【聖夜までに恋をひとつ】第4章 「前世の恋人は、あなたです」
第4章のヒロインは、黒羽 夜宵(くろばね やよい)です
このシナリオはクリスマスの週に書く恋愛シナリオのメインヒロインを決める為の企画シナリオで、各章の❤の数にてメインヒロインを決める予定です
スキの対象は以下の4通りです
各章のヒロインの話の❤の数
各章のイメージ楽曲❤の数(SoundCloud内)
各章のX投稿❤の数(#迷言さんの小説紹介内)
各章のX投稿❤の数(#迷言さんの楽曲紹介内)
それでは、第4章 「前世の恋人は、あなたです」をお楽しみ下さい
序章おさらい
「今日も、やっぱり感じます。先輩の気配…“覚えてないだけ”ですよね」
その一言を言い終えた瞬間、黒羽 夜宵は静かに瞬きをした
冷たい冬の風が吹き、俺の背中にぞわっとした感覚が走る
……やべえ。今日の世界観、濃い
「いや、あの……俺、前世持ち出されるタイプじゃなくてだな」
「大丈夫です。思い出すまで時間がかかることは、知っています」
しれっと断言すんな。なんで俺の人生デフォルト前世ルート確定なんだ
夜宵は俺の前に立ち、ゆっくりと首を傾ける
目が、吸い込まれそうなくらい綺麗だ
いや違う。これは恐怖と緊張が視神経をバグらせてるだけ
「先輩、今日も帰りは東側の商店街からですよね」
「……なんで知ってんの?」
「昨日も一昨日も、その前も……ずっとそうでしたから」
「観察期間どんくらいだよ」
「言葉にすると長いです。でも心では“瞬き”でした」
意味深すぎて逆に情報量ゼロ
夜宵は懐から小さな紙を取り出し、恥ずかしそうに手に乗せてきた
「今日の……先輩の運勢です」
封筒には丁寧な字で書かれている
―天ヶ瀬 晶(前世名:***)へ―
前世に名前つけんな。せめて空欄にしとけ
震える指で開けると、中の紙には―
『今日、あなたは“音”に救われます
そして少しだけ笑います
誰かがそれを願っています』
……思ってたより詩的
呪詛じゃなくてよかった
「先輩、音楽……最近、夜に聴くんですよね。静かで、少し泣きそうになるやつ」
俺は固まる
いやいや、待て
俺、それ昨日アプリのおすすめで適当に流しただけだぞ?
「……なんでそれを」
夜宵はほんの少し微笑む
「この世界に残った余韻みたいなものです
前の人生で、先輩……歌っていました」
「俺、過去に歌手設定あったの?」
「はい。声は……優しかったです
でも最後は泣いて、歌えなくなってしまって……」
そこまで言うと、夜宵は胸の前でそっと手を握りしめた
まるで、何かを守るみたいに
「今生こそ、声が途切れる前に……笑わせたいと思ってます」
心臓が―静かに、刺されたみたいに動いた―
怖いのに、痛いのに、なぜか温かい
なんだこれ
「……あのさ、前世とか運命とか……俺、そういうの信じてるタイプじゃないんだけど」
「わかってます。でも―」
夜宵は俺をじっと見た
今までの誰とも違う目だった
「先輩。“知らないはずなのに懐かしい”って、今日……少し思いませんでしたか?」
息が止まった気がした
なんで俺が、昇降口ですれ違った一瞬を思い出してるんだよ
なんで、あの目を見て胸がざわついたんだよ
……偶然か。いや、全部偶然で片付く
ただ――
俺は、無言のまま息を吐いた
夜宵は、それを答えだと思ったらしい
ゆっくりと、嬉しそうに――ほんの少し幼い笑顔で言った
「思い出すまで、ちゃんと待ちます
でも……離れません」
ぞくっと背中が震える
怖い
でも、嫌じゃない
その距離感が、ありえないくらい静かに刺さってくる

沈黙
……気まずい。いや、違う。空気が重い。いや、正確には“深刻なドラマの間みたいな空気”だ
―俺が破ろうと口を開いた瞬間―
「先輩、動かないでください」
夜宵がそっと袖を掴んだ
「なに?俺、踏んじゃいけない結界とか乗ってる?」
「いえ……先輩の肩に、“未練の欠片”がついてます」
「やっぱ霊的なんかい」
夜宵は真剣な表情のまま、俺の肩に指先を近づける
その動きはまるで、壊れやすいガラス細工に触れるみたいだった
―ぱん、と指先が触れた瞬間―
「……取れました」
夜宵は手のひらをそっと見つめた
何も乗っていない。でも彼女は、まるで宝物を受け取ったかのように微笑む
「先輩は、まだ迷ってます
前の人生で失ったものを……また失うのが怖いから」
心臓が少しだけ跳ねた
いや、違う。たぶん呼吸のミス。酸素薄い
そういう設定にしよう
「……俺、そんな複雑な設定抱えて生きてた記憶ないけど?」
「覚えてないからです」
即答。秒。迷いゼロ
夜宵は続ける
「でも大丈夫です
今生では、泣かせません
たとえ、また私が“忘れられる側”でも」
言葉の意味は重すぎるのに、声だけは柔らかかった
ずるい
その優しさ、怖いのに、逃げたくなくなる
俺は息を吸い、少し冗談めかして言う
「なぁ、夜宵。お前……そういうこと言うの慣れてる?」
夜宵は首を傾けた
「慣れてません
先輩にしか言ったことありません」
「じゃあその完成度なんだよ」
夜宵は小さな声で答える
「……だって、前世で何度も言いました
届かなかったけど」
空気が静まる
ほんの数秒なのに、永遠みたいだった
―やめろ、そんな間作るな―
心が勝手に意味を探すだろ
俺は話題を変えようとして、口走る
「……あのさ。好きな音楽当てたのは偶然だろ?」
夜宵はゆっくり瞬きしたあと、答えた
「偶然じゃありません
先輩は“静かな音”で心を落ち着かせる人です
誰にも言わなくても、ずっとそうでした」
「……昔から俺知ってるみたいに言うな」
「知ってます
忘れているのは、先輩だけです」
怖い
でも――
ほんの少しだけ、救われている気がした
俺は冗談に逃げる
「じゃあさ、夜宵。俺が前世でお前の何だったか、ざっくりでいいから答えろ」
夜宵はゆっくり顔を上げた
瞳が揺れている。恥ずかしさか、迷いか、それとも―記憶か―
そして小さく答えた
「……恋人、です」
声が震えていた
強く言い切れるくせに、いざ核心になると照れるとかやめろ
心の防御力が死ぬ
俺は言葉が出なかった
夜宵は、俺の沈黙を拒絶ではなく“受け取った証”だと思ったらしい
そっと一歩近づき、ほんの指先ほどの距離で囁く
「今生こそ……終わらせません」
その言葉は、呪いみたいで、祈りみたいだった
俺は視線を逸らした
感情が整理できない
怖い
なのに温かい
逃げたくなるのに、立ち止まりたくなる
そんな俺を見て、夜宵は小さく息を吐いた
序章へ
↓最後に、黒羽 夜宵のイメージ楽曲をお楽しみ下さい↓
