普通の夫婦 ― 夫の話 ―ーChatGPT先生と作る短編小説ー
迷言です
今回は、【ChatGPT先生と作る短編小説】
テーマは、とある夫婦の逆転の話
今回は、夫目線で話を進めていきます
妻目線の話はこちら
では本編をお楽しみ下さい

第1章:元の世界の日常
朝の食卓には、いつもの匂いが漂っていた
味噌汁の湯気と焼き魚の香り。整った食卓。静かな家
俺は新聞を広げながら箸を取った
向かいでは、美咲が少し緊張した様子で味噌汁をよそっている
エプロン姿のまま、俺の前に椀を置いた
俺は一口すすって、思わず言った
「味噌汁、少し薄いな」
美咲の肩がぴくりと動いた
「す、すみません。すぐ作り直します」
慌てて椀を取ろうとするのを、俺は軽く手で止めた
「いいよ、そこまでしなくて。たださ、こういうのはちゃんとした方がいい」
怒っているわけじゃない。むしろ、教えているつもりだった
「家を守るのが君の仕事なんだから、そこはきっちりやらないと」
美咲は小さく頷いた
「……はい」
その声はいつも通り穏やかで、反論の気配はない
俺は再び新聞に目を落とした
自分は仕事で戦っている
家庭は妻が守る
それが自然な分担だ
そう思っている
俺は顔を上げて言った
「君は外で働く必要なんてないんだよ」
美咲が少しだけ目を上げる
「俺が稼ぐからさ。家をちゃんと守ってくれればいい」
美咲は一瞬だけ何か言いかけて、それから微笑んだ
「……そうですね」
ほんの少し寂しそうな笑顔だった気もするが、俺は深く考えなかった
会社では、俺はそれなりに評価されている
営業成績は悪くないし、上司からも期待されている
昼休み、同僚とコーヒーを飲みながら雑談していると、ふと聞かれた
「高瀬んとこ、奥さん専業主婦なんだって?」
俺は頷いた
「まあな。その方が家庭も安定する」
同僚は少し苦笑した
「今どき珍しいよな」
俺は肩をすくめた
「普通が一番だろ」
男が稼ぐ
女が家庭を守る
それが一番合理的だと、俺は本気で思っている
同僚はそれ以上何も言わなかったが、なぜか少し困ったような顔をしていた
その夜
食事のあと、美咲が珍しく少し遠慮がちに話しかけてきた
「正紀さん」
「ん?」
「もし……私も働きたいって言ったら、どう思いますか?」
思わず箸が止まった
「働く?」
「はい。もし、ですけど……」
俺は思わず笑ってしまった
「君が?」
悪気はなかった
本当に想像できなかっただけだ
美咲は少し困ったように笑っている
俺はやさしく言った
「無理する必要ないよ」
そして続けた
「君は家庭を守る方が向いてる」
しばらく沈黙が落ちた
やがて美咲は小さく頷いた
「……そうですね」
それ以上、何も言わなかった
俺は風呂に入りながら考える
美咲は優しい
家庭も安定している
仕事も順調だ
何の問題もない
だから俺は思う
これが一番いい形だ
「普通が一番だろ」
そう呟く
その夜、布団に入ると美咲がそっと腕に寄り添ってきた
俺はそれを自然に受け入れて、目を閉じる
これが普通の夫婦だ
俺はそう信じていた
翌日は休日だった
二人で近くの街まで出かけることにした
昼の街は穏やかで、特に変わったこともない
交差点で信号を待ちながら、ふと思う
俺は恵まれている
仕事も順調だし、家庭も安定している
その瞬間だった
視界が、ふっと揺れた
軽いめまいのような感覚
思わず眉をひそめる
「正紀さん?」
隣で美咲が心配そうに覗き込む
「大丈夫ですか?」
俺は苦笑した
「大丈夫。少し立ちくらみだ」
ちょうどその時、信号が青に変わった
俺たちは歩き出す
いつもと同じ日常の中で
ただ――
その一歩が、俺たちの人生を、静かに変えることになるとは
その時の俺はまだ、知らなかった

第2章:世界が自分を拒絶している
朝の電車は、いつもと同じ混み具合のはずだった
だが、その空気にはどうにも言葉にしづらい違和感があった
つり革につかまりながら周囲を見回すと、まず目に入ったのは男たちだったきれいに整えた髪。薄く整えられた化粧。耳元の小さなアクセサリー
しかも、履いているのは華やかなスカートだ
思わず眉をひそめる
反対に、女性たちはほとんど化粧もしていない
シンプルなスーツ姿で、実用的な格好ばかりだ
俺は小さく呟いた
「最近の若い男は派手だな」
自分はいつも通りのスーツだ
もちろん化粧なんてしていない
何人かの視線を感じた気がしたが、気のせいだろうと思ってやり過ごした
会社のビルに入ると、さらに違和感は増した
受付に座っているのは男性だった
しかも、よく見ると俺の後輩だ
「おはようございます、高瀬さん」
丁寧に頭を下げる姿に、思わず立ち止まる
「……お前、受付?」
「はい?」
後輩は不思議そうな顔をする
訳が分からないまま部署に向かうと、さらに驚く光景が待っていた
部長の席に座っているのは、見知らぬ女性だった
女性は俺を見るなり、にやりと笑う
「へえ、高瀬くん。今日もスーツ似合ってるじゃない」
妙に品定めするような視線だった
俺は戸惑いながら席に向かう
すると事務の女の子が机に座っているのが見えた
いつものように声をかける
「これ、先にまとめておいてくれ」
書類を渡すと、彼女は眉をひそめた
「何で私がそんな事しないといけないの?」
俺は一瞬意味が分からなかった
「……は?」
「事務は貴方でしょ」
その言葉に、頭が真っ白になる
そう、自分と彼女の立場が、完全に逆転していた
訳が分からないまま、俺は元の彼女のデスクの方へ歩いた
そこには別の男性社員が座っている
しかも全員、化粧をしていた
髪も整えられ、スカートタイプの事務服を着ている
俺だけが明らかに浮いていた
同僚の男が声をかけてくる
「正紀さん、何してるんですか?」
「え?」
「早く着替えて下さい。あと今日メイクしてないんですか?」
俺は言葉を失った
「……え?」
「男性なんですから、もう少し身だしなみ気にしないと」
苛立ちが込み上げる
「男が化粧なんて必要ないだろ」
その瞬間、事務室の空気がぴたりと止まった
しばらくして、女性上司に呼び出された
「高瀬さん」
鋭い声だった
「仕事が遅いですよ」
「普通にやってますけど」
そう答えると、彼女は呆れたように肩をすくめる
「これだから男性は」
俺は思わず聞き返す
「どういう意味ですか?」
彼女は軽く言った
「男性は現場では使えないの。大人しくお茶くみでもしてればいいのよ」
言葉が出なかった
夜、家に帰ると、美咲がいつものように迎えてくれた
「おかえりなさい」
その声に少しだけほっとする
俺は椅子に座りながら言った
「今日、おかしいことばかりだった」
「何がですか?」
「部下が上司になってたんだ」
美咲は驚いた顔をする
「え?」
「しかもさ、男性は現場では使えないって言うんだ」
愚痴をこぼすと、美咲は黙って聞いてくれた
何も言わず、ただ静かに
それから数日
会社に行くたびに違和感は増していった
街でも妙な視線を感じる
理由は分からない
男なのに化粧していない
男なのに強気
男なのに主張する
だが俺はそんなことに気付いていなかった
「最近の社会は変だ」
そう思うだけだった
ある日、上司がふと聞いてきた
「奥さん何の仕事してたっけ?」
俺は答える
「専業主婦です」
上司は驚いた顔をした
「え?」
少し沈黙が流れる
そして彼女は言った
「……奥さん病気で働けないとか?」
俺は笑って答えた
「男が稼ぐ方が家庭は安定するんですよ」
その瞬間
部屋が静まり返った
誰も何も言わない
ただ、冷たい空気だけが残る
俺はまだ知らなかった
この世界では―その言葉が、とても傲慢な言葉だということを―

第3章:崩れていく立場
ある夜、夕食のあとで美咲が少し遠慮がちに口を開いた
「正紀さん」
「ん?」
「少し働いてみてもいいでしょうか?」
思わず手が止まった
「急にどうした」
美咲は困ったように笑う
「家にいるだけだと、少し不安で」
俺は反射的に言っていた
「俺が働いてるんだから必要ないだろ」
だが美咲は引き下がらなかった
「少しだけです」
その言い方は穏やかだったが、妙に真剣だった
俺は少し黙る
最近、会社の状況はよくない
以前より稼ぎは減り、出世の話も遠のいた
考えた末、ため息をつく
「まあ……短時間なら」
そう言うしかなかった
数週間後、美咲は働き始めた
最初はパートだった
だが、すぐに職場で評価され始めた
仕事が丁寧
判断が早い
人との調整がうまい
ある日、美咲が言った
「上司から言われたんです」
「何を?」
「正社員になりませんか、って」
俺は思わず顔を上げた
「……は?」
美咲も驚いているようだった
「まだ始めたばかりなのに」
だが会社は本気らしい
俺はうまく言葉を返せなかった
一方、会社では俺の立場が少しずつ変わっていった
評価面談の日、女性の上司が書類を見ながら言う
「最近、奥さんも仕事に復帰したんだって?」
「ええ」
上司は淡々と続けた
「無理に働かなくてもいいんじゃない?」
意味が分からず、俺は黙った
さらに彼女は言う
「正紀さんも、もう三十過ぎてるし若くないんですよ」
苛立ちが胸の奥で膨らむ
その日の昼、後輩の男が化粧道具を取り出しながら言った
「正紀さん、メイク教えますよ」
「……いらない」
「いやいや」
彼は笑った
「おじさんのスッピンなんて醜いだけですよ」
思わず顔が引きつる
「必要ない」
そう言って席を立った
だが……
評価
社会の空気
周囲の視線
それらが、少しずつ俺を追い詰めていった
ある日
洗面所の鏡の前に立つ
机に置かれた化粧道具を、俺はしばらく見つめていた
そして
初めて、顔に触れる
ほんの薄く
その瞬間、胸の奥に強い屈辱が走った
家では、美咲の様子が少しずつ変わっていた
仕事の話をするようになった
自分の意見を言うようになった
そして、前より自信を持っている
俺はそれを見て、どこか落ち着かない気持ちになる
だが美咲は、俺を責めたりはしない
ただ自然に、強くなっていくだけだった
ある日、美咲が言った
「昇進の話をもらいました」
思わず聞き返す
「早すぎないか?」
美咲は少し笑う
「そうかもしれません」
だが会社は評価しているらしい
俺は嬉しいはずなのに、胸の奥がざわついた
気がつくと、生活も変わっていた
俺の帰宅は早くなり、美咲は遅くなる
自然と、俺が料理をし洗濯もする
最初は「手伝い」のつもりだった
だが少しずつ、それが当たり前になっていった
ある夜、ふと聞く
「最近忙しそうだな」
「ええ、少し」
「体に気をつけろよ」
そう言うと、美咲は微笑んだ
そして言った
「家のこと、ありがとう」
その言葉を聞いた瞬間
胸の奥に、言葉にできない感情が広がった
誇りではない
どこか、小さな敗北感のようなものだった
夜
俺はキッチンに立っていた
味噌汁を作る
味を確かめるため、少しだけすすった
ふと、昔のことを思い出す
「味噌汁、少し薄いな」
あの時、自分が言った言葉
俺はもう一度味を見る
そして小さく呟いた
「……こんなもんだろ」
湯気の向こうで、自分の背中が少しだけ小さく見えた

第4章:数年後
数年が過ぎた
時間というものは不思議なもので、最初は違和感だらけだった生活も、いつの間にか当たり前の形になっていた
今の我が家は、いつもきれいに整っている
床には埃一つなく、洗濯物はきちんと畳まれ、食器は静かに棚に並んでいる。夕方になると、台所には味噌の香りが漂う
それらを整えているのは……俺だ
高瀬正紀
かつては商社の営業でエースと呼ばれた男
今は―専業主夫だ―
料理をする
洗濯をする
掃除をする
家のことはすべて俺がやっている
そして、それはもう特別なことではない
この世界では、それが普通だからだ
玄関の鍵が回る音がする
俺は手を拭いて、廊下に出る
「おかえりなさい」
美咲が靴を脱ぎながら言う
「ああ」
昔とは違う、短く強い声だ
スーツ姿のままリビングに入ると、ソファにどさりと腰を下ろす
彼女は今、会社の管理職になっている。帰宅はいつも遅い
仕事の話を聞くこともあるが、俺にはあまり理解できない内容も多い
それでも俺は、ただ静かに頷く
昔の俺は、もっと違う人間だった
強気で、自信家で、何でも主導する性格だった
だが今は違う
俺の言葉遣いは丁寧になり、声も少し小さくなった
美咲と話すとき、無意識に背を少し丸めてしまう
それは―昔の美咲に、よく似ている―
「まだ料理できてないのか?」
ソファから美咲の声が飛ぶ
俺は慌てて答える
「すみません、すぐに用意します」
怒りはない
むしろ、それが自然だと思っている自分がいる
夕食の席
美咲が味噌汁を一口飲む
そして眉を少しだけ動かした
「薄いな」
その言葉を聞いた瞬間、俺は立ち上がっていた
「申し訳ありません」
小さく頭を下げる
「すぐ作り直します」
その姿は、きっと昔の美咲と同じなのだろう
キッチンに戻る
鍋に味噌を溶きながら、俺はふと思い出す
昔、自分が言った言葉。
「味噌汁、少し薄いな」
そしてもう一つ
「家を守るのが君の仕事なんだから、そこはきっちりやらないと」
鍋の中で、味噌がゆっくり溶けていく
あの時
美咲は、どんな気持ちだったのだろう
作り直した味噌汁をテーブルに置くと、美咲はソファに座ったまま言った
「男は家庭守ってる方が向いてる」
軽い調子の言葉だった
「お前も外で働くより、家事の方が向いてるよ」
俺は小さく頷く
「そうかもしれません」
声は穏やかだった
もう分かっている
この世界では、今の形が普通だ
男が家を守り、女が外で働く
それが当たり前
そして
昔、自分が言っていた言葉がどれほど残酷だったのかも、今なら理解できる
夜
美咲は先に眠った
俺はその隣で静かに横になる
天井を見つめながら、昔の自分を思い出す
守る側だった俺
今は、守られる側だ
それでも、俺は思う
これが、この世界の……普通の夫婦なのだから

