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第2章『食路』ー終節:帰ってきた場所ー【ケンタウルスストーリーイベント】

居酒屋の暖簾の前で、私は足を止めた
ノクティエラも同時に立ち止まる。彼女は最後まで歩調を崩さず、ただ一度だけ、靴先の向きを正確に揃えた

すでに、全員が揃っていた

ネクシアードは腕を組み、店の外観を結果として受け取るように眺めている

クロウヴァは暖簾の端を指で軽く弾き、通らなかった未来でも占うように目を伏せていた

アビスノアは店先の灯りを見つめ、待つ時間が終わることを、特別な出来事とは思っていない様子だった

ヴァルネスは一歩奥に立ち、誰よりも早く、そして誰よりも遅く、ここにいる

誰も驚かない
私たちがここに来ることは、最初から前提だったかのように

「……遅い」

ヴァルネスが短く言った
咎めるでも、急かすでもない
ただ、事実を一つ置いただけの声だった

その一言で、遠回りも、迷いも、立ち止まった時間も、すべてが同じ重さで並べられる
遅れたこと自体が、理由になる必要はなかった

一行で暖簾をくぐり、座敷の大きな卓に腰を落ち着ける
注文は一気に入った。誰も相談しないのに、重ならない
それぞれが、自分の「ここまで」を自然に置いていく

「収束点は妥当。誤差も許容範囲です」
ネクシアードは淡々と、今日の流れを結果として整理する

「行かなかった場所にも、意味は残るものです」
クロウヴァは、選ばれなかった道の話を静かに添える

「……待つ時間も、悪くなかったです」
アビスノアは杯を傾けながら、ぽつりと

ヴァルネスは……何も言わず、ただ場を見ている
追われることが終わったあとも、その距離感を崩さないまま

ノクティエラは……会話を聞きながら、時折小さく頷いている
自分の迷いを、修正も反省もせず、ただ出来事として置いている態度だった

私は、その騒がしさから、ほんの少しだけ意識を外に出し、今日の事を思い出していた

誰も、答えをくれなかった
指示も、正解も、用意されていなかった

それでも、必ず次の場所には着いていた
この街では、併走するという行為そのものが、到達の条件だったのかもしれない

考えが深くなりかけた、そのとき

「なら、なおさらこの場所を守っていかないとね❤」

迷子さんの声は軽く、柔らかく、
視線は私だけでなく、この場全体を包んでいた

誰も否定しない
誰も補足しない

ただ、ここにいる

それだけで、十分だった


今回の記事で【第2章『食路』】は終了です
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