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第6章『初陣』第5節:本命は誰だ【ケンタウルスストーリー】

デモレース第2戦
舞台は京都競馬場・1200メートル

前回の東京2400メートルとはまるで違う

長距離なら多少のミスは取り返せる
だが短距離は違う

一つの判断
一つの仕掛け
それだけで勝負が決まる

私はゲートの中で静かに息を整えた

(前回のような立て直しは難しいでしょう)
(最初から集中しなければなりません)

周囲を見れば、各チームの選手達も真剣な表情を浮かべている

そしてその少し前方
ランは相変わらず落ち着いていた

緊張している様子はない
少しだけ羨ましい

一方その頃

ネクシアードが静かにチームへ確認を行っていた
ネクシアード
「警戒対象はヴァイスノヴァです」
ネクシアード
「前走終盤の伸びは無視できません」
ヴァルネス
「……了解」
クロウヴァ
「ランもいますね」
ネクシアード
「ええ」
ネクシアード
「どちらが動いても対応できるように」

視線は自然とこちらへ向く

さらに反対側

アステリス
「あの白黒の子、最後すごかったじゃん」
ノクティエル
「今回は短距離です」
ノクティエル
「早い段階で勝負になるでしょう」
クロミツ
「観察対象としては妥当だな」

こちらも同じだった
誰もがランを見る
そして私を見る

前回のレースが、それだけの印象を残したということだろう

やがて

スタートの時を迎える


このレースのイメージレースBGMです
レースのお供にどうぞ


ゲートオープン
一斉に飛び出した

短距離戦らしい鋭い加速
だが大きな接触や混乱はない

各チームほぼ想定通りの位置取りで流れていく

(良いスタートです)
(予定通りですね)

私は落ち着いて前を確認する
焦る必要はない
すると横からランの声が聞こえた

ラン
「落ち着いて」
ヴァイスノヴァ
「はい」

短いやり取り
それだけで不思議と気持ちが安定する

レースはそのまま進む
しかし誰も動かない

チーム・サイレント・レイヤーも
チーム・ジェントル・ヴァーディクトも
互いを警戒し続けている

まるで誰かが仕掛けるのを待っているようだった

アステリス
「ラン……あーた達いつ動くの?」
ラン
「どうでしょう」
ヴァイスノヴァ
「状況次第ですね」
アステリス
「そういう答え一番困るんだけど」

不満そうな声
だが本気で怒っている訳ではない
むしろ探りを入れているのだろう

短距離戦だからこそ
誰が先に動くのか
それが重要になる

少し後ろではネクシアードもこちらを観察していた

ネクシアード
「まだ動かないつもりですか」
ラン
「まだですね」
ヴァイスノヴァ
「慌てる距離ではありません」

私の返答にネクシアードは小さく頷く

その隣

ノクティエルが穏やかに微笑んだ

ノクティエル
「なるほど」
ノクティエル
「最後まで隠しますか」

ランは答えない
ただ笑うだけ
私も沈黙する

答える理由がなかった

誰が動くのか
どちらが勝負へ向かうのか
それはまだ見せる必要がない

レースは静かに進んでいく
短距離戦とは思えないほど
張り詰めた空気だけが続いていた

やがて終盤が近付く

ネクシアードが前方へ視線を向けた

ネクシアード
「少し縦長になりましたね」
クロウヴァ
「問題は?」
ネクシアード
「ありません」
ヴァルネス
「……まだ届く」

誰も焦らない
誰も慌てない

全員が勝負の瞬間を待っている

そして
誰もが互いを見ていた

ランを
私を

サイレント・レイヤーのエースを
ジェントル・ヴァーディクトのエースを

誰が最初に仕掛けるのか
誰が本命なのか
その答えを探しながら

けれど
本当に見るべき場所へ視線を向けている者は、まだ誰もいなかった
レースは静かに最終局面へ向かっていく

レースは終盤へ入った
張り詰めていた空気が変わる

最初に動いたのはサイレント・レイヤーだった

ヴァルネスが加速する
無駄のない動き
一直線に前を狙う

それを見たジェントル・ヴァーディクトも反応した

アステリスが速度を上げる

ノクティエル
「ここです」

静かな声
だが迷いはない

勝負どころ
誰が見てもそうだった

ここからエース達の戦いが始まる

私もそう思った

そして
横でランが動く

アステリス
「来た!」
ネクシアード
「警戒」

さらに
私も加速する

アステリス
「えっ!!ヴァイスノヴァも来るの!」
ネクシアード
「想定通りです」

当然の反応だった

ランか
私か
あるいは両方か

どちらが勝負へ向かうのか
誰もがそれを見極めようとしている

しかし
少し走ったところで違和感が生まれた

アステリスが首を傾げる

アステリス
「……え?」

ランが思ったほど前へ出ない
もっと鋭く加速すると思っていた

私も同じだ
前回のような追い込みはしなかった

ヴァルネスも僅かに視線を動かす

ヴァルネス
「?」

ネクシアードも眉をひそめた

その時だった

ノクティエル
「あれ……先頭との差……大きくありませんか?」

全員の視線が前へ向く

そして気付く
先頭を走る彼女の適正距離を……

アステリス
「ヤバっ……このままだと逃げられるっしょ」

慌てて加速しようとする
だが

ラン
「ごめんなさいね」
アステリス
「うわっ!?」

ランが前へ入り進路を少し塞ぐ
だが十分だった
アステリスの勢いが削られる

アステリス
「ちょっ……今急いでるんだけど!」
ラン
「知っています」

笑顔のまま
だが譲らない

一方
ヴァルネスも前へ出ようとする

ヴァルネス
「……追撃を開始します」

静かな宣言

しかし
その前へ私が出た

ヴァイスノヴァ
「それは困ります」
ヴァルネス
「……そうですか」

短い会話
それだけだった

だがヴァルネスは前へ行けない
ほんの僅かな時間の足止め

だが短距離戦では十分すぎるほど大きい

そして
先頭
そこには
一頭だけ
誰よりも前を走る姿があった

サクラミスト

彼女は風を受けながら
楽しそうに
全力で走っている

サクラミスト
「わああああーーー!!」

彼女は後ろの駆け引きなど知らない
ただ全力で前へ
ただゴールを目指してひたすら走る

誰よりも自由に
誰よりも楽しそうに

そして……そのまま
誰にも追いつかれることなく
ゴール板へ飛び込んだ

次節へ


今回のレースの実況です。興味がある方はお聴きください


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