはわずかに目を丸くした
「これは、正義の象徴だった。でも今はただの…ただの、厚い布だ!」
一誠は袖をバサリと振り、完全にコントのような動きをする
「待って、それは別に脱がなくても…」
ほのかが無表情のまま、袖をちょんとつまむ
「だめだ! これも予定外の証拠だ! 君に見せなければ意味がない!」
一誠は真剣な目でほのかを見つめ、半脱ぎのまま胸にノートを叩きつける
「ここに全部書いてあるんだ…! 君に会ってから、毎日が予定外で、毎秒が想定外で…!」
ノートを開くと、そこには「予定外」「星」「君」の文字が繰り返し殴り書きされていた
「…なんか、星の軌道図みたいだね」
ほのかは小さく笑った。その瞬間、一誠の目が見開かれる
「い、今…笑った…?」
「……星も笑ってるから」
ほのかは目を細め、星を指差した
「君のその笑顔…それだけで、もう十分だ…!」
一誠は顔を赤くしながら、制服を直そうとして袖が引っかかる
「ぐ、ぐぬぬ…予定外すぎる!」
ほのかがそっと近寄り、袖を直してあげる
「ありがとう…」
「そうなることも、知ってたよ」
一誠は再びノートを胸に抱き、深く息を吸う
「君は未来を信じて、僕は計画を信じてきた。でも…今だけは、同じ空を見ていられる気がする」
ほのかはそっと首をかしげ、空を見上げる
「ベガは、織姫星。離れていても、年に一度は会えるんだよ」
「…だったら僕は、毎日でも会いに行く!」
大真面目な顔で言い切る一誠
「そんなに来なくていいのに…」
ほのかは少し困ったように笑った
一誠は頭をかきながら、「予定外、また更新だな」と笑った
夜空には、二人の言葉を聞くかのように小さな流れ星が光った
「願いごと、した?」
「もう、叶ったよ」
無表情な彼女の瞳に、一瞬だけ確かな輝きが宿った――
以上で、【君が星に願うなら、僕は君に願う】の物語はおしまいです
この物語に登場する恋愛心理学の正しい使い方を知りたい方
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↓最後に、第5章のイメージ楽曲とトリックアートの解説をお楽しみ下さい↓
