【ファ〇チキを送ってくれ】第1章 「観測不能の矛盾存在」
第1章テーマは、情動予測誤差増幅(Affective Prediction Error Amplification)
情動予測誤差増幅は【予想外の感情ほど強く残りやすい】というものです
しかし、心理学に沿いながらも「冷静に考えるとおかしい行動」になる場合もあります
それでは、第1章 「観測不能の矛盾存在」をイメージ楽曲と共にお楽しみ下さい
↓第1章のイメージ楽曲↓
前回のあらすじ
昼の公園に着いた時点で、私はもう負けている気がする
なぜなら、白詰さん……いや、ゼフィリアは既にそこにいるからだ
待ち合わせなどしていない
時間も決めていない
なのに……いる
ベンチに座り、空を見上げているその姿は……
まるで『最初からそこにあった物体』のように自然だった
「遅い。既に位相(フェーズ)は揺らいでいる」
開口一番それである
「すみません、その……位相(フェーズ)?って何ですか?」
「説明は不要だ。汝にはまだ観測権限がない」
いや、観測権限って何ですかね……
聞いた私が悪かったと判断し、私はそのまま隣に座った
……なぜ私は普通に座っているのだろうか?
少し前まで、この人と関わらない方がいいと判断していたはずだ
合理的に考えれば、関係を断つのが最適解だ
……まあ、いいか
私はすでに、その選択肢を捨てている
白詰さん……いや、ゼフィリアは立ち上がり、周囲をゆっくりと見渡した
「この周辺に、微弱な残滓(ざんし)がある」
「それ、気のせいじゃないですか?」
「気のせいで済むなら、世界はもっと単純だ」
無駄にかっこいい言い方をされると、反論が難しい
いや、普通に気のせいだと思うんですけどね
彼女は芝生の端を指でなぞったり
意味ありげに空を見上げたりしている
客観的に見れば、ただの公園散歩である
「汝はまだ仮認定の同士だ。過度な接近は許可していない」
突然そんなことを言われた
「……はあ」
距離を取れ、ということらしい
私は一応、数十センチほどベンチの端にずれた
その直後だった
ゼフィリアが、私のすぐ隣に座った
距離感……ゼロですね
『……いや、今の宣言なんだったんですかね……』
私は内心で呟く
声に出すと負けな気がしたのでやめた
気づけば、私はポケットからファ〇チキを取り出していた
理由は特にない
いや、あるにはあるのだが、考えない方が精神衛生上よろしい
「それは供物(くもつ)か?」
「違います。昼食です」
「……ふむ」
ゼフィリアはじっとそれを見つめた
嫌な予感がする
次の瞬間、彼女は何の躊躇もなく、私の手から1つを奪い取った
あまりにも自然な動作だった
「……悪くない」
普通の感想である
「距離取るんじゃなかったんですか?」
返事はなかった
無視である
……まあ、いいか
『そこに在るが、そこには居ない』
頭の中で、セラフィム様の声がした
「……何ですかそれ」
小声で返す
「重なり(オーバーラップ)が発生しているな」
隣から、ゼフィリアの声がする
私は固まった
「いや今の、タイミングおかしくないですか?」
「何がだ」
「いえ、何でもありません」
完全に無関係な会話のはずなのに、妙に一致しているように聞こえる
偶然だとしても、気持ちが悪い
……いや、偶然でしょう
そういう事にしておきましょう
「次の地点へ移動する」
突然、ゼフィリアが立ち上がった
「次の地点って……どこですか?」
「決まっている。“次”だ」
説明はなかった
彼女はそのまま歩き出す
私は、軽くため息をついた
……帰るという選択肢もある
ここで関係を切るのが、最も合理的だ
だが……
「……まあ、いいか」
私は立ち上がり、その後ろを追った

白詰さん——いや、ゼフィリアの後ろを追って歩いているうちに、気づけば場所は商店街に変わっていた
昼下がりの人通りはそこそこ多い
買い物袋を提げた人や、学生らしき集団が行き交っている
その中で、ゼフィリアだけが妙に浮いていた
「この領域は干渉(インターフェア)が多い……注意しろ」
「はいはい」
適当に返す
正直、ただの商店街である
危険要素は、強いて言うなら夕方の特売くらいだろう
だが、彼女は本気だ
人の流れを避けるように動き、時折、振り返って周囲を確認している
……いや、普通に目立ってますよそれ
その瞬間だった
ぐいっと手を引かれた
「ちょっと」
反射的に声が出る
すぐに手は離された
「干渉(インターフェア)を避けただけだ」
「……それ、説明になってませんよね?」
彼女は答えない
いや、答える気がないのだろう
……まあ、いいか
結果的に人の流れは避けられたし、合理的ではある
でも……手を掴む必要はなかったと思いますけどね?
そのまま、並んで歩く
ゼフィリアは前を見たまま言った
「現時点で、汝の適合率(フィットレート)は不明だ」
「そうですか」
突き放すような言い方である
なら距離を取ればいいのに、彼女は私のすぐ横を歩いている
しかも、私の歩幅に合わせて
『……距離取る気、ゼロですよね……』
私は内心で呟く
言ったところで意味がないことは、もう学習している
しばらく歩いていると、少しだけ疲労を感じた
大した距離ではないはずなのに、妙に消耗する
きっと……精神的なものだろう
そのときだった
ゼフィリアが、ほんの少しだけ前に出た
「……無理しないで下さい」
小さい声だった
一瞬、聞き間違いかと思った
「今、普通のこと言いましたよね?依子さん」
「依子ではない!ゼフィリアだ……そして、それは気のせいだ」
即座に否定された
いや、絶対今、普通のこと言いましたよね
……まあ、いいか
気のせいでも何でも、歩きやすくなったのは事実だ
『観測は進んでいる』
頭の中で、セラフィム様の声がした
「何がですか……」
ぼそっと返す
「停滞(スタグネーション)はしていない。進行(プログレス)は正常だ」
隣から、またゼフィリアの声
私は軽く目を閉じた
「……いや、会話成立してる風なの怖いんですけど」
「何か言ったか?」
「いえ、何も」
完全に別件のはずなのに、妙に噛み合っているように聞こえる
この現象に名前を付けるとしたら……
たぶん“嫌な偶然”だ
……いや、偶然でしょう
そういう事にしておきましょう
気づけば、私たちはまた公園に戻っていた
夕方の光が、昼とは違う色をしている
「本日の探索はここまでだ」
ゼフィリアが言う
「何も見つかってませんけどね」
「それは結果に過ぎない」
意味が分からない
だが、なぜか納得してしまう自分がいるのが腹立たしい
「汝はまだ“適合未確認(アンディファインド)”だ」
彼女はそう言った
つまり、関係は認めないということらしい
「そうですか」
私は軽く頷く
それが一番、合理的な距離感だろう
少しだけ、間が空いた
「……だが、明日も来い」
「命令ですか?」
「違う。これは……」
ゼフィリアは少しだけ言葉を止めた
そして……
「……継続(コンティニュエーション)だ」
そう言った
距離を取るのか、詰めるのか
正直、どっちなんですかね
私は小さく息を吐く
「まあ……明日も来ますから問題ありませんね」
次章へ
このシナリオは共同マガジン初参加に伴い
自己紹介代わりのオリジナル小説です
参加共同マガジンはこちら……皆様良作品なので必見です
アカリウム|みんなの創作が泳ぐ場所🐟️
【一緒に創ろう】シュンの共同運営マガジン
トランスミッション
【共同運営マガジン】頑張る隊
最後に、他の迷言作品は下記リンクより……興味がある方は見て頂けるとありがたいです
