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【聖夜までに恋をひとつ】第1章 「氷点下の論理と恋の確率」

第1章のヒロインは、氷室 雪(ひむろ ゆき)です

このシナリオはクリスマスの週に書く恋愛シナリオのメインヒロインを決める為の企画シナリオで、各章の❤の数にてメインヒロインを決める予定です
スキの対象は以下の4通りです

各章のヒロインの話の❤の数
各章のイメージ楽曲❤の数(SoundCloud内)
各章のX投稿❤の数(#迷言さんの小説紹介内)
各章のX投稿❤の数(#迷言さんの楽曲紹介内)

それでは、第1章 「氷点下の論理と恋の確率」をお楽しみ下さい

序章おさらい

「今日のあなたは…面白いですね」

その言葉が落ちた瞬間、空気が少しだけ冷えた気がした
いや、気のせいだ。冬だし。そういう季節だし
そう思いたかった

けれど目の前の先輩―氷室雪は、冗談じゃない雰囲気で俺を見つめていた―

「今日のあなたの“恋愛成功率”、42%に下がってました」
「……は?」

え、何その通知。俺そんなアプリ入れた覚えないけど?

氷室先輩は表情ひとつ変えないまま、手に持った黒表紙のノートを開いた
中にはびっしり書き込まれた文字と数字
そしてよくわからない折れ線グラフ

絶対授業ノートじゃない。というか俺の名前あるよなそれ

「昨日までは48%だったんです。ですが――」

先輩はページをめくり、ペン先をある部分にトントンと当てる

「朝、通学路で私と目が合った瞬間、あなたの視線が揺れました
 その反応値が、変動として記録されています」
「反応値……?」
「ええ。呼吸、視線、まばたきの速度。全部」
「俺観察されてた!?」

俺が驚くと、先輩は首をかしげた

「当然です。観察は基本ですから」
「いやその“当然”が怖いんですよ!」

声が少し裏返った
でも先輩はまったく揺れない
氷でできた人間って、たぶんこういうのを言うんだろう

「天ヶ瀬くん」
「……はい」
「動かないでください。距離が測れません」
「距離って俺そんな動いた!?」

気づけば先輩の顔が、めちゃくちゃ近かった
呼吸したら前髪触れそうな距離
いや、近い。距離ゼロ。個人情報保護って知ってます?

青い瞳が、まっすぐ俺を捉える
……この距離で見られると、さすがに心臓うるさい

「やっぱり、今日の数値は不安定ですね」

先輩が小さく呟いた
その声が、驚くほど柔らかかった気がして
一瞬だけ息が止まった

けれど次の瞬間

「データが歪むので、しばらく他の女子と喋らないほうがいいです」
「いやいやいや待ってください!?
 俺の人間関係が突然実験条件で制限され始めたんですけど!?」

「いえ、強制ではありません。あくまで“推奨”です」
「言い方が完全に研究所!」

先輩は淡々とノートを閉じた
その仕草がなぜか丁寧で綺麗で、文句言いづらいのが腹立つ

「私、ひとつ信じていることがあります」

急に声の温度が変わった
ふざけ半分の空気じゃない
思わず息を呑む

「恋は―統計と再現性で証明できる―と思っているんです」

その言葉は淡々としているのに、なぜかまっすぐ響いた

先輩はほんのわずか、視線を俺から外した
そして、低い声で続ける

「天ヶ瀬くん」
「……はい」
「あなたは、その答えに近い……気がするんです」

風が吹いた。銀髪が揺れた

その横顔が、やけに寂しそうに見えたのは―気のせいだろうか―

俺は言葉を返せなかった
返せる言葉を持ってなかった

でも、胸のどこかが静かに揺れたのは確かだ

(……なんだよそれ)

ふざけてるわけじゃない
からかってるわけでもない
むしろ―真剣すぎる―

そう思った瞬間、少しだけ笑いそうになった
先輩の行動全部「変」なのに、全部「本気」だから、余計にずるい

そして―気づきたくないけど、俺はもう気づいている―

(この先絶対めんどくさい。……でも、目が離せない)

沈黙が落ちた
俺が何か返す前に、氷室先輩は再びノートを開き、ペン先を走らせ始める

「……なるほど。やはり予測通りでした」
「何がですか」
「あなた、今“驚きと困惑と少しの照れ”が混ざった顔をしていました」
「ちょっと待って。それカテゴリとして存在するんですか?」
「ええ、あなた専用です」
「いや俺専用!?」

先輩はページの端に小さく文字を書き足す
眉ひとつ動かさないくせに、ペンの動きだけ妙に勢いがある

「……ふむ。面白いですね」
「その“面白い”って褒め言葉です?」
「不明です。ですが興味深いという意味では肯定的です」
「翻訳してもわからない!」

俺のツッコミを受け止めることなく、先輩はノートを閉じた
そしてまた、無駄に近い距離で俺の正面に立つ

「天ヶ瀬くん」
「……はい、もうなんか嫌な予感しかしない」
「協力してほしいことがあります」
「ほらきた」
「簡単です。―少し、歩きましょう―」
「歩くだけ?」

「その反応含めて、歩きながら観察します」
「観察って堂々と言う先輩すごいな!?隠さないんですね!?」
「隠した方がいいですか?」
「それ聞く時点で隠す気ゼロですよね!?」

ただ歩くだけ……と言われたが、実際は違った
先輩は横に並ぶと、まったく同じ歩幅で歩こうとしてくる

俺の足元をじっと見て、つぶやく

「……歩幅、揃えたいですね」
「どんなこだわり!?」
「恋人同士は、歩幅が自然に重なると聞いたことがあります」
「いや、それ参考にしてる情報ピンポイントすぎて逆に怖いんですけど」

先輩は数秒沈黙したあと、小さくうなずいた

「……なるほど。私、間違ってますね」
「お、珍しい反省モード?」
「歩幅は揃えるものではなく―揃ってしまうもの、なんですね―」
「え、解釈急にエモい!」

先輩は少しだけ目を伏せた
銀髪がさらりと揺れ、薄い笑みがほんの少しだけ浮かぶ

「……勝手に揃ってくれる日が来るなら、いいですね」

声は小さいのに、その言葉だけ妙に胸に残った

返事ができない俺を横目に、先輩は歩みを止めた
視線がまっすぐ俺に向けられる

「ひとつ、確認してもいいですか」
「……なんですか」
「今日のあなたは、他の女子と話すつもりですか?」
「いや、なんで調査形式なんですか」
「答えてください」
「聞き方に圧がある!」

けれど先輩の瞳は、いつも通りの氷みたいな無表情で
ほんの少しだけ揺れているように見えた

「……話しますよ。普通に。俺、社会性のあるタイプなので」
「……そうですか」

短く返したその声は、どこか沈んでいた
聞き間違いかもしれない
でも、それが妙に刺さった

「べつに……禁止じゃないですから」
「禁止する気だったんですか!?」
「……いえ。そうではありません。
 ただ――データとして、少し……嫌でした」
「はい今さらっと本音出ましたよね!?」

先輩はハッとしたように視線を逸らし、そっぽを向いた

「……訂正します。今のは分析ミスです」
「分析に感情混ざった時点で失敗してますよ!?」
「……天ヶ瀬くん」

呼ばれ、思わず身構える
先輩はゆっくり俺の方へ向きなおり、静かに言った

「あなた、反則です」
「いや俺まだ何もしてないですよね!?むしろずっと振り回されてる側ですよね!?」
「そうです。……だから反則なんです」

意味はわからない
けれど、その声はほんの少しだけ震えていた

その瞬間―俺は、なぜか息を呑んだ―
先輩はすぐに表情を戻し、ノートを閉じる

「今日はこれで終わりです」
「え、観察終了?」
「ええ。充分収穫がありました」
「俺の平和と引き換えにですよね……?」
「また、明日も協力してください」
「いや決定事項みたいに言った!」

先輩は小さく会釈して歩き出す
銀髪が冬の光に溶けていく

遠ざかる背中を見ながら俺は思う

(……先輩、やっぱり変だ)

でも、ほんの少しだけ―目が離せなかった―

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↓最後に、氷室 雪のイメージ楽曲をお楽しみ下さい↓


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