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【ショートストーリー】ママのための子守唄

今日は一日、この子は泣いていた。
かわいい。
かわいい。

ほんとうに、かわいいのに——

わたしのこころだけ、どこかで拒んでいた。

朝、洗いものの山の前で、
立ったまま何かを口に入れた。
味は覚えていない。

生き延びるためのカロリー、みたいなもの。
キッチンは洗いものだらけ。
洗濯物は干す前からため息をついているみたいで。

おむつが汚れるたびに、赤くなったこの子のお尻をそっと洗う。

洗って、
洗って。
今日だけで、どれだけ洗っただろう。

ふと、
自分の目まで洗われたみたいに
なみだが落ちた。

こんなときは、
耳を澄ます。
亡くなったおばあちゃんが、母に言っていたらしい。

「あの子、
パパが帰るまで、ひとりで抱え込んで泣きよらんかなぁ……行ってやれたらええんやけどねぇ……」

その声は、もうこの世界にはないはずなのに
なぜか台所の隅に、そっと居る気がする。

隣のおばさんは、
ポテトサラダをたくさん作って、
差し入れしたくて迷っている。
迷惑かもしれない、と。

でもたぶん、
自分の娘の子育てのときを思い出しているんだと思う。

わたしの姿と、重ねながら。

スーパーのレジの列。会計に手間取るわたし。
後ろにいた女性は、ぐずるこの子を抱っこしたそうにしていた。

自分の子どもたちはもう大きくなったけれど、あの頃の自分を思い出したのだろう。

「ちょっとだけ、抱っこしておきましょうか」

聴こえない声が聴こえる気がした。

こうやって、

ほんとうに小さな、小さな音で
ママのためのこもりうたは流れてる。
聴こえないくらいの音量で。

声というより、
ただの“気配”みたいなものとして。

でも、
こころを澄ませば、
ほんの少しだけ、聴こえる。

          


           (☕️)

こちらのストーリーがリンクした「おばさん探偵団」💃💃💃ママが笑えば、子どもも笑う。あなたの優しさが、静かに巡る。 

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